キミは嫌がるかもしれないけど またキミの笑顔を見に来るよ。 帰れって言ってもいいよ だって、それを言うのは君だから どんな事を言ったってその声が聞こえてるという事は紛れも無く君に会えている っていう 何よりの証明だから。
Obsidian
海軍本部は大将赤イヌの執務室で、リノハはボーっと窓から外を眺めていた。 前髪を揺らす程度の風が吹いて、心地良い。 偶に少し風か強くなって赤イヌの元にある書類がぱらぱらと音を立てる。 飛んでいかないのは、気持ちがよさそうに風に当たるリノハを見て、赤イヌが風 が吹き込んでもいいようにしていたから。 見上げれば空は真っ青、太陽は煩いくらいに頬に光を当てる。 本部のある島が、夏島に変わったのかと思うほど。
(こういうのも台風一過に含まれるのかな。)
リノハは昨日来た正しく嵐の様な子供をまた、思い出していた。 昨日、そろそろ帰らなきゃ、とリノハが言うと、そのチビ助はそれじゃー、私は もうちょっと探検でもしてこよう!と言ってリノハが止めるのも聞かずにあっけ なくその場から居なくなって"探検"とやらに出掛けていった。 なにか肩透かしを食らったような気がして、リノハは少し考えた。 どうせトリアイナの子供だし、そのうち同じ事を言い出してどうせ邪魔になるだ ろう、と。 それを思うとどうでも良くなった。 何百年も同じ事を言われていれば、それは鬱陶しい。 受諾する気も無い、考える余地も無い。 でも、なぜかため息をついて窓の横に背をもたれかけると、赤イヌが書類を眺め ながらリノハに話し掛けた。
「どうした。」 「ううん、なんでもない。」 「・・・そういえばあのガキはどうした?」 「しらないよ。」 「どこの奴だとか、聞かなかったのか。」 「知らないし、帰り際もすぐどっかいっちゃったし、今日の約束もしてないよ。 別にどうでもいいもん。」 「そうか。」 「そうだよ。」
赤イヌはリノハの余り置きに召さなかった様子を見て、少し失敗だったか・・・ 、と少し落胆しつつ、一度顔を上げリノハの方を見ると、何かに気がついたよう な顔をしてまた口を開く。
「どうでもいいが、一応入り口があるから入り口を使えと言っておけ。」
赤イヌの言葉になにがだろ?と思いつつ窓のほうを振り返ると、鬱陶しいくらい の万遍の笑みを振りまいてチビ助が覗き込んでいた。 その姿を見て赤イヌは今日も平和だに過ごせる、と思い、リノハは頭を抱えた。
「もー、キミはなんでそうかなー?」 「入り口で遊びに来たと言ったら、子供は帰れと言われたのです!故に窓からお 邪魔した所存!」 「そりゃ、まー、そうか・・・。ってもう既につらつら喋れてるし・・・。」 「何でも早くやらないと石の人に殺されるのです・・・!」 「・・・そりゃ必死になれそうだね。で、何しに来たの?」 「覗きに!」 「あのねー・・・。大体今日は遊ばないよ?」 「あ、覗きですから、お気遣い無く!」
あー・・・、そうなの・・・、と呟いてリノハはチビ助を呆れた顔で眺めた。 赤イヌすらおいおい、という表情に変わっている。 リノハは理由はよく分からないがあのガキが鬱陶しそうにしてはいたので、ここ に来られないようにしてやろうか・・・、と赤イヌは思ったが、「何でいつもそ う何かずれてるの?言ってることわかる?」なんて言いながら結局はしっかり相 手にしている姿を見て、もう暫く様子を見ようか・・・と思いまた仕事を再開し た。 まぁ、赤イヌも思惑通りにいけば万々歳ではあるのだ。 男でも女でもあんまりベッタリ懐かれる様な奴でも・・・困る。 或る意味程度が好いかもしれない。
「ホントにちゃんと聞いてる!?」 「ねー、それよりパンちゃんってば聞いくださいよ!!」 「それよりって・・・。」 「さっきね・・・、お化けに会ったよ・・・!」 「はぁ?」
もう、今度は一体何!?とリノハは少し肩を落とした。 (覗きだのお化けだの、もうますます訳分からなくなってきた・・・。)
「さっき廊下をコソコソ歩いてたらね・・・。」 「コソコソって・・・。」 「急に背中が寒くなってですよ・・・。後ろから手が伸びてくるんです・・・・ 。それはもうひんやりとした手がですよ!!ほっぺたにくっついたら更に冷たく て!!しかもその手もでかいんですよ!!」 「え・・・。」 「でも後ろを振り返ると足しか見えないのです・・・!!幽霊なのに!!もう一 目散に逃げました!!」
「それは、ダラけきった幽霊だな。確実に。近寄らん方がいいぞ。仕事が進まな くなる。」 「サ、サカズキ・・・。」 「やっぱりアレは幽霊だったんですね、イヌさん・・・!仕事が進まないだなん て恐ろしい!!ああ、怖かったー!!もう会わないようにします・・・!」 「賢明な判断だ。」
何?サカズキまでこの子のペース?!とリノハはそんな事を言い出す赤イヌを唖 然とした顔で振り返り天変地異が起きるのではないかと心配した・・・。 この突拍子も無い所は憎めないでもない・・・、がやはりトリアイナというもの が後ろにある事がどうも嫌だった。 兎に角、サカズキの前では色々と話も出来ない。 何か知られたら大変な事になるのは目に見えていた。 リノハだってただでは済まされない事も明白。 本当に面倒だ、この一族は・・・、とまた思う。 そしてそうでなければ、とも少々過ぎる。
「もう、クザンくんの話しはいいから、散歩いこ・・・。サカズキ、行って来て もいい?」 「ああ、構わん。」
「・・・クザン?ほー、クザン。クザン・・そうですか。」 「何?」 「いいえ、何でもないのです!」 「・・・ほら、さっさといこ。」
わーい!と言いやはりテコテコとついてくるチビ助に少しため息をつきながらリ ノハは赤イヌの執務室のドアを開ける。 そして今日は海岸に行こうと言って歩き出すと、また”幽霊”にあってしまうで しょうか?なんてチビ助は言い出す。 しかし、妙な話し方になっているチビ助に、リノハは一つ聞いてみた。
「ねぇ、どこで誰と話したらそういう話し方になるの・・・?」 「あ、実は昨日”ふねきりさん”にまたお会いしまして!」 「あ、そう。・・・なんとなくやっぱり・・・。」
全然違う子みたいだと思っているうちに、海岸までたどり着くとやはり海も綺麗 に太陽の光を反射していた。
「ねぇ、トリちゃん。何で私のところに来たの?」 「凄く会いたかったから!」 「でもきっと次来る時は違うよ。」 「そうなの!?」 「・・・そうだよ。キミらはいつもそうだよ。ぼくのしたくない事を望んでる。 ぼくのして欲しくない事をする。それでも来る。それが嫌だ。」 「それは迷惑!」 「・・・あのね、キミらの事なんだからね!」 「だからダメなのです。私、その訳をまだ分からないけど、全ての声を聞くのが お仕事だから。でも道は一つ選ばなくてはいけない。最善の判断ができねばなら ないらしいのです。むずかしーですねー。」 「ぼくは迷惑だ。キミらのやってること、何もかも。」 「でも、私はパンちゃん好き!!」 「あのね!そんなこと聞いてないから・・!」
ふふふー、と言いながらチビ助は立ち上がった。 何かもう絶対分かってない、とリノハは少しうーんと唸る。 するとチビ助は砂を一掬い手に取った。 そしてギュッと手に光を帯びながら握り締め、その手をリノハの前で開く。 気持ちよく降り注いでいた太陽の光が反射して手の中にあるものが光る。
「私は、欠陥商品ってやつらしいのです。きっとこんな風に歪んだ光しか反射さ せられないのです。」 「欠陥商品・・・?」 「力が幾らあっても虚しいという事なのです。」 「よく・・・、分からないよ?」
チビ助は手の上にあった光る物体を海に向って思い切り放った。 それは何回か二人の方に光を送って海に消える。
「私、そろそろ帰らないと。」 「・・・そうなんだ?」 「はい!遅れると石の人に半分くらい血を抜かれて木に吊るされるかも!!」 「え・・?」 「やっぱり怖いですよね!!2,3日ご飯が食べられないのには耐えられないでしょ う?!まぁ、食べなくても平気ですが家が近い所にくくられるので兄の作ったご 飯のいい香りが・・・・!!」 「またすごーくずれてるからね・・・・?」
チビ助はこの世の終わりのような顔をしてまだ嘆いている。 その姿を見てリノハは思わず笑ってしまった。 もう来ないようにしようと思っていたのに。
「やっと笑った!その顔がとても好きです。」 「あ。」 「私は夢を見たのです。パンちゃんに。きっと私のお友達なのだと思ってずっと 過ごしてきました。私はいつまたパンちゃんに会えるか分からないから、忘れ物 を届けに!」 「忘れ物?」 「そーです!あんまり昨日が楽しかったので忘れていたのでした!」
そう言うとチビ助は小さな体に引っ付いている小さなヒップバックから、また一 つ光る物体を取り出した。
「パンちゃんが私を嫌いなのは仕方が無いです。でも私がパンちゃんを好きなの もまた仕方が無いことです。」
え?と言う顔をしていると手を出してください、というチのでそれに答えてリノ ハは右手を差し出した。 その上にポン、と置かれる一つの花。
「黒曜石です。」 「石?」 「少し、難しいですね、その岩石は。でも、パンちゃんにあげようと思った作っ たらそうなりました!」
黒曜石という名前の割りには黒いというよりも紫色で透き通った色。 その花は、薔薇の形をしていた。 太陽光が反射してリノハの頬に当たる。
「それは、好きなんじゃないかと思います。よかったら貰ってください!!」 「あ、ありが・・・と・・。」 「お会いできてよかったです!私はもう満足です。悔いは在りません!!欲を言 えばまたパンちゃんの笑顔を見たいなー・・・。」
そう言うとチビ助は口に手を当て指の間から光を漏らすと、その場から消え去っ た。
なんでそうやって勝手に消えるかな。 だから嫌いだ、トリアイナなんて・・・!! 自分勝手過ぎるんだ。 いきなり現れて、変な笑顔振りまいて、いきなり石を押し付けられて、それで消 えるし。 いいんだ、どうせ。 どうせ煩い子になるだけだ・・・。
そして次の日、その次の日も何となくリノハはボーっとしていた。 赤イヌの執務室のソファで、チビ助が置いていった石をテーブルに置いて。 あんまりボーっとしているので、赤イヌにシャキッとしろ!と何回か言われた。 今日もまた、少しため息なんかを吐いていると、少し風が強いというのに赤イヌ がガラリと音を立てて窓を開けた。
「・・・サカズキ?書類飛んじゃうよ?」 「飛ばないようにしてある。」
確かにしっかり対策がされているデスクをリノハは眺めた。 なんだろう、厚いのかな・・・、と赤イヌに視線を移す。
「・・・窓を開けておけば、また勝手に入ってくるんじゃないか?」 「え・・・?」 「入り口はあっちだとお前がしっかり教えていれば話は別だが。」
誰の話か分からないよ、と呟きながらリノハは窓の傍に行く。 チビ助が置いていった石を窓の下枠にポンと置くと鮮やかな紫色が反射して眩し かった。 リノハはまたポーっとその光を見ながら頬杖をつく。 いつの間にかリノハの後ろに立っていた赤イヌがリノハの赤い髪をなでた。
「次はしっかり、家だとか聞いておけ。」 「何のことか分からないよ。」
珍しくふわりとした手つきでリノハは赤イヌに触れられる。 本当に天変地異が起こるかもしれない・・・、と思ったが天変地異はあのチビ助 だ。 もう既に起こってるかー、とリノハは思う。 サカズキまでいつもと違っちゃうなんて、本当に天変地異みたいだ・・・。
きっとまた会うんだろうという予感はあった。 でも、それは本当にキミなの? ぼくは本当のキミにまた会いたい。 そしたらまたぼくに花を作ってよ・・・。
以下FAISAN様あとがきです!↓ 尻切れトンボではないかと言う雰囲気が漂ってます・・・。 そしてやはりサカズキさんは優しい!?
以下ひとはいちか感想です!↓ いや、三部作、これにて終了ですね・・・!!チビ嬢、とても愛くるしく・・・!!喋るのはや!しかもボーン大佐って・・・!!笑いました、楽しみました。そして、それではこれを過去として、現在でのお話を書かせていただきますので!!貰った石も見事に利用致しますので!!! 本当にありがとうございました!!!
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