女性の胃袋には「べつばら」があるという都市伝説?を目の辺りにしたような気がした。テーブルの上に隙間がないほどに置かれた綺麗な色のケーキがパティシエの苦労を微塵も考慮しない無粋さで次々に消えていく。小さな赤い唇に吸い込まれる。見苦しくはないから、それがまた、不気味だった。真田はじっと、の白い手がつかむケーキの行方を眺める。手づかみでとっても、品が悪いとは思えない。まるで桃でも食べているかのような、そんな、小奇麗さ。「」真田は名前を呼んで、続ける言葉をが返事をする間に考えた。ぱくりとケーキを三つ平らげてから、が「うん?」とその間の間など存在しなかったように首を傾げる。
「何かあったのか」
「夢の中へ♪夢の中へ♪行ってみたいと思いませんか〜うふっふ〜♪」
仁王か柳か、それとも柳生であればそのの奇妙な返答に答えることもできただろうが、ボキャブラリーの乏しい真田では上手くいかなかった。仕方無しに彼は黙って、の食べているケーキを自分も手にとって食べてみる。できればホークが欲しいところだがないのなら仕方ない。
「真田くん、おしいの?」
「甘ったるい」
「じゃあなんで食べたの」
「お前の食べているものを食べれば、お前が理解できるやもしれんと思った」
ブン太が試合前にケーキの大食いをするのは見てきたが、よくこんな甘ったるいものを大量に食べれるものだと改めて感心する。「甘い」ともう一度真田が眉間に皺を寄せていると、一寸吃驚という顔をしていたが一度目をぱちり、とやって「きみって、時々すごいことを言うよね」と笑い、そのまま真田の指を取ってついたクリームをぺろりとやった。
Fin
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