「どうやら私は、フラれてしまったようだよ」

ほんの少し眉を下げて、それでも笑って言うその顔にはなぜだかとても苛立って、そしてぐいっと、キースの首を掴み引き寄せた。




 

 

 


 


元KOHの恋が終わってしまいそうです

 

 

 

 

 






「さぁこれでもうすっかりよくなりますよ。男の子がいつまでもびーびーと泣いているものではありません。涙を拭いて笑ってごらんなさい、あぁ、それでよろしい。痛いことなどこれからさきたんとあるのですからこの程度なんです」

きゅっと針を当てた箇所にアルコールを湿らせたワッテ(脱脂綿)を当ててやって夏目は面倒くさそうに、目の前の少年に声をかけた。励ましや慰めの言葉では欠片もないのだけれど、これまで目を真っ赤にしていた少年はの言葉に目を丸くぱちりとさせて、そして白い歯を見せよく笑い、そのままパタパタと駆けて行く。自分よりも頭一つ小さな子供であるに諭されたことがおかしかったのか、それともバカ正直に言葉に従ったのかそのどちらでもには大差ないように思われたので見送ることもせず、傍らに控える秘書に視線を投げた。

「まだ続くのか、オーレリア」
「えぇ、局長。あと女子のクラスがありますからご辛抱なさってくださいね。いやですよ、ここの子供のように癇癪を起こしては」
「ふん、誰がそんな意味のないマネするか」

秘書の皮肉には顔を顰め、行儀悪く鼻を鳴らしたが付き合いの長いオーレリアは気にした様子もなく美しい手を伸ばし先ほどの少年が能力を発動させ落下させた調度品を拾い上げた。

ここはアルバート・マーベリック氏が出資するNEXT能力者を対象にしたHERO養成学校である。最近話題のバーナビー・ブルックスjrや折紙サイクロンもここの出身で、HEROを排出する名門校として注目を浴びていた。しかしHEROを目指す子供だけではなく、突如発症した(はNEXT能力を一種の病であると考えているのでこの表現を使用する)能力のコントロール、あるいは同じ能力者に混じることで迫害を受けずに精神を守るなどといった役割も持っており、年齢性別出身に関わらず、マーベリック氏の思想の下「NEXTなら誰でも入学できる」というほぼ無償の、全寮制学校、NEXTたちの救済地にもなっている。

さて普段ジャスティスタワーかアポロンメディア本社の外から出ぬが態々出張し出向いているのはそのHERO養成学校、18歳以下サイコキネシスのNEXTを集めた特別クラスの「予防接種」のためだった。
当然予防接種くらいでなぜ態々が出向く必要があるのか、と彼女の保護者はこの出張に良い顔をしなかったが、メディア王にしてヒーローを雇用する7社の社長らをまとめる存在であるマーベリック氏からの要請と「不安定なサイコキネシスの子供は注射を嫌がって能力を発動させる。先生なら若いし、大人の先生を怖がる子供たちでも心を許して注射を受けてくれるのではないか」とそういう理由を告げられては無碍にはできなかった。

「女子のクラスか、リストを見たが18歳以下は4名しかいないのか」
「サイコキネシス能力者に絞っていますし、最近ではNEXT能力への理解も深まっていますから、親元から引き離してまでこの学校に入れられる子供は減っているようですよ」
「なるほど、それは結構なことだな」

基本的にNEXT能力者といっても全てがHERO向きの能力であるわけではない。中にはただ特異体質で全く持って利用価値のない力もある。しかしサイコキネシスの能力者というのはコントロール次第ではかなりの有望株。それであるからひとくくりにして英才教育を施しているらしく、別名「エリートクラス」と呼ばれているそうだ。

くだらない、とカルテを弾いては丸椅子を軋ませる。ヒーローTVがシュテルンビルトの人気番組となって久しい。はヒーローという概念そのものに嫌悪感を抱いてはいるが、ユーリ曰くあの番組がここまで人気になりNEXT能力者たちのパフォーマンスが日夜行われているからこそ「一般人とは違う」「脅威でもある」NEXT能力者たちがこの街で受け入れられるようになっているとのことで、その点を否定するつもりはない。

だが自身「HEROが活躍している時代」に生まれた世代でありながらしっかりとNEXT能力者に対する差別を受けてきた身である。バカ正直にヒーローTVを評価する気にはどうしたってなれなかった。(またユーリ自身が司法省の人間としてに「正論」を語っていることを見抜いている。養父の本音がどこにあるのか探るほど下世話ではないが、それゆえに鵜呑みにはしていなかった)

「この学校でなくとも家庭内でも能力のコントロールを学ぶことはできる。親が子を受け入れているのならそうするこ越したことはないさ」

言っては薬の用意をするオーレリアから視線を外し、保健室の窓の外を眺めた。が普段過ごすオフィス街とは違って、学び舎は自然も多く見られ、またこれまでには縁のなかった世界が広がっている。体育の授業でもあるのか(NEXT能力に関する授業だけではなく一般教育も行われていた。ジュニアハイスクールからハイスクールまでのレベルで今のところカレッジレベルのものは設けられてはいない)グラウンドを駆けるジャージ姿の生徒たちがいた。掛け声が「Go!NEXT!」なのはいかがなものかと思わなくはないが、自然の目が細くなり、口の端が引き結ばれる。

「羨ましいのなら局長もペトロフ管理官にお願いして入学させてもらったらどうです?」
「お前の目は節穴か」
「いいえ、局長がちっとも羨ましがってないのはわかってますけど、時々学生になっておいたほうが可愛げってものを学べていいんじゃないかしらってそう親切心ですわ」

さらりと言う秘書には彼女を首にしない理由を頭の中で列挙し怒りを納めた。皮肉屋で好色(しかも男性経験のあるなレズビアン)なオーレリア・コルヴィナスは性格面で問題がありすぎるがとにかく有能なのだ。は彼女を秘書に迎えてからかなり仕事が楽になっているし、一度彼女と仕事をしてしまうと他の者と仕事をしようという気になれない。それであるから多少の言動には目を瞑らざるを得ず、ひくひくと顔を引きつらせながらもなんとか堪えた。

そうしてオーレリアが女子クラスを呼びに行くのを見送ってから、はこの学校の全女子生徒のカルテを見直した。といって書類化されているものを一枚一枚確認するわけではなく、データ化されているものを一気に流し目に記録していく。一瞬で移り変わる画面を事細かに吟味することができるのがの能力だ。さほどの労ではない。

「………やはり外れか。まぁ期待はしていなかったが」

そうして3分ほどで全ての写真や身体データを記憶したはため息を吐いた。言葉はそっけないが内実中々失望感があった。今回面倒なマーベリックの要請に従う気になったのは随分と個人的な理由からで、その「目的」は果たされずに終わりそうだ。

ギシリと椅子を軋ませ目を閉じる。瞼を下ろした程度で自動書記が収まるわけではないのだがすくなくとも視界からの情報更新は遮られ僅かに気も休まる。

「キースのやつの話じゃ最近NEXT能力に目覚めた、若い娘だというからもしかしたらこの学校の生徒かと思ったんだがな……まぁ、ここにいないならあとは公園や駅付近の防犯カメラの映像でも調べれば身元もわかるだろう」

呟き、眉間に指を当てる。ここ数日能力を使いすぎている感はあった。の能力は「見たものをそのまま記録し脳内に保存、必要時に圧縮した記憶を解凍出来る」というものだが、厳密には少し違う。夏目のNEXT能力を正確に説明すると軽く数日を要するが、つまり彼女の能力は自身をスーパーコンピューターと同等のものにできる、というものであった。もちろん脳に負担はかなりかかるが、その能力を上手く使えばシュテルンビルト市内全ての人間を検めることが可能であった。

(必ず探し出して、もう一度あの公園に行かせてやる)
(身勝手だなんてことは、わかってる)
(それでも)
(キース、は、まだ、待って、るんだ)

は目を開き、空を睨みつける。

一ヶ月前、あの博愛主義者が恋をした。当初は何の冗談かと思ったがどうも当人は本気、春のお祭りでもきたかのように「彼女を思うと心が温かくなる、幸せな気持ちになるんだ」と言うキース・グッドマンを見てはどうもどうやら「応援したい」と、そんな、到来の己からは想像もできないような心が芽生えた。

(キースがよく笑うようになった。嬉しそうに、幸せそうに、笑ったんだ。あのNEXT選民意識の高いクソ野郎に負けて以来、下ばかり向いていたキースがだ!わたしはそういうふうにはさせてやれないから、だから、とても、それは、とても良いことだと、そう思ったんだ)

犬の散歩の途中に出会ったという少女。その彼女のことならはキースから何度も聞いた。銀色の髪が噴水から反射する光でキラキラと輝きとても美しいこと、真っ白い肌が雪のようだということ。それでいて睫は黒く瞳をしっかりと際立たせており意思の強さをあらわしていたということ、赤いカチューシャがとてもよく似合っていたこと、華奢でとても細くて、彼女を守りたいとそう強く思ったこと、よく話してくれた。それを聞いているのが自分はまんざら嫌でもなく(利用価値があるからだ、とそう建前上は自身に言い聞かせていても)キースが彼女の手を握れずあっけなく帰ってきたと聞いては笑い、彼女が言葉を返してくれたと聞いては共に喜んだ。

そしてアンドロイド暴走事件が発生する前、夜のパトロールに行くキースと偶然言葉を交わしたとき、はキースが「彼女」によって救われたことを知った。

(だというのにその女は消えた。キースを救っておいて、そのままどこかへ消えたんだ)

また明日、とそうキースは約束したらしい。だから翌日、お礼と、そしておそらくは想いを告げるために薔薇の花束を抱えて彼女と過ごした公園に行った。

彼女は来なかった。
そうしてもう一ヶ月が経って、それでもまだキースは時間を見つけては公園に足を運んでいる。

「局長、お通ししても?」
「あぁ、大丈夫だ」

苛々と爪を噛んでいたはオーレリアの声にはっと我に返り、扉に目をやった。この学校の指定ジャージを来た女子生徒4名、ちらちらとこちらを伺っている。は思考を切り上げて椅子を軋ませると最初の少女に手招きをした。

「どうぞ」
「あ、あの。注射って、その、苦手なんです」

ゆっくりと、というよりもおっかなびっくりと保健室に足を踏み入れる少女。そばかすの散った顔に短い赤毛。愛嬌があるといえばあるが牛乳瓶の底のような眼鏡では中々難儀するだろうとそんなことをぼんやりと思う。は少女の顔と頭の中のデータを一致させ名前と年齢血液型その他の簡単な情報を引き出してポン、と座るべき椅子を叩く。

「注射を好むようなマゾはそういませんよ。安心なさい、針は細いし、痛みは多少あるだろうが、まぁ、一瞬だ」
「天上のしみでも数えていれば終わりますよ」

幼い子供と違い16歳の少女は分別があるだろう。だからそれほど面倒とは思っておらずはきちんと説明してやって少女を促すが、それでもまだしり込みするその肩をそっと親しい友人か何かのようにオーレリアが抱き寄せて少女の耳に囁く。

「オーレリア」
「はぁい。わかってますよ、局長ったら嫉妬?」

どうすればあの女をクビにできるだろうか。は額を抑えながら有能な秘書の悪いクセをやり過ごし、目を丸くしている少女の腕をぐいっと引っ張った。僅かな悲鳴をあげ、少女が椅子に腰を下ろす。

「後がつっかえているんだ。観念して腕を出してくれ」

苛立つわけではないが自然特徴が乱暴なものになる。触れた少女の腕はのものよりも肉付きが良い。脂肪と筋肉だが女性らしい柔らかさだ。が注射の準備をしようとすると、カタカタと少女が震えているのが伝わってきた。

「なんです」
「あ、あの…いえ、ちょっと、怖くて」
「注射がか?それともわたしがか」

見上げて問えば少女は黙った。どちらも、ということではない。あぁ、とは面倒くさくなってため息を吐き、キシリと椅子を軋ませた。

(つまりこの小娘が注射が怖い、というのは、なんだ、わたしのような子供がやるから怖いということか)

実際彼女よりの方が幼いわけで、しかもは平均よりも背が低い。人の目には10歳程度にしか見えぬだろう。まぁ、それはいいとして。

「だ、だって、おかしいじゃない…あ、あなたみたいな子が先生?お医者さん?あ、あたしが、あたしたちがNEXTだから、お医者さんは来てくれないの?」

もう帰っていいだろうかとは本当に面倒くさくなった。

何気に失礼なことを言っているにも関わらず少女の目にはうっすら涙が浮かんでいる。といってこれはに酷いことを言っている自分への罪悪感からではなくて、そうではなくて、そんなまだちったぁ優しみのある感情からではなくて、自分の過去を思い出してトラウマスイッチでも入ったか、あるいは「そんなわたしかわいそう」とか中々に笑える感情からだろう。

面倒くさい、とはオーレリアに視線を投げるが有能な秘書は廊下で待機しているほかの女子生徒をナンパするのに一生懸命なようだった。

(たしかこの小娘、両親に虐待されていたのだったか)

NEXT能力が発覚したのは14歳。彼女の家はそもそもNEXT差別意識のある家庭。彼女自身が公言しないまでも心の中でNEXTに対して偏見を持っていたようで、自分が「そう」であったと知ったときには自殺未遂を起こしている。

その後彼女がどんな扱いを受け、そして全寮制のこの学校に入ることになったのかは知っているが、まるで興味は持たなかった。

こちらを警戒する少女を一瞥し、は注射器を構えた。

「不安も恐怖もあるでしょうが黙って体の力を抜きなさい。あなたが嫌がろうがなんだろうが、わたしはこの街一番の医者で天才で、そしてそういうNEXTなんですよ」
「え?」

少女が顔を上げた途端、はぷつっと、針を刺した。


+++


「慰めてさしあげましょうか?」

帰りの車の中、がぶすっと仏頂面で助手席に座っているのを見てオーレリアが苦笑しながら提案してきた。は「黙れ」と短くいいそれを跳ね除ける。そうするとますます秘書は笑みを深くするのだ。

「このまま医務局へ戻ります。途中ポセイドンラインに寄りましょうか?」
「なぜだ」
「この時間、グッドマンさんは帰宅されるでしょうからタイミングよくお会いして、ご自宅まで送る口実に車の中でお話されることがあるんじゃありません?今日はずっと外出していて、いつものお茶会もできなかったでしょう?」
「興味もないくせにキースに誘いをかけたり、お前、どういうつもりだ?」

フン、とは鼻を鳴らしてバックミラー越しにオーレリアを睨んだ。同性愛者であるオーレリア・コルヴィナス。それでも彼女は時折の目の前でキースを誘ってみせる。あの天然男は誘われていることにちっとも気付かぬのだけれど、は目の前で女が男に色目を使うその醜態を見ると苛立って仕方ない。

今も「キースさんにお会いできるでしょう?」と前面に出してくるオーレリアの意図を掴みかねて問えば、秘書はにっこりとその赤い唇を歪めた。

「稀代の天才医師といわれていても色恋沙汰には疎いんですね」
「クビにしていいか」
「局長にクビを切られる、イコールそのまま人体実験の被験者でしょう?嫌ですよ、わたし、NEXT能力者じゃないんですからお役には立てませんわ」
「NEXT能力者を切り刻んでるのはウロボロスで、わたしじゃない」

似たようなものですよ、と畳み掛けるようにいう秘書が本当に嫌味ったらしくてはこのまま徒歩で帰ってやろうかと検討する。だが所持金もなく、さらには生まれてこの方電車やバスなんぞ利用したこともない己が無事に医務局に帰れる保障は限りなく低かった。

それではぶすーっと頬を膨らませる抵抗のみにとどめ、ウィンドーの向こうに視線を投げる。

「今日も収穫なしだ。キースに話せるようなことは何一つない」
「例の少女ですね。局長がこれだけ探してなんの手がかりもつかめないなんて、本当に人間ですか?」
「なんだ、オーレリア、幽霊なんて信じてるのか?」
「いいえ、まさか。わたし、チョコレートも薔薇も信じない主義なんですのよ」
「シュテルンビルトの住民でない可能性がある。この街の住人なら記録もあるが、たとえば観光に来ていただけとかそういう人間を探し出すにはもう少し細かく探さないとだめだ」

キースが恋をした少女の行方。この己があちこち探っても見つからない。

外見特徴は掴んでいる。この街の住民なら必ずどこかの病院の世話になっているはずだからと記録も全て調べた。それでもなくて、NEXT能力者だとキースが言うから今日あの学校に足を運ぶ気になった。

「どうなさるおつもりです?」
「あとは街中の防犯カメラを検めてみる他ないだろうな。キースが出会ったという公園は大通りに面してるし、少女の通行記録もあるだろう」

幽霊ではなく存在する人間であったのなら、キースと過ごした時間、その公園に来た時間、帰った時間が存在するはずだ。そこまで調べるのは中々面倒で、私情極まりないことに許可は下りるわけないのだが、その辺はどうにかしようとは深く考えずにおく。

(あれから一月だ。まだ、待っている。もしかしたら何か事情があってもう公園に来られなくなったのかもしれない。病気なら見舞いを、とそうキースが考えているのを知っている。しかし奥手な男、行動には移せず(普通に考えてストーカーだ)それでただ待っている。その姿をわたしは見ているんだ)

今日診察したあのそばかす顔の少女を思い出す。彼女のように、キースの恋の相手もNEXTとしていわれのない迫害を受けているかもしれない。当人には悪いが、それならには好都合だった。

もし彼女が「そう」なら、きっとキースが救う。キースを救った彼女が今度はキースに救われれば、それはとても強い結びつきになって、そうして、キースの恋は実るのだ。

自分が絶望の淵にいるときに救い上げてくれた存在にひとは依存する。少し前のジェイク事件、クリームがわかりやすい例ではないか。そういうケースを多く見れば、きっと、いつか、ユーリを絶望から救い上げる手段が、もしかしたら見つかるかもしれない。さして期待してはいないが、それでも「もし」という好奇心がにはあった。

そして今また笑うようになりながらも、それでも公園に黙って行くキースのその背中をはいい加減見るのが嫌になって、それで、それで、それであるから、必ず探し出して、キースに会わせてやろう。

(わたしにはその能力がある、手段がある)

この己が、天才夏目が本気を出して探し出せないわけがない。そうは強く思い、頷いて、鼻歌さえ歌いながらウィンドーを開け夕暮れの風を楽しんだ。

二人が上手くいけば、またキースは楽しそうに彼女のことを話しにくるだろう。笑って、嬉しそうに、照れくさそうに言うだろう。彼女を見つけた自分に感謝するだろう。この己が誰かに何かしてやろうなどと考えたのだ、感謝してもらって、そして気分が乗れば彼女のいる公園に一緒に行ってやったっていい。

「局長、言っておきますけど、嫉妬しないから恋してないなんてことにはならないんですよ」

医務局に帰ったら早速ハッキングしようと脳内でプログラムを組み立てているに、呆れた顔と声で秘書が呟くけれど、その声はの耳には届かない。

「それと、局長のしてることって善意というか悪意しかないって気付いたほうがいいですわ」

もちろんこの諫言も耳に入ることはなく、秘書はため息を吐いて、これであるから処女の小娘は面倒くさいのだと上司に抱くにしては無礼な感情を抱き、かかとの尖ったヒールでアクセルを思いっきり踏み込んだ。


 

 

 

Fin

 

 

 



あと一回続きます。今度はキースさんとさんの公園デートのターン。
さんはなんだかんだと無自覚にキースさんに恋してるんだけど当人恋とか愛とかよう知らん。さんのしてることがなんで悪意に塗れてるのかは次回で書きたい。予定は未定。二ヵ月後くらいにUPするかもしれん。

(2011/10/13 AM01:20)