流れ星

 


「帰りましょう」
部活が終わって、最後の戸締りをした日吉は部室の部屋に声をかけた。
最後に見たときは寝ていたが、さすがにもうこの時間は起きているだろう。
「うーん」
「まだ寝たりないですか?」
からかうように問いかけると屋根から少し不機嫌な声が返ってくる。
「違うよ。じゃなくってさ、ほら、上がって」
言われて素直に飛び上がる。
「寝転がって」
冷たいコンクリートが背中に当たった。
「空が見えます」
「さっきね、流れ星が出たの」
はクスクスと笑って手を伸ばす。
「まさか、また見るまでずっといるつもりですか」
どのくらいの確立だか知っているのか、と日吉は眉を寄せる。
だがこの人ならやりかねない。
「違う違う」
またが笑った。
「一瞬で消えちゃってね。願いを言い忘れたんだけど」
「残念でしたね」
「うん。でも、だから自力で叶えることにしたの」
らし過ぎます、日吉は目を伏せた。
「ねぇ、ヒヨ子」
「なんですか、さん」
小さな手が前髪をゆっくりと撫で上げた。
目を開けて、真直に迫ったその顔を見上げる。
「これが願い事ですか?」
暗闇でが楽しそうに笑う。
「違うけど、折角ヒヨ子の顔がボクより低い位置にあるから」
言葉が終わると小さくキスされた。
からかうような拙い仕草に呆れて、仕方なくそのまま目を閉じる。
「結局アンタの願いって何なんですか」
終わって問いかけると、はさして面白くもなさそうに答えた。
「世界平和」
それをどうすれば自力でできるのかは突っ込まないほうがいいのだろう。


Fin


あとがき
珍しくヒヨ子が愛されてる。そしてが呆れられてる…。時期的に三年が引退した冬で、オリオン座が見えます。この二人は一生こうやって過ごせればいいんですけどねぇ。