「なんつーか、らしくねぇな」
こつん、との頭を撫でて銀時は目を細めた。後先を考えない、というのだろうか。珍しいことである。あの攘夷浪士たちを捕らえるためにかつての仲間たちに連絡を取れば、それは広い枝葉の先の、真選組の耳に入らないわけもない。
折角山崎がのことを白だと判断して、捜査の手を引いてくれそうだったのに、どうして今更、こんなことをしたのか。
「必死、だったから」
「ん?」
「わたしを、助けようと山崎さん、必死になってくれたんです」
だから、とは長い髪を結い上げた。首筋をあらわにして、高く結い上げるその姿は奇妙な、ディジャヴだ。どこかで、見た、記憶がある。はて、と銀時は首をかしげた。はいつも髪を下ろしていた。今も昔も、変わらない。夏場など暑くないのかと疑問に思っていたのだから、間違いはないはずだ。
「あれ、お前、どこ行くの?」
立ち上がってなにやらごそごそと袋につめているの背中に問いかける。振り返ることもせず、は引き出しやら手箱を開けて何かを探していた。
「いえ、ちょっと。蒼穹さんのところに渡すものがあるんです。今回のお礼、ですね。娘さんが風邪を引いたらしくて」
あ、あった、と小さな声。見ればの掌に小さな粉薬の包み紙、と、トラウマに深く刻み込まれている怪しいお茶の袋。
「……いや、お前。風邪引いてるガキに毒飲ませるのはちょっと」
「これは蒼穹へのお土産です」
「神主殺したらヤバイんじゃねぇ?」
「どうして死ぬ路線から離れないんです。玄水スペシャル・壊ですよ」
「いま壊って言った?改良の改じゃなくて、破壊の壊って言わなかった?」
気のせいです、とはぴしゃりと言って袖の中にごそごそと薬袋を仕舞いこみトテトテ玄関まで向かう。なんとなく、銀時も見送った。そういえば、なんで自分最近ここに入り浸ってんだろうか。いや、実際そんなに連日長時間はいないのだけれど、新八、神楽といるときよりも、といると、少し昔の気質に戻るからか、なんなのか、よく、ここに来ているような錯覚がある。
「それじゃあ、銀時さん、行って来ますね。戸締りはしなくても結構です。でも帰るときは鯉たちに餌をやってからにしてください」
と、は微妙なことを言いながら、軽く頭を下げて、出かけていった。見送り、銀時そういえば、がいなければ別段ここでやることもないような気がして、さて、鯉に餌でもやって帰ろうと、一度大きく伸びをした。
Next
そういえば、さっき考え付く限りの方法で「玄水スペシャル茶」を自分で作ってみました。結論、やめておいたほうが良さそうです。あれは、色のついた液体どころの騒ぎじゃありません。(07/6/28 0時3分)
|