信じられない!!!











震える指先で紙を掴み、わなわなとが震え始めた。渡した張本人、にやにやとその様子を眺めている。趣味の悪いことだとルッチは傍目で思い、しかし、普段であれば僅かでも、ルッチの敬愛してやまぬパンドラ・の心を曇らすような要因、即刻削除するような男であるが、しかし、今回ばかりは完全放置、むしろ内心ガッツポーズをしたくなったり、そういう心境。

ふと、この部屋の主の存在を思い出してそちらを見てみれば、完全に我関与せずといった態度で黙々と仕事をしている。室内だというのにフードと帽子の完全防備の、大将赤犬、かりかりとペンを動かしまるでルッチたち三人などいないように振舞う。
まぁ、確かにそれが賢明だ。いつの間にか、とクザンがふざけて遊びに押しかけることが多くなったサカズキの執務室は、今では完全に、たまり場となっている。当初こそ文句なりS行為に走っていたらしいが、たとえDVでが怯んでも青雉がいる。青雉を追い出せたと思ったら、が復活している。そういう無限地獄にも等しい状況に、サカズキは早々見切りをつけたらしい。

だが、今回に限り、そう無関心ではいられないのではないか。そう、ルッチは検討付けている。


「そんな……嘘だろう?こんなの、どうして…!!」


ダンッ、と紙を机に叩きつけ、はクザンを睨んだ。あまりに力みすぎた所為か、軽く机に皹が入ったが、パンドラに怪我はないだろうかと、ルッチが考えるのはそこである。


「さぁねぇ、でも本当のことだし。態々偽の手配書作るほど俺も暇じゃないよ?」
「指名手配されるまで……!!時間はいくらかあっただろう!!どうして、どうしてもっと早くおれに教えてくれなかった!!!」


ギリギリと奥歯を噛み締める音がする。心底悔しそうに、視線だけで人を殺せるのではないかというほど凶悪な目つきで、世界戦力の一人を睨む。そこまで憤っている、という事実は少なからずルッチに嫉妬を感じさせたが、しかし、それほどに想われているあの男が二度と彼女の前に姿を現すことがないのだろうと思えば、何でもない。

X・ドレーク少将。海軍を裏切り、海賊へと堕ちた。このニュースは一時世を騒がせたのだが、おそらくサカズキにより今の今までには隠されていたのだろう。

何しろ、とドレークは随分と親しそうだった。

悪魔の実の副作用だろうが、やはり他の能力者たちと同じように「パンドラ・」を求める強い欲求があったらしくルッチはよく二人でいるのを見ていた。


「奢るなよ、。貴様程度が何か言ったところで、あの男が止められたとでも想うのか?」


S発言かますときだけはちゃんと顔上げるんですね。まるで最初から会話に参加していたかのように当然とに暴言吐きやがるサカズキに心の中で毒づき、ルッチはそのS発言から護るように、さりげなくサカズキとの間に立とうとした。


「おれは、そういうことを言ってるんじゃない!!とめるなんて、そんなことするわけないだろ!!!」


しかしその前に、がサカズキに近付いて、先ほど机にたたきつけた紙を突きつける。顔に直接当てる勢いだったので、さすがに僅かにサカズキが動いて避けた。


「これがなんだというのだ」

「わからないか!!こんな、こんな……!!」

「妥当な額だな。能力者であり、海兵としての航海術も十分にある男だ。元少将だということを差し引いたところで、野放しにはできん」

「馬鹿か!!」


おぉおお、背後でクザンが関心するような声を上げた。ルッチとて同感だ。あのが、サカズキに口答えをした。しかも、単純でなんの捻りもない罵倒だが、馬鹿と、言った!!


「……何だと…?」


ゴゴゴオオゴオゴゴゴオ。

手にしっかりと、冬薔薇の刻印を握り締め、サカズキはゆっくりと立ち上がった。
だが、しかし、これでもは怯まない。


「馬鹿だといったんだ!どうして、どうしてこんなことになるまで俺に言ってくれなかったんだ!!アイツが……!!!」


さすがにここで盛大な愛の告白とかされたら、それこそルッチはその場で自殺したくなる。そういうことを言いそうな展開だったので、慌ててパンドラの口を塞ごうとしたのだけれど、その前に、が叫んだ。
























「あんなお堅いヤロウだったドレークが、こんなにエロイ格好してるなんて!!絶対見に行ったのに!!!」
























エロテロリストだよ!!だなどと、手配書の写真を指差して、ぎゃあぎゃあわめく、心底悔しそうな


「貴様……!!いうにことかいてそれか!!!!」


盛大な赤犬の蹴りが、にぶち当たった。








 


・海軍本部は今日も平和です。
 どうしてルッチさんがいるのかとか考えちゃだめです。彼はパンドラがいるところなら沸いて出てきますよ。たぶん。