頑張ったって報われないことはある
「頑張るって、具体的に何をどうするんです」「期待をかけられるのは迷惑です」励ました言葉のあとに、そう返されて苦笑した。生きにくい子だねぇと仕方のないふりをしたけれど、あぁそうだね、と妙に納得してしまったのも確か。頑張って、全てが叶えられるわけがないことを私は一番知っているんじゃないか。だというのに、他人に無責任に「頑張ってね」などと言って、私は何を証明したいのだろう。(他人任せに証明させたいのだろう) あのヒトと一緒になったのは、まだ信長さまが生きていた頃。長屋でまつと夫の帰りを待つのは幸せだったんだよ。毎朝、美味しそうにお茶漬けを食べてくれるあのヒトを見ると自分が一番の幸せ者なんだって思えた。「今日も頑張ってね、お前さま」そう言って、あのヒトを見送るのが好きだった。(ねぇ、お前さま。今では見送るにはこのお城は広すぎるよね)金の茶室もあのヒトらしくていいと思うし、何か難しい理由で必要なんだってことも、三成が教えてくれた(あの子はお前さまのことをちゃんと理解しているよ)けれど、私には似合わないね。どんどん出世して、もう誰も逆らえなくなるくらい、偉くなって、あのヒトの夢は叶った。皆が笑って暮らせる世になった。私も喜んでいるよ。お前さまの願いをかなえることが、私の全て。 「頑張ってね」三成、ごめんね。無責任なことをいって、ごめんね。頑張っても、どうにもならないこと、あるのに。 浮気はダメだよ!なんて強がっているわけにもいかない。あのヒトが手に入れた世界を守るためには、あのヒトの子供がいなくてはならない。私は産めなかった。だから、産める可能性はたくさんつくらないといけない。(解っている!!) ねぇ、お前さま。世界は平和になったね。皆が笑って暮らせる世になったよね。お前さまにも、やっと念願の子供ができて、幸せだね。お市さまの子供なら、お前さまの片思いも少し報われたことになるのかな。(よかったね) 三成、清正、正利。あのヒトをよろしくね、拾丸をよろしくね、茶々をよろしくね。
了 2006/04/16 00:38:00
大阪城が出来て北政所は淀君に正室の座を渡した…という捏造。(史実は秀吉の死後です)
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