其の目に刻め、忘れるな
馬鹿みたい。馬鹿、馬鹿。ばかじゃん。だっせぇの。 走って走って、らしくもなく息が上がって呼吸の仕方が解らなくなる位、戸惑いながら逃げた。暗殺任務は無事成功!我ながら何て鮮やかなお手並みだろう!絶対に誰も、あの戦バカがくのいちに殺されただなんて解らない。自然死だって決め付けられて、あいつはそのまま忘れられるんだ!(この時代、彼の年齢はもう老人の域に達しているのだし)完璧だ!さすがはくのいちちゃん!褒めて、ねぇ、褒めてよ幸村さま!!ねぇ、どこ?どこに、幽閉されてるの?お館さま!!お願い、あのヒトを返して!!言われた通りにヤってきたでしょう?友達だって思ってたあの子の恋人だって殺してきたじゃない!だから、だから!!幸村さまに合わせて!!! (ねぇ、幸村さま。お館さまは最近変だよ。上杉謙信はただの「敵」じゃなくて「宿敵」なんじゃないの?軍略を競い合って、楽しんでたのに。どうしてここで暗殺なんて!!!) 北条と組んでマロを殺そうとしてることをあのヒトが突き止めた。アタシはそれをあの子に伝えようとして、そしてお館さまに諫言した幸村さまが捕らえられた。(最後に見た幸村さまは鎧を着ていないのに真っ赤だった!)どうして、どうして、どうして、どうして?王道を敷くのがお館さまの夢なんじゃないの?「王道に、我は邪魔か」戦バカはアタシが殺しにきたことを知っていた。そして、アタシが毒を盛った後、アタシが隠れ潜んでいる方を見てそう言った。(何かを知っているならちゃんと教えて!!)解らない、解れない。ねぇ!幸村さま!!アタシもう何をすればいいのかわからない!何が正しいのかわからない! (だけど貴方だけは助けたいの)
了 2006/04/15
くのいち、謙信暗殺後。
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