どっかりと背中を蹴られたと思ったら、向かいから遠慮なく胸倉を掴まれた。何だこの唐突に理不尽な展開はと胃の痛い思いをしながらもドレーク、取り合えず目の前の女性に問いかけた。
「何なんだ、急に」
「何だとは何だ。可愛い恋人が休日に遊びに来てやったんだから、ちょっと買い物に付き合えよ、ドレーク」
年がら年中休日のような女が何を堂々と言っているのだろうか。色々突っ込みたいことはあったのだが、とりあえずドレーク、は溜息を一つ、の手を払い服を調える。に散々ミホークのパクリだなんだといわれた格好、ではない。本日はごく普通の黒いシャツにパンツと言った格好。別にドレーク、海賊に休日などはないと承知しているが、手配書の出回っている中あの格好で歩くのは大々的に宣伝でもしているようなものである。上陸するのなら、無法地帯でもない限り無駄な騒動にならぬために格好を改めるのは道理であった。
「お前とそういう関係になった覚えはないが」
「まぁ俺もない」
「・・・・だから何なんだお前は」
「あれだ、あれ。言葉のアヤだ。アヤ」
ふん、とふんぞり返って堂々とのたまう彼女。先ほど自分の背を容赦なく蹴り飛ばしたのもこのだろう。この自分の背後に回って蹴り飛ばすまで気配を悟らせないとは、中々実力があると伺えるが、しかし、こうして昨今「造反しました☆」な海兵海軍中に疑問とトラウマを振りまいた自分の前に現れているあたり、ただの一般人であるはずもない。
毛先だけ少々濃い色をしたショートカットにベレー帽、黒いコートのその女性、ドレークに視線を向けられてにやにやと笑った。ドレーク、なにやら物凄く、寒気がしたのだが、それはそれ。
「それで何の用だ。・」
「だからさっき言っただろう。買い物に付き合えよ、ドレーク。ショッピングだショッピング」
当然お前の出資でななどと当然のように言うかと思えば、珍しく「安心しろ、金は自分で払う」とそういう言葉。これは槍でも振るのかとドレークが思わず空を仰げば、どがっ、と、弁慶を蹴り飛ばされた。素直に痛い。
「か、買い物......?」
とりあえず目的はわかった。だが食料などを大量に買い込んで暴食に走っても、間違ってもキラキラ輝く装飾品、色とりどりのワンピースなどを夢心地のように眺める様子の想像などできぬ・、買い物、ショッピングなどと名打って、武器屋めぐり、火薬類の補給とかそういう流れの方がらしすぎる。そういう様子がありありと出ていたのだろう、ぴくん、と、やや不快そうにが眉をはねさせて、それからふふん、と、どこまでも嫌な予感しかしない空寒い含み笑いを漏らした。
「なんだドレーク、この俺とデートは嫌なのか?」
悲しいなぁ、などと、様子ばかりはしおらしくして、そしてちろり、と出される。金色の電伝虫。
「あんまりに悲しくて、このままポチッといっちまいそうだ。あ、これ大将赤犬にもらったんだがな」
「ちょっと待てぇえ!!!なんだそれは!」
ドレークの海兵時代に、何度か見た覚えのある、小さい割に物凄く威力のある、もの。大将三人と元帥しか持つことのできないそれをこのが持っていることになんら不思議はない。何しろ大将三人組、のことを姪っ子、妹、それまた別の感情などそれぞれスタンスは違うものの、砂糖に黒蜜をかけたような甘さで溺愛しまくっている。痴漢撃退、ストーカー防止、っていうかうちのに近づくんじゃねぇ的な、お前らそれはヤクザだろう所業を平然とする。その最終奥義「何かあったらこれを押してね☆」なんてそういうノリでバスターコール発動用の電伝虫をよこしていたって、むしろ当然ではある。さすがにドレーク、素直にあせった。
いや、まぁ、本来己の権力やら立ち位置を誇るではないのだが、しかし、ドレークをイビるためならそういうものも平気で利用するところは確かに、ある。
慌ててゴールデン電伝虫を奪い取ろうとすれば、、それをひょいっと避けて「ふふん」と含み笑い。
「観念して俺と青春・ウィンドーショッピングとか楽しめよ。ドレーク」
色々突っ込みを入れたかった。何だこの、普通だったら、デートのお誘い、甘やかなもの、のはずのその展開が、ただのドSのドSによるドSのための展開になっているのだろうか。
ドレーク、唯ひたすら胃の痛みをこらえつつ、何で海兵を辞めて海の屑になったのに、世間に「堕ちた」だなんだと謗られているのに、世界の平和のために人身御供にならねばならぬのだろうかと、そんな疑問を感じた。
そのドレークに、容赦なくの声。
「ほら、さっさと行くぞ、ドレーク。まずはあれだ。下着屋?」
「それは一人で行け!!!」
いや、私はSじゃない
お前がMなのが悪いんだ
Fin
あとがき
ハイ、ということで誄さんのところのヒロインがあんまりにドSでノリノリに赤旗さんをいぢめ・・構っているところを拝見してしまったので、そのノリ赴くままに書いてしまいました。
さて・・・土下座の準備を・・・。
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