シロナとゴヨウ、その1

 

「アナタっていつも、本読んでるわけ?」

「まぁ、そうですね。お気に触りましたか」

「何が面白いのか、解らないだけよ」

「考古学の書籍は熟読して止まない貴女が、」

「あれは面白いわ。小説なんて、作り出した幻想世界じゃない」

「民俗学も似たようなものかと思いますが」

「伝承、民話、口伝集は事実が元になって、変形されたものだもの。必ず真理には事実と真実が潜んでいるわ。そういうのは面白いじゃない」

「そうですが」

「その小説は、比喩で何かが書かれていると、そう読み取ることができないでしょう」

「読まれたんですか」

「ゴヨウが読んでるから、面白いと思ったの」

(それで、すぐに読める量ではないとゴヨウは内心舌を巻く。彼女の尊敬すべき能力の一つに速読して同時に熟読するのと同じ理解を得るというものがあるが、こう、自分の土俵でそれを目の当たりにすると、どうも、感慨深いものがある)

「退屈でしたか」

「不愉快だわ」

「へぇ」

「最初っから、決まっているじゃない」

と、シロナ。爪の先をじぃっと見つめながら、続ける。

「誰と誰がくっついで、誰と誰が悲しいの。全部、決まってそれが当たり前の小説なんて、不愉快だわ」

 

 

・セリフだけで書こうと思ったら、やっぱり無理だった。次第。んー、書けないヤ。シロナの根底には、ダイゴさんを理解できなかった悔しさとかあればいいよ。(2007/04/23 20:06)