複雑な印を結ぶ手をじっと眺めて、たとえその一つ一つを正確に目で追えたとしても自分には決して扱えぬ術を羨ましいと心底思い、はじぃっと、鬼鮫を見た。珍しくお社を出て、鬼鮫とイタチと二人がお守りをするということでは暁のアジトに「お呼ばれ」されていた。最も暁は育児所ではないので間違いなく、何か裏があるのだが、その裏、にしても別段に何か影響があるわけでもない。第一、のほほーんとしているの代わりのお目付け役クジャクは相当さとい上に賢いので暁は彼を欺いてややこしいことになるよりは、いかにに害のない策なのかということを丁寧に説明してそれで、は何も知らされずだた、クジャクがOKを出せば安全、それだけを信じて、寧ろクジャクが頑固だからあんまり外に出られないんだとかそういう、ちょっと見当違いのことを考えてさえいて、、うききと暁アジトで鬼鮫にお守りなどされていた。
ちなみに今回、暁が狙っているとある禁術の封印を解くためのエネルギーと術式を使うため、どうしても御前の力が必要になるだけだ。だけ、と言っても、その術が暁の手に入ればろくなことにはならないのだろうけれどそれでも、別に、御前のお社とその、大切な御前の何かが影響を受けるとかそういうことは、絶対にないわけだ。つまり、が世界に無関心でいればいるほど、暁は御前を利用する事ができてそれで、も楽しい思いをすることができるわけだった。
「うわぁぉ、へぇ、すごい。すごねぇ、鬼鮫くん」
七色鮫の術を見せてもらって、は両手を挙げて喜んだ。別に、見世物とかそういう愉快な技ではなくて本来その七匹の鮫が獲物を四方八方(七方)から襲う危険極まりない業なのだけれど、からすれば「綺麗な鮫がいっぱい」程度。
褒められた鬼鮫はまんざらでもなさそうに口元に笑みを引いて、それで、水がに掛からないようにちゃんと自分の長い暁マントでくるんでやって、水がかかってもいないのに丁寧に、その頬を拭ってやる。
「喜んでいただけて何よりですよ」
fin
(2007/11/2)
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