[新BK法ルール]
学校対抗戦。各学校の人数が5名以下になれば参加資格を失いその学校は全員失格(しかし死亡はせず、帰還できないというだけで殺し合いは続行)制限時間96時間以内に自分の所属校以外を殲滅すること。(この場合、失格になって生き残った人間は爆破される)
教員は人質となり、優勝校の教員のみが帰還できる。それまで監督は人質として教官の監視のもとに置かれ、ゲーム進行モニターを眺める。





そうして君の手を引く





手渡されたディバッグはずっしりと肩に食い込むほどに重かった。これが自分の命の重さなのだと思う反面、これが、最後の良心なのだとも思う。どうしよう、という動揺は自分にだって当然にあったし、なんで、という理不尽な怒りも感じていた。

(新BR法とやらに自分が参加させられた恐怖、それ以上にこれからどうすればいいのかを考える冷静な脳に嫌悪する)

校舎を出る順番は学校混合の名前順である。はわりと早くに出ることになった。

校舎を走り抜けて出た校庭には、まだ死体はなかった。反政府の作ったBR映画ではここで誰か一人がボウガンで撃たれて死んでいたのだけど。思い出しながらは、大きく後ろに跳ねた。地面に刺さるのは、やっぱりボウガンの矢。

(展開、早いよねぇと、そんなことを思う余裕はあった)

一目散に走ってここを抜け出すことはもちろんできる。夜目にいくらなれたとしても、素早く動く小柄な自分を狙撃手が捕らえられる確立は低い。しかもボウガンというのは連続発射ができないから次の攻撃がくるまでの時間、校舎を影にして森へ入ればまず逃げられる。

「でも、そういうわけにもいかないんだよね。―――そこにいるの!出てこないと撃つよ!」

は素早く鞄の中からマシンガンを取り出して構えた。確認したわけではないけれど、重さと感触でそれだと見当つけていた道具は、想像以上に大きかった。ずしりと手にかかる重みに、めまいがしそうだ。というかこれどうやって使うんだという疑問もあるが構えるだけでハッタリにはなる。

「へぇ…君は乗るってことかな?」

ゆっくりとした、だがしかし自身の優位を自覚している声が校舎の屋根からかかる。聞いたことがある声だ。は目を細めて、物騒な疑惑をかけられたことを「無礼だよ」と諌めるため眉を跳ねさせた。

「失礼な。乗らないよ。でも、佐伯くんみたいなのは困るんだよね。ここで出てくる人間をみんな攻撃するんでしょ、酷い」
「六角は全員俺より先に出たからね。安心して狙撃できる」

顔は知っているが、は実際この佐伯という他校生の性格をよく知りはしない。もしかしたらいい人間なのかもしれないが今現在の状況でははっきりと「敵」認識されて問題ないだろう。と判断しては「敵とか味方」ともう自分以外の人間を区別している自分が嫌になった。
ボウガンを構えなおす佐伯は一寸気付いた、というように気安く首を傾げる。

くん、あのさ、その位置から俺をそのマシンガンで撃つと校舎に攻撃したって疑われて君、殺されてしまわないかな?」

言われて確かに、と納得してしまう。まぁ一応は解っていたのだけれど、それでも相手への牽制になるかと思っていたのだが。そんなこと、六角の佐伯には関係ないらしい。なんでこの優男がこんな簡単に、と思う反面、あぁ、やっぱり、と納得した。BRというのはその状況下で人間の本性が表われるのだ。プレイスタイルが本性だとして、佐伯の「参戦」はなんの不思議もない。佐伯をよく知らないでさえ、そう判断できる。

どうする?は自問した。このままこの男を野放しになどできない。かといって、ここで戦って出てくる彼を待つのは他の人間に警戒心を凭れてしまう。

第一に、自分は佐伯を殺せるだろうか。

(それは無理だ。ヒトを殺すことは、できない。ヒトを殺せるほどに、僕は色々諦めてない)

「あ!!!」

考えていたら反射が遅れた。佐伯の放った矢が左足をかする。

「ごめんね、くん。俺も、本気だから」

たん、と飛び降りた佐伯が今度は外さないように、との心臓に矢を突きつけて笑う。まさかこんなとこで自分が死ぬことになるなんて。笑えない。

(だってまだ、僕は誰にも会ってないのに!)

「くっ!!」

そうして佐伯の矢が放たれる、という次の瞬間、上がった悲鳴はのものではなかった。

、走るぞ!!」

うめいた声は佐伯のものである。え、何が、と確認する前に腕を強く引かれて、は立ち上がった。かすっただけでも足は痛むが、そんなことを言っている場合でもない。強く腕を掴む、その手の主。森の中に入り、月明かりだけでは相手が誰だかわからぬ。自分の後に出てきた氷帝学園のメンバーか?いや、でもこの声。

この「殺し合い」は学校対抗のもの。声の聞き覚え、そして前を走る人の形に覚えがあって、は当惑した。

「…なんで真田くん?」

きみ、敵だよね?と確認する言葉は走りながらのためきちんとした音にはならなかった。


Fin

 

 


突然始まり+続かないバトテニ。
敵同士なのにさんを見捨てられず助けに入ってしまった真田さんが氷帝の誰かにさんを引き渡すまで「お前は俺が守る」と言って自分は立海大の本拠地に居座らず一緒に行動するよ!とかそういう話考えてました。立海大は「俺がおらずともやつらなら心配ない」という信頼から優先事項を変えた+真田くんは人殺しをして生き残る気はない、ということですね。