誰も知らない

 

 


不愉快な笑みを浮かべたような男だと、その無表情の顔を見るたびにハルカは吐き気がして仕方なかった。どうもどうしてこの男、一切感情がないような、いや、何もかも諦めきったような、覚めた、酷く退屈で仕方がないというスタンスを取っているのだろう。そのくせどうしようもないくらいの激情を秘めているくせに。

 

「いっそ放火魔にでもなったらどうですか、ホカゲさんは」

 

思考を突然言葉に切り替えたので奇妙な文法になってしまったが、まぁ構わない。ハルカは目の前の、赤い装束を纏った男を見つめて、溜息を吐いてやった。

 

「いきなりなんだ」
「私はユウキくんのいるフエンタウンに早く行きたいんですよ、でも何でかホカゲさんとその部下1,2がこのロープーウェイ乗り場でたむろってって通れない。これってどういうことなんですか?」
「俺の質問はどこいった、おい」

 

あーあ、とハルカは大げさに両手を広げて見せて、溜息を吐く。これだから男の子って、自分の主張ばっかですね、と続ければホカゲ「そっくりそのままお前に返す」と覚めた声で言った。ハルカは嘘つき!と叫びだしたくなったがここは大人の心で堪えてやって(あぁ恩着せがましい自分!)

 

 

 

 

・トレーナーじゃないハルカは危ないから、絶対に通さない心のホカゲさんは優しい人なんだと、ハルカちゃんは見破ってくれてて、それに苛立ちを覚えてくれていればいいですと思って突発的に書いたSS。