触れられるたびに戸惑うのは嫌いなんかじゃなくて、あい、なんです
「怪我を、したんだね」
唐突な言葉。振り返れば入口に、いつもの野暮ったいショールを何重にも纏った老女の姿。薄汚れた年季の入った布は浮浪者の方がまともなものを使用していると思わせる粗末さ。老婆の顔は重い布に隠されて見えぬが装いからさぞ醜い容貌をしているのだろうと人の意識に入り込み、そしてそれが「真実」だとするような強制力があった。この船でも彼女を「そのように」認識している者は多い。だがしかし、そうではないと抗える数少ない人物であるシャンクスは、一目視界に入れた途端彼女を覆い隠すその汚れた布を取り払いたいとそう思うのだ。
故意に低くした聞き辛い声もシャンクスの耳にはよく通る。振り返り、己が「しまった」という顔をせぬように意識しながら、なんでもないように笑う。
「ヘマしたんだ。バギーに笑われたよ。あいつは今回は怪我しなかったからな。尚更だろ」
「それはきみが、バギーを庇うぼくを庇ったからだって、わからないぼくと思うのかい?」
トン、と、老婆の装いの、冗談のように美しい生き物がシャンクスに近づく。シャンクスとバギーが体を休めるために使うのは見習いら用の大部屋だが、今回、怪我を負ったため物置のひとつを宛がわれた。その部屋は『部屋』というには狭く、しかし眠るには十分という程度のもの。つまりは彼女が部屋の中に入り込めば、すぐに、シャンクスが手を伸ばし触れられる距離までになる。
香るのは布から想像できるような悪臭、ではなくて、なぜこのようにみすぼらしい身なりで?と思うほど甘く心地よく感じられる薔薇の香り。すん、と鼻に感じ取れば即座にシャンクスの胸をかき乱した。
この老婆の仮面を被りそれを当然というように振る舞う生き物、この船の船長ロジャーが「おれの魔女」といい、シャンクスにとっては海賊見習い中に「仕える」べき対象であった。ゴールド・ロジャーの海賊船。見習い海賊は、7歳から14歳程度の子供は船長の下につき、雑用など使い走りの仕事をしながら海賊として必要な初歩的な技術・知識を学ぶ。14歳からは先輩海賊について身の回りの世話をはじめ、武器の手入れや修理の仕方、戦い方などを学び、実際に戦闘に参加するようになる。ついた先輩海賊が「一人前だ」と認めれば晴れて見習いを卒業し、海賊団員の一人として食堂で自分の椅子を持てるようになる。
シャンクスと、それに同じ時期に入ったバギーがついたのがこの魔女、とそう呼ばれる生き物だった。
「どうしてすぐに、ぼくに見せなかったの。ぼくならクロッカスくんとは違う方法で治療をした。いいや、クロッカスくんに頼るのならそれでもよかった。彼は酷く優秀だ。彼に任せれば大抵は心配いらないとぼくは信じている。でも、どうしてきみは、誰の手も拒んでいるんだい」
「アンタに迷惑をかける気はなかったんだ。そのほかの誰にも。大した怪我じゃ、ない。だからおれは自分で、」
「ぼくは最初に言ったよね。この海では小さなかすり傷でも死ねる。だから油断なんてするんじゃァないって」
もちろん覚えている。当然だ、彼女の言葉は一言一句、たとえ己を罵倒する言葉だって、聞き逃さず覚えている。しかしそれを告げるつもりは当然なく、シャンクスは眉を寄せて俯いた。彼女から頂く言葉であればなんでも嬉しいし、それは喜びになる。だがこのように「呆れ」られているのは悔しかった。しかし反論の言葉などない。ただ黙って、ため息交じりに言葉を投げつけるから顔を逸らす。
「そして、それはかすり傷の範疇じゃァない。顔を顰めたくなるほどの、重傷だ」
さっと、シャンクスはの視界に入らぬように傷口を隠した。
「何してるの?」
「見たくねぇんだろ?悪かった」
「このおばか」
ぐいっと、の手が乱暴にシャンクスの腕を掴む。負傷したのは右肩で暫く動かせないだろうとは自分で判断していた。覚えている限りの知識を使い、自分ではきちんと処置をしたつもりだ。だが、切られた、凄惨な切り口は肉が見え、ぐちゃぐちゃとしている。巻いた包帯は真っ赤になって、確かに見苦しいもの。これを、のような綺麗な生き物に見せることがシャンクスには「悪い事」と思え、謝罪し傷を隠したかったのに、はそれを許さず、腕を掴んで真っ直ぐにシャンクスを見つめた。
「おれは、」
「お黙り。暫く口をきくんじゃァないよ。どうせ見当はずれのことしか言わない。そういう口はロジャーか、レイリーのような男になってからおきき」
それじゃあ一生無理なんじゃないかとシャンクスは思った。自分が、船長や副船長のようになれるとは、いくらシャンクスでも思わない。いや、将来自分は必ず船を持って、この海賊団のようなものをつくろうと思う、目指す、志す、けれど、たぶんそれでも、そうなったとしても一生、船長と副船長にはかなわぬと、そういう心でいるだろう。
だがそう言えばきっとは不服そうにするに違いない。だがシャンクスは黙る。は腕を振って何か木箱を膝の上に落とすと、シャンクスの腕を掴んだまま器用にその箱を開けて、中から便をいくつか取り出し机に並べていく。
魔女の治療を受けられるのはそうはいないと、以前レイリーさん、副船長が語っていたその言葉を思い出す。魔女は気まぐれで、その叡智を人のために使うことがほとんどない。レイリーが知る限りが誰かの治療、をしたのはロジャーが大けがを負い、クロッカスが手も足も出せなかったときくらいなものだと言う。しかしバギーが板の棘が刺さったくらいで喚いて、それを苦笑しながら抜いてやったり、手当しているの姿を知っている。
並べた便の二つを開け、布にしみ込ませると、それをそのまま傷口の周りに充てる。切られたのは一撃だけだったが、そのあと畳み掛けるように傷口付近を殴られたため鬱血していた箇所だ。布が触れた途端焼け付くような感覚が脳内に走る。思わず顔を顰めると、が手の力を弱めた。
「痛いって言ってもいいよ」
「大、丈夫だ。このくらい」
「そう。ぼくは麻酔技術なんて持ってないからね。クロッカスくんのところへ行かなかった自分が悪いと、そう諦めてくれればいいよ」
「平気だって言ってるだろ」
強がりであることは、シャンクスの額に浮かんだ脂汗でばれているはずだ。ふぅん、とはその青い目を細めて口の端をにんまりと上げる。面白いと思うようなその顔。人を苦しめて楽しんでいる魔女の顔。彼女が「笑ってくれた」ということだけでシャンクスの心がどれほど明るくなるのか知らぬに違いない。知っていればはシャンクスを喜ばせたくなくて笑いを見せぬはずだ。
「ロクに手入れもしてない剣だね。腕は立ちそうな海賊だったけど、商売道具の扱いが悪いんじゃ、どのみち長くはなかっただろうよ」
鬱血した箇所を適度に沈めた後、ついに傷口への検分に入った。は包帯をさっさと剥ぎ取り床に無造作に捨てる。未だに血が黒く浮き出る傷にそっと白い指を這わせられてシャンクスはびくりと体を強張らせた。
「痛かった?」
「……別に」
どくどくと心臓が鳴る。この音をは傷口に直接触れられたためのショックと解釈してくれるだろう。シャンクスの反応に嗜虐心が沸きあがったのか、ゆっくりと指で、愛しいとでもいうように傷口をなぞる。
「布で縛っただけでふさがるとでも思ったのかい。きみはバカだね。きちんと縫合しないと膿んで腐り落ちるだけ。腕がついていたって、神経が切断されちゃァどうしようないって、きみは知っているだろうに」
「……神経には傷つけてないはずだ」
今も指を動かそうと思えば動かせる。だがは無知な生き物を見るかのように見下してから、緩やかに首を振った。
「今は無事でも、きちんとしなければどうなるか知れない。傷口を焼くっていう手もあるけど、縫うのとどっちがいい?」
言いながらの手は箱から小さな針を出している。選択肢などハナっからないのだとシャンクスにはわかっていたが、さらなる痛みを覚悟するのは難しいことだ。
は炎を滅多に使わない。赤く燃える炎が嫌いだと、そうはっきり聞いたことはなかったが、そうなのだろうとは薄々感づいていたし、副船長が「彼女にはけして炎を近づけんでくれ」と、最初、を紹介される前にそう言い含められていた。
「安心おしよ。ぼくは裁縫の腕だけは自慢できるんだ」
「……傷口を縫うのと一緒なのか?」
「さぁ?」
やはりクロッカスさん、船医のところに行っておけばよかったんだろうかとシャンクスは冷静に後悔した。はそういう気配がわかったらしくコロコロと喉を震わせて笑う。笑うと彼女は猫のようだ。
「痛いなら痛いってお言い」
「そうしたら手加減してくれるのか」
「ふふ、まさかァ」
心底楽しそうに笑う彼女のなんと美しいことだろう。と、そんなことを考えるのは何も傷の熱で頭がいかれているゆえでもない。いや、もう末期じゃね?と突っ込みの入れられる者でもいればいいのだが、生憎の正体を知り、さらにシャンクスのへの恋心を知る者なんぞこの船には2人しかいない。その2人は突っ込みの才能というのは、あるようでないのできっとしないだろう。
「痛い思いをおしよ。それで、もう二度とこのぼくを庇おうなんて思い起こすんじゃァない」
「……なんで、怒ってんだ?」
そこでシャンクスは、が自分を嗜虐して楽しんでいる、のではなくこの痛みが何かの教訓、戒めなのだと、そうしたいことに気付く。
それはおかしい。
そんないわれはないと、シャンクスは目を丸くしてを見つめる。
咎められるような覚えはない。レイリーさんだって、船長だって、怪我をしたシャンクスを案じてはくれたが「なんてことを!」と咎めはしなかった。ほかの仲間など「よく魔女を助けた」「それでこそ男だ」とそう、シャンクスの負傷を讃えた。
「……わからないの?」
普通に考えれば、庇われた。代わりにシャンクスが怪我をした。「自分のせいで!」とが自分を責め、その苛立ちまぎれにシャンクスに当たっている、とそう考えられる。けれど、そんなはずはないだろう。バギーならまだしも、が、自分などが怪我をしてどうこう感じてくれるわけがない。
「おれはロジャー船長の家族で、アンタはロジャー船長が大事にしてる家族が傷つけられたことが許せない。だからアンタは、おれが斬られた後、おれを斬った海賊を殺した。おれを傷つけたから、じゃない。アンタはロジャー船長の名誉のために海賊を殺した」
「…………わかっているならどうしてぼくを庇ったの」
の声が低くなった。隠そうともせぬ不快感。あぁ、彼女にこんな顔をさせたいわけじゃないのに、どうしておれはいつもこうなっちまうんだか。シャンクスは今すぐこの場から逃げ出したくなった。
身体が動いたのは自然だった。ただ、振り返ったらがいた。切りつけられようとしているところ、それを放っておくことなどどうしてできた?
たぶん、が避けることは造作もなかっただろう。けれどその後ろにはバギーがいて、敵のことものことも、気づいていなかった。シャンクスだって怪我をしたかったわけじゃない。勝算はあった。を庇うように割って入って、それで剣で受け止めようとした。けれどシャンクスが思った以上に相手の腕力が強く、妙な体勢のためもあって受け損ねて、それで斬られた。
バギーの怒鳴る声がして、それで、うっすらとした視界に入ったのは激昂する魔女の姿。
「怪我したのは、悪かった。おれが弱いからだ。庇うなら、傷を負うなんてみっともないってアンタは考えてるんだろ。おれはアンタを庇えるほど強くなかった。割って入って無傷でいられるほど強くなかった。そのあと相手を殺せるほどできちゃいなかった。なのに庇った。だからアンタは、」
「もう二度としないで」
考えられる「が怒る理由」を言い続ければ、ぐいっとの手がシャンクスの首を掴んで引き寄せた。吐息が触れる。それほどに近い。ショールに隠れたの顔を見ることはあるが、これほど近くで見る機会はそうはない。嘘のように白い肌に長い睫毛、それらに息を飲んでいると、瑠璃の瞳を燃えるように輝かせたの、空いている手がシャンクスの傷口を押した。
「ッ……!!」
「ぼくは怪我をしてもこんな「醜態」にはならない。ぼくはすぐに治る。きみはかすり傷一つだって直すのにぼくより時間がかかる。ぼくはきみより強い。ずっと、ずっと強い。だからもう二度と、ぼくを庇ったりしないで」
押し付けられた掌は氷のように冷たい。けれど熱を持った箇所には心地よく、痛みで喘ぎそうになるというのにシャンクスは、その乱暴な言葉の濁流のような勢いに眩暈がしそうなほどの幸福を感じた。
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「まるで愛の告白のようじゃあないか」
シャンクスの休む部屋を出て角を曲がるなりかかった言葉には整った眉を跳ねて不快を現す。
「見張っていなくたってシャンクスに危害を加えたりなんてしないよ、レイリー」
「そういう心配は、きみに彼らを預けて半年以降した覚えはないさ」
白々と言われ反論する気がなくなる。は廊下に出るにも慎重に被ったショールと巻きつけて口元を隠したマフラーをさらに念入りに直しながら、進行方向の壁に寄り掛かるレイリーを睨みつけた。この海賊団の副船長。おおざっぱな船長の片腕として細かいところに目が行き届き、基本的な新人教育、作戦、配置などは彼の仕事だ。
この魔女に将来有望な子供を預ける、その正気を疑いたくなるような愚行をしたのも彼で、はどういうつもりかと食って掛かった覚えもある。けれどそれはもう随分と前のこと。
さらりとレイリーの嫌味を交わすゆとりがない自分に苛立ち、は立ち止まった。
「愛の告白だって?盗み聞きなんて卑しい行動の上に勘違いかい。耳、耄碌したんじゃないの。いい年だものね」
「私は君よりずっと若いし、申し訳ないが君より人の感情には敏いな」
は今すぐこの場から離れて手ごろな海賊を2,3隻沈めに行こうか真剣に検討した。いや、けれどまだシャンクスの容体は油断ならない。すぐに処置しなかった所為で傷口から妙な菌が入っていた。抗体のストックがあったからいいけれど、これから、暫く高い熱を出すだろう。クロッカスの腕を信じていないわけではなかったが、は己の得意分野をわかっていた。
「昔の君なら見捨てていた。冷酷にして無邪気なる我らが魔女どの。嘆きの魔女と呼ばれていても君が嘆くのはわが身の不幸ばかり、けして他人のために怒り、涙など流しはしなかった」
「そのメガネ、度が合ってないんだね。誰が怒って、誰が泣いたって?」
泣いたのはバギーだ。あの子はシャンクスが斬られて、意識を失って、わめいていた。そうだ、可愛い己の道化の坊や。あの子を可愛がり甘やかすことが今のには楽しい。その度に少々シャンクスが拗ねたような言動をするが、バギーほどかわいらしい生き物はいないのだから仕方ない。そうだ、バギーが泣いていたから、己はこうして手を貸している。それ以上の理由などあるわけがない。
剃刀のように声を低くして副船長を睨み上げる。己の姿は幼くあどけないが、それでも油断していい相手ではないとレイリーはよくわかっているはず。不快と不愉快を前面に押し出し沈黙すれば、ゆっくりとレイリーが息を吐いた。
「、君は、あの海賊を殺すべきではなかった」
ぴくん、とは眉を跳ねさせる。
それは、ロジャーの「仲間」を傷つけたバカを見逃せということか。仲間意識の強さはレイリーとてよく知るはず。それであるのにその言葉。副船長の口から出たものは思えぬ、とそう侮蔑して言うと、レイリーは一歩に近づき、その場に膝を付く。
長い服の裾が床につき、そして憮然としているの手を取り、レイリーは空いた手でその頬を撫でた。折角被ったフードがずれ、ランプの明かりの下にの暖色の髪が露わになる。
「きみがやらずとも私がやつを殺していた。シャンクスを傷つけ、そしてきみを狙った「敵」だ。いや、きみが直々に手にかけたからこそ、私は尚更やつを生き返らせてこの手で殺しなおしたいと思っているようだ」
眼鏡越しにまっすぐに、そう言う男の顔は真剣だ。
「きみの手が海賊の血で染まったなどと、私はけして許せない。君こそもう二度と、あんなことをしないでくれ」
そこに込められた感情は「嫉妬」とでもいうのか。普段ストイック極まりない顔をして、空々しく海賊副船長なんぞやっている男の激しい感情。は底知れぬ恐怖を覚え、一歩、後ろに足を下がらせたのに、しかし、腕を掴まれているためそれ以上は逃げられぬ。
自覚、している。
己は「男」の感情が嫌いだ。恐ろしい。不安になる。己を、このような魔女を「女」として欲する男の目。誰の物にもしたくないと、己の一切を欲する男の言動が、そうと匂わされた途端全身が凍りついたように動かなくなり、そして恐ろしくなる。断崖に立たされたような原始的な恐怖。どれほど時間を生きようとけして逃れられぬ恐怖。
だから己はショールで顔を隠し老婆を装う。さらには幼い少女の顔。あどけなさを前面にして、「女」とそのように扱われぬように心がける。
己は侮られても侮蔑されても、根底では何も困らぬし、気にもせぬ。けれど女と、肉欲の対象として思われることが恐ろしい。触れる端から熱を帯び、得体の知れぬ感覚に身を落とす恐怖。
それをレイリーも知っているはず。己が、だからロジャーに惹かれたのだと。ロジャーの心には常にだれかの姿があり、そしてどれほど時がたっても、己がどのようにふるまっても、けしてロジャーは己を顧みはしない。冷酷ではなく、ロジャーは、いつまでたっても「ぼくの船長」「おれの魔女」と、そのスタンスを崩さぬ。だからは、ロジャーの船に居続ける。それを、レイリーも知っているはず。それであるのに、なぜ今こんな顔をするのだ。
「レイリー、こんなところでおれの魔女を口説くんじゃねぇよ」
困惑し身動きの取れぬ、逃がさぬ心のレイリーと、暫くののち、豪快な笑い声と気配を響かせて聊か酔いの回った船長がトントンと機嫌よく階段を下りながらやってきた。
「ロジャー」
「ロジャー…酔っているな」
「あぁ、酔ってるぜ。お前もだろう?相棒」
ぐいっと、ロジャーは手に持った酒瓶をレイリーに押し付けた。受け取らぬわけはいかぬと、レイリーはから手を放し、便を取る。そのままは素早くレイリーから離れてロジャーの背中に回った。その動きに気付いているだろうにロジャーは機嫌よい風体のまま、ぽん、との頭に手を置く。
「どうだ魔女。うちの見習い小僧の容体は」
「……油断はできないんだよ。交代で看病が必要になる。クロッカスは?」
「今回の重症者はシャンクスくらいだからな。今はもう上にいるぜ。呼んでこいよ」
ロジャーの手が軽くの背を押した。それでは身が軽くなったようなそんな感覚になり、すっとそのまま階段をあがってクロッカスのいるだろう甲板を目指す。
ちらりと後ろを振り返れば副船長と船長が、にらみ合うよりも聊か険悪な空気を出していて、普段「相棒」と言い合う二人、やはり酔っているのだろうと、そうはそれ以上考えないようにした。
Fin
(2011/01/31 14:03)
リハビリ短い話。
タイトルは瑠璃音さんからお借りしました。
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