頭上から声がかかるということは、巨人族、あまり経験のあることではない。あったとしても、それは己が腰掛けているときにでも同じく巨人の同輩が立っていて、とそのようなときか、あるいは建物のはるか上からという限られた状況のもの。
「ねーぇ、ラクロウ中将。暇なんだよね?ねぇ、暇なんだってお言いよ」
午後の任務を終えて一息つき、巨人部隊専用の訓練場から少し離れた場所にいたラクロウの耳にかかる、少し高い少女の声。巨人のものとしては小さすぎる音量に一瞬気付けず、しかし妙に存在感があるものだから、ラクロウは気付き、そしてきょろきょろと、まずは足元を探してしまった。
声は頭上から聞こえてきたのに、反射的に人を探すときは足元を見てしまう。
「違う、違う、こっちだよ」
辺りを見渡すラクロウが面白いとでもいうように、はしゃぐ子供の声が響いた。ラクロウはそれでやっと、声の主が頭上にいるのだと認識し、そしてその主の心当たりもつく。
「珍しいな」
顔を上げればどういう原理か知らぬが何の変哲も無いデッキブラシに跨ってラクロウの頭一つ分上を浮かぶ赤い髪に黒い服の少女の姿。少女というよりは幼女であるこのあどけない顔に好奇心をいっぱい浮かべた生き物は、見かけのままの生き物ではない。
魔女殿、とそう呼べば赤毛の少女がにんまりと笑った。
「あんまりここ、こないからね。ほら、ぼく、かわいくてちっちゃいからさ?踏み潰されるかもしれないからって、ダメなんだって」
「……」
「ラクロウ中将はツッコミってできないの?」
自分の言動に色々突っ込みが入れられる可能性には気付いているらしい。愛らしい顔をきょとんとさせてこちらを窺い見てくる魔女。と呼ばれているその少女。魔女、と言う名のおぞましさとは対照的にその顔は天使か何かのように愛らしい造りをしている。
ラクロウは巨人部隊所属ゆえあまり面識はないのだけれど、この魔女どのが関わったためにモモンガ中将やオニグモ中将などが酷い目にあっているのだとそういう話を思い出す。大声で怒鳴り、悲鳴を上げるのが基本的に魔女に絡まれた海軍将校の末路だとかなんとか、そういう物騒な話だ。
しかしどうも元来生真面目な性質であるから、答えにくいことには微妙に顔を顰めて無言で通すより手段がない。時折こうしてはラクロウの前に姿を現すのだが、どう考えても己は女子供の相手を満足にできるとは言いがたい。気の利いた受け答えもできぬゆえ、は「つまんない男!」と眉を寄せるのが常だ。それであるのにひょっこりとこの魔女は顔を出してくる。それがラクロウにはよくわからない。魔女の周りには様々な人間がいるだろうに、なんだってこのようなつまらぬ、無骨な軍人になど。
「ねーぇ、このぼくといるときにほかのこと考えてるなんて失礼だよ!」
「あぁ、そうだな。すまない」
「……もう、きみってば本気で謝るんだもの、なんかぼくが悪いみたいじゃない?それってわかっててやってるの?」
またラクロウは黙った。の言動はよくわからない。この場に誰かほかの者がいればいいのだが、午後のこの時間にこの場所に偶然誰か、魔女の話し相手として相応しい人物が通りかかる可能性は低いだろう。
困惑しているとデッキブラシに跨っていた魔女が不満そうな声を上げて、それでひょいっとデッキブラシから飛び降りる。
「…!?」
ひらりと赤い髪が揺れて落下するものだから、ラクロウは慌てて掌で受け止める。筋肉に力を入れれば硬くなり体を痛めるだろうと咄嗟に判断して、割れ物を受け止めるかのように慎重な手つきになった。
とすん、と小さな音がラクロウの大きな掌の上でした。重みというものはあまり感じられない。しかしその小さな音と僅かに感じた重さにラクロウはほっとした。そしてどこ怪我をしなかっただろうかと掌を覗き込む。
「大丈夫か」
「ふふ、受け止めてくれなかったらぼくは泣いてしまっていたかもしれないよ」
「……」
掌には赤い髪の魔女、いや、幼い顔をした生き物がその青い目を輝かせてこちらを見上げている。己は試されたのだと悟り、ラクロウはまた黙る。するとは首をかしげ、そしてすくっと立ち上がる。
「嘘だよ、冗談さ。泣くなんてしない。きみがあんまりにも仏頂面なものだからからかってしまいたくなっただけだよ」
「……そうか」
「そうだよ。そう、そう。ねぇ、ラクロウ中将、暇なんだろうね?」
そういえば冒頭はそのような言葉をかけられたとラクロウは思い出し、首を傾ける。
「いや、少し休憩をしているだけで時間があるわけでは、」
「ぼくは暇なんだろうね?って聞いているんだよ?」
あぁ、なるほど、強制か。
当たり前のように言い放つこのあたりがモモンガやオニグモが顔を真っ赤にして怒鳴る要素なのだろうかとぼんやり思い、ラクロウはどう扱えばいいのか悩む。
黙っているとそれを肯定と受け取ったかが掌の上で機嫌よさそうに鼻を鳴らし、ラクロウの親指の付け根に腰を下ろして広場の一角を指差す。
「ねぇ、あのいっぱい落ちてるイチョウの葉っぱさ、拾うの手伝ってよ」
「……」
言われて見れば広場の隅にはイチョウの木が植えられていて、季節柄か落葉していた。こういうところでもラクロウは己との違いを自覚する。軍人のラクロウの目には一年中同じ訓練場・広場にしか見えぬが、この魔女には四季を感じる心があるらしい。この海軍本部でゆっくりと四季を堪能する余裕のあるものはどれほどいるのだろうかとそんなことを考える。
「綺麗だよね、椛もぼくは好きだけれど、銀杏も好きなんだよ」
ラクロウが無言でその一角に足を進めるとが弾んだ声を出した。どっしりと巨人の歩み。上下に激しく動けばへの負担になると心得ているラクロウはゆっくりと慎重に体を動かす。そういう気遣いがわかるのか、時折がこちらに顔を向けてくる。その顔はどこまでも幼い。
「そうそう、この辺でいいよ。いっぱい落ちてるね。降ろして」
言われたとおりにその場に膝を突き、を降ろそうと手を下にすると、とことこと小さな足で掌から降りていった。
は赤い髪をゆらゆらと揺らしながら腰を屈めて落ち葉を一枚拾い上げると、それをラクロウに見せるように掲げてくる。
「ほら、きんいろ」
ラクロウの目にはほんの小さな葉で色を楽しめといわれても難しい。本来は緑色をしている広がった葉だがこの時期になると黄葉する。黄葉というだけあって、どちらかといえば色は「黄色」と表現するのが正しいのだろうが、は「金色」とそう言う。眼を細めてそれを見つめてラクロウはゆっくりと頷いた。
「あぁ、そうだな」
「綺麗だよね」
「あぁ」
その頷き方があまりにも重要そうに見えたらしいがころころと笑う。「ただ頷いてくれるだけでいいのに、大儀そうにするんだね」そう言って笑うと仔猫のようだと思った。
「ねぇ、拾うのを手伝ってね」
「構わないが、拾ってどうするんだ」
なるほどどれほど集めるのか知らないが、小さな一人では中々面倒だろう。ラクロウがその大きな手で手伝ってやればあっというまだ。
問えばが首をかしげる。
「どれくらいかな?必要なの」
「何かに使うのか」
「ふふ、秘密。落ち葉の用途なんて栞にするしかないと思ってたけどね」
そう言われてもラクロウには見当がつかない。判らなければどれほどの量を集めればいいのかわからぬではないかと、そういう顔をすると、が「じゃあ適当にこの辺の集めていようか」とそう言う。
とりあえずラクロウが落ち葉、で思い当たるのは焚き火や焼き芋などだが、確か魔女は炎を恐れるらしい。けして彼女に燃え盛る炎を見せてはならぬと大将から直々に将官らはお達しがある。
ディエス、というのは、確か珍しい古代種の能力者の海兵の名だったか。まだ佐官クラスだというのに例外中の例外で魔女の護衛官になっているという話を聞く。面識はない。しかし中々どうして辛抱強く魔女の面倒を見ていると中将らの間では評判がよかった。ラクロウは巨人族であるゆえ、魔女の護衛や世話係になることはなかったが、殆どの中将が一度は魔女の世話係を経験し、1時間持てば良い方だった。そんな中もう年単位での傍にい続けられるというのだから「あの男はやる」と、そういえばジョン・ジャイアントが妙に真面目な顔で言っていなかったか。
「たくさん集めてね。暇なんだから手伝ってくれてもいいよね」
別に暇だといった覚えはないのだが、言っても聞いてはくれないのだろうと思いラクロウは無言を通した。それで、を巻き込まないように気をつけながらラクロウは両手を使って落ち葉を集める。集めるといってもラクロウからすれば、砂浜で砂を寄せて小山を作るようなもの。一度の動作での背丈と代わらぬほどの量と高さの落ち葉が集まる。
「これくらいでいいか?」
ほんの一瞬で終わった。を見れば眼を丸くして瞬きをしているので声をかければ、不満そうな顔でこちらを見上げてきた。
「情緒がないよ!落ち葉っていうのはね、もっとこう、ゆっくり集めていくんだよ!」
堂々と非難されて、ラクロウは黙る。どう考えても結果はわかっていたのではないかとそう突っ込みを入れることが出来ればいいのだが見かけは幼い子供にムキになって言い返すのもいかがなものか。
困惑し黙っていると、張り合いがないと判断したかはくるりと背中を向けて、何をするかと思いきや、そのまま集めた落ち葉に向かって飛び込んだ。
「……何がしたいんだ?」
「あ、さすがにこれはツッコミをいれたね?そうそうその調子。突っ込みの才能皆無でも慣れで出来るようになるよ」
ばふんっ、と、の小さな体が落ち葉の山に飛び込んであたりにはらはらと散らばる。随分な量のため飛び込んでも体を痛めることはないだろうが、何がしたいのだとさすがに問うてみた。
はころころと笑い、飛び込んだ体制からひょいっと上半身だけ起こして落ち葉を両腕いっぱいに抱きこむとそのまま頭上に放り投げた。
ラクロウからは小さな一角で落ち葉が舞っているようにしか見えない。だがからすれば、落ち葉の吹雪のなかにでもいるような心持なのだろうか。きゃっきゃと声を弾ませる様子、あまりに楽しそうなのでラクロウはつい自分も少しだけ指で落ち葉をつまみ、の頭上から落としてみる。
真っ赤なの髪に、黄金色の落ち葉が降りかかる。妙に楽しそうな声を聞きながら、つい知らずラクロウの口元が綻んだ。
「なぁに?」
声を出したわけではないが気付かれたようだ。が青い目をこちらに向けてくる。そのあどけなさは「魔女」の名を得ているとは思えぬほど幼く真っ直ぐなものである。ラクロウとて悪意の魔女の逸話を知らぬわけではない。巨人族の間に伝わる話もある。魔女とはまともな女ではないと、そう教えられてきているが、しかし、このようにしていればただの子供にしか見えないのが本当だ。
「なんでもない」
「へんなの。ディエスみたいなこと言うんだね」
「そうか」
「そうだよ。ディエスもよく突然笑って、なんで?って聞くとなんでもないっていうの。へんなの」
小首を傾げて思い出すように目を細める。ディエス、と、それでラクロウはやっと名前を思い出した。ドレークとそういう名前の海兵だ。
そういえば彼女は常に海兵の監視がついているはずなのだが今は見る限り世話係の姿はない。
「ドレーク中佐はいないのか」
見渡す限り己としかいない。巨人族の使用する建物は見晴らしがいいのでどこぞにかくれているということもないだろう。所在を問いながらラクロウは思い当たることがありため息を吐いた。
「……真摯に職務を全うしているものを揶揄するのはどうかと思うが」
今頃ドレーク中佐は広い海軍本部内を「はどこだ…!」と必死に探しているに違いない。気の毒に、と思いながら内心同情していると、が胸を張る。
「遊んだっていいんだよ!だってディエスはぼくの玩具だから!」
「いや、彼は海軍本部の海兵だ」
大の男を子供が玩具呼ばわりするのはあまりよろしくない。ラクロウが顔を顰めての主張を退ければ、不満そうな顔をされた。
これが巨人族の子供ならラクロウはぽん、と頭を撫でてやっただろうが、相手は小さな人間である。普通に潰れる。ラクロウは壊れ物を扱うように慎重になりつつ、再度の頭上から落ち葉を降らせる。
「ふふ、きれい。ラクロウ中将は便利だね」
人を道具か何かのように思っていると取れる発言だが、やはりラクロウは何も言わなかった。ただ無言で、きゃっきゃと声を弾ませる魔女を見下ろす。
2,3度どうしていると、不意に魔女が青い目をまるくしてこちらを見上げてくる。そしてそのまま両腕を伸ばしてくるので、ラクロウはどうしろというのかと困惑した。
「……なんだ」
「だっこ」
「持ち上げることは出来きるが、抱き上げるというのは、表現的に相応しくない」
「ま、そうだよね」
何がおかしいのか吐息のような笑い声を魔女が漏らす。ころころと笑う声は猫のようだが、こうして吐息を漏らせば春に咲く花のようだと、そう思った。別段ラクロウはロマンチストではないし詩人でもないがこの魔女をみていると自然そう思うので不思議だ。
「きみを見ていると、自分がサンベリーナになったみたい」
黙っていると、落ち葉を一枚指で摘んで眺めていた魔女が口を開く。サンベリーナ、とその言葉に覚えがない。聞いて回答は返ってくるものなと悩んでいると、が「おとぎ話の女の子さ」と軽く返す。
魔女は「童話」というものをよく使うらしい。御伽噺、童話、というのはラクロウにはなじみ無いものだ。子供に向けての寝物語らしいが、どちらかといえばラクロウは幼い頃歴戦の勇士たちの武功話を聞くことが多かった。というよりも、巨人族は皆たいていがそうなのではないだろうか。
「知らない?サンベリーナ、親指姫って言う方が有名なんだけど」
知らぬと首を降れば魔女が笑った。
「そう。確かに君たち巨人族には伝わっていなさそうだものね」
名前からして想像がつかない。しかし魔女は妙に楽しそうにしている。あらすじを、と簡単に聞いてみれば子供の出来ない老婦人が魔女に「子供を授けてくれ」と言うと魔女は花の種を授け、そこから親指くらいの少女が生まれたという。
「その女の子の名前がサンベリーナ。かわいい娘さ。ばら色の頬に明るい髪、小さな体でちょこまか動く。老婆を母と慕ってあれこれ手伝おうとするんだけれどね?縫い物、お料理、まるでおままごとなのさ」
歌うようにが話す。少女の少し高い声は楽しさを交えると音楽に近かった。この歳になって己が子供の童話を聞く、というのは妙に不思議な気がするとラクロウは真面目に言い、それでがさらに笑う。
「ラクロウ中将は素直だね。前にセンゴクくんに同じ話をしたら、その魔女はぼくじゃないかって言われてしまったのに」
「そうなのか」
「どうかな。花嫁にトンズラされたモグラは気の毒だけど、基本的に親指姫の物語はハッピーエンドで死人も出ないし、ぼくが関わったにしてはかわいらしいと思うよ」
童話や寓話は元々地方地方で伝えられた話がまぁるく現実味をそぎ落とされて完成されたものと、そのようには言う。そういう話を聞きながらやはりラクロウは不思議な心持だった。己は無骨な軍人・武人でこの大きな掌で武器を振るえば山も崩せる。というのにこの魔女はその己を前にして、小さな子供に聞かせる物語を披露しているのだ。
「サンベリーナはね、自分が小さいことにコンプレックスを感じてしまうんだよ。いつまでもいつまでもとても小さいの。お母さんのお手伝いはできないし、ついうっかりコップの中にはいってしまっただけでも覚えてしまう。ひよこだって彼女より大きいのだから、彼女の目線で話せる生き物はいなかったんだよ」
気付けばはラクロウの掌にちょこん、と腰掛けている。あどけない青い目に、白い頬。にんまりと笑う口元はそのおとぎ話の少女を笑っているのか、それとも何か比喩的な話をしているのか、それは、ラクロウには判断がつかない。
大きさ、について、その話は己に対しても言えることかとも思う。巨人族、巨人の村で生活していた頃は気にならなかった。椅子も寝台も家も何もかも己の体にあっているもので、不自由はないし、それが「妙」なのだということもまず考えなかった。
しかし海に出て、己らが「巨人」とよばれる生き物であると知った時のことを、ラクロウは今でも覚えている。自分が普通で当たり前だとそう思っていることがそうではなかった。よく人に「大きい」といわれるが、ラクロウたちからすればそうではない。周りが「小さい」のだ。
「サンベリーナはひとりぼっちでね。とてもかわいそう。お母さんに愛されていたけど、でも彼女はひとりぼっちだったんだ。そういう気持ち、中将はわかる?」
問われ、ラクロウは思考を戻した。腰掛けた小さなを見下ろす。こうして己と向き合っていると、魔女は自分がその親指姫のような心持になると、そのように言う。それはサイズというだけの話だろうか。いや、単純な話のはずだ。魔女は確かに小さいが、それは海軍本部に多い人間のサイズで考えて問題ない小ささだ。それであるから、その親指姫のように「ひとりぼっち」ということはないはずである。
「自分が一人きりだと思ったことはない」
「そう?」
「巨人部隊には同胞も多い。それに、体の大きさは違えど志を共にする海兵がここには多くいる。そういう意味では、育った村以上にここは心が満ち足りるといえよう」
己のことに置き換えて真っ直ぐに答えると、が「真面目だね」と感心した。答えながらラクロウは、自分の答えの丁度反対側に、この魔女がいるようなそんな予感がほんの少ししたのだが、しかしそれがどういう「正反対の場所」なのかはっきりとはわからない。
いま見てきた限りでころころと表情を変えて愉快そうに生きている魔女が孤独を感じているのだろうか。いや、それはなかろうと、そのように思い、何故自分はぼんやりとした予感を覚えたのかと疑問に思う。
が黙ったのでラクロウも黙る。膝の上においていたイチョウの葉を一枚つまみ上げ、が吐息を漏らした。
「一人ぼっちならそれでいいのに、サンベリーナは妖精の国の王子さまに見初められてしまってねぇ。結局彼女は妖精の国のプリンセスになってしまうのさ。もちろん妖精になるために羽を貰ってね」
「それが悪いような言い方に聞こえるが」
子供向けのいい話ではないかと思う。物語はめでたしめでたし。一人ぼっちの少女は身の丈のあう相手と幸せに慣れたとそういう話だろう。なぜ魔女が不満に思うのかと問えば、はその青い目を細めて肩を竦めた。
「だってそうでしょ。彼女は「今と違う場所」で幸せになったってことさ。それってつまり、奇跡とか、何かしら、100人が100人体験できるような変化ではなく、特別なことがないと、当たり前じゃない生き物は幸せにはならなかったってことじゃない?」
それが不満だと魔女は言う。
「まるで黒蜜をかけた砂糖菓子のように甘いお話だよね。でも、ぼくはとってもおぞましく思えてしまうんだよ。現状を変えて幸せに、ではなくて現状を捨てなければ幸せになれないんだってことを言っているんじゃないかってね」
そう魔女が真剣な声で言う。声を潜め、眉を顰めて言うその真剣さ。先ほどまでの幼女の面影が消える。まるで老練な年老いた女が若い青年(この場合はラクロウ)に老婆心ながら、というような、そんな様子。
こういうときに気の利いた返事を出来ればいいのだが、やはりラクロウはただ無言でその話を聞くことしかできないのだ。
+++
珍しくドレーク中佐は苛立っていた。
いや、彼だって人間だ。
神経に障るような出来事は当然あるし、正直感情的になっていいだろうかと思う場面は多々ある。しかしこれほど焦り、苛立つことは滅多にないといっていい。
「全く、いいご身分だな。子供の相手をして大将殿の覚えがめでたくなるというのは」
「能力者だからただでさえ優遇されているのに」
「戦地に行き直接悪と戦う海兵の本分をなんと心得るのか」
手っ取り早く状況を説明しよう。
ディエス・ドレーク中佐。現在同期の海兵たちに絡まれていた。
場所は海軍本部のあまり人通りの無い所。いい歳してこんなことをする連中がいるのかと顔を顰めたくなるが、縦社会はそういうことが、割りとある。何しろドレークは同期の海兵たちよりかなり早く出世し、また中佐という身分でありながら大将赤犬や青キジの執務室に自由に出入りを許されてもいる。
嫌な話だが僻みも買う。出世したのは申し訳ないが自身の実力であるという自負があるけれど、将官クラスに覚えがいいのは、蓋を開けてしまえばそれはドレークがの遊び相手になっているからである。
(…いや、あれを遊び相手などという多少なりとも対等な関係と前向きにとらえることなどできないが)
反論も何もせぬドレークを痺れを切らした海兵の一人が殴り飛ばしてきた。能力を発揮せずともこの程度の人数ならすぐさま片付けることはできるが、そうなれば騒ぎになる。どちらに非があるか明らかであるのだが、「騒動になる」のをドレークは恐れていた。海兵同士の喧嘩は軍法会議にかけられる。そうなれば短期間、あるいは長期間ドレークは身を拘束されることになるかもしれない。
(その間誰があいつの面倒を見るというんだ)
ドレークが遠征に出ているときとはわけが違う。が一人ぼっちになるだろうと、だからドレークは騒ぎになるのを疎んでいる。それで反論も何もせずただ相手が怒鳴り散らし殴り満足するのを待っているのが常であった。
しかし、今日は苛立った。
がいなくなったのだ。またいつもの気まぐれでそこらへんに散歩に出ているだけとは思うが、何かあったらどうすると、ドレークは探しに出て、そしてこの状況。
一刻も早くを探し出したいのに、こんなことに時間を取られている暇はないというのに。
「お前がのうのうとしている間にいまも各地では悪がはびこっているというのに。力なき市民が血を流しているのにお前は何もしないのか」
何も言い返さないドレークを一層詰ってくる。ドレークは殴られた箇所を手で押さえながらダメージを確認した。骨は折れていない。さすがにそろそろ内出血しそうな怪我をするかもしれないが、この程度、とも思う。
こちらの胸倉を掴み壁に押し付けてくる海兵の憎悪に満ちた目を見つめ返しながらドレークはぼんやりと、殴りたくなる気持ちもわかると、そう思った。
この連中は魔女の存在を知らない。ドレークが「大将のところの子供の面倒を見ている」とそういう噂を聞いているだけだ。そして異様に早い出世、そして何かあるたびに中将らがドレークを庇うものだから、何かしらの不満を常に抱えている。
聞いた話では、少し前の海賊討伐でこの同期の海兵の部隊が彼を残して全滅したそうだ。目の前で仲間が海賊に殺された。やるせない怒りのぶつけどころとして己が選ばれているというのも、多分ある。
げほりっ、とドレークは血反吐を吐き、口元を拭う。白いスーツに血がつき顔を顰める。が見れば眉を寄せて「なぁに、それ」と問うてくるだろう。それはまずい。は、ドレークを「玩具」だとそう言って憚らない。彼女に独占欲と言うものがあるのか知らないが、そう思っている自分が何者かに害されたと知れば、あまりいい状況にはならない。
を探しにいく前に着替えなければならなくなった。また時間が取られ、ドレークの苛立ちは増す。
「能力者というだけで優遇されているお前などに、おれたちの気持ちがわかるものか…!!」
黙り続けるドレークをどう判断しているのか、海兵が怒鳴り、そしてドレークの腹を殴る。げほりと再度咽て、ゆっくりと呼吸を整えた。
のお守りを「楽な仕事」であると思ったことはドレークは一度もない。そして能力者がはたして海軍で優遇されているかといえば、それもまた疑問だった。体よく利用され命を落としたものが何人いるだろう。そして悪魔の実の研究のために犠牲になった能力者は、一体どれほどいるのだろう。だが体験していない人間にそれを説いたところで理解するだろうか。いや、するわけがないとドレークは諦めていた。
おおよそマイナス思考が似合わぬドレーク中佐であるが、しかし、ある一点においては彼はとことん人間不信であるとも言える。ドレークは諦めているのだ。自分以外の人間に自分の考えが理解されることは殆ど無い。知ることはできたとしても、理解というのは確実なところではまずありえないのだと、そうドレークは海軍本部内で悟っていた。だから正義の枝分かれのようなものがあり、だからこそ圧倒的な「絶対的正義」が必要でもあるのだと、そう考えている。
だからここで自分が世話する少女がどれほど外道か、あるいは彼女を取り巻く環境がいかに、重度の危険を孕んでいるのかと言ったところで、同期のこの海兵は「そんな程度がなんだ!おれなんか」とそのように思うだろう。誰だって、聞いた話より自分が実際に体験しているもののほうに重きを置く。
だからドレークは、部下を失って感情を持て余す同期の男を「哀れだ」とは思っても、しかし、やはり心底気の毒、には思えない自分を許している。
まぁ、正直、のあのわがままっぷりに付き合うのを「楽しているくせに!」というのなら、是非一度代わってほしいと心の底から思うが。
「それは一方的な暴力になるのではないか」
ふと視界が曇ったと思ったら、頭上から低い声がかかった。
唐突なことに顔を上げてみれば、滅多にこちらには来ない巨人部隊のラクロウ中将が生真面目な顔を顰めてドレークと海兵らを見下ろしているではないか。
「ラ、ラクロウ中将…」
将官に見られたと、ドレークを囲む海兵たちの顔から血の気が引く。ドレークとしてもいい状況ではない。これが青キジなら何とか言いつくろうことができるが、巨人族の中でも真っ直ぐな性格と評判の高いラクロウ中将では、ドレークの恐れている軍法会議うんぬんに発展する可能性が高かった。
どう口を開くべきかとドレークが迷っていると、周囲を見渡してからラクロウ中将がドレークに向かい口を開いた。
「彼女をこちらで保護している。すまないが引き取りを頼みたいのだが」
「……そちらにいたのですか」
こちら、というのは巨人部隊の使用する棟のことか。よりにもよって、とドレークは途端普段の胃痛を思い出して顔を顰める。しかし生真面目で通っているラクロウ中将に保護されたのはありがたかった。以前ジョン・ジャイアント中将がの遭遇した折には、それはもう面倒なことになった。からすれば巨人族もちょっとしたアトラクション程度なのかと聴きたくなるほど、こう、デッキブラシでジョン・ジャイアント中将の周囲を飛び回り肩に乗ったりなんだり、と、思い出してドレークは余計胃が痛くなった。
ラクロウ中将が一瞥するとこれまでドレークに対して敵意を向けていた海兵らは途端大人しくなり、俯く。そのまま素早く立ち去らぬのは上官への礼儀を捨てきれぬからだろう。基本的に悪い連中ではないのだ、とドレークは知っている。だからこそに厄介なのだ、とも。
彼らは自らがこの場を去ることはできないだろう。そう判じてドレークはラクロウ中将を見上げてから丁寧に頭を下げた。
「探しておりましたので助かりました。今すぐ窺いたいのですがよろしいでしょうか」
そう言えばドレークはラクロウ中将とこの場を去れる。そうすれば彼らも息をつけるだろう。ドレークは歩き出し、白いコートの裾を翻した。カツン、と軍靴を鳴らせば一瞬同期海兵の舌打ちが聞こえたような気がするが、そんなことを逐一気にしていたらやっていられない。
+++
「ありがとうございます」
ラクロウが一歩進むたびに立ち止まり、そしてそのあとを小走りについてくる海軍将校を振り返れば、途端そのようなことを言ってきた。
「魔女を保護することは海兵として当然の勤めだ」
礼を言われる覚えはないとそう言えば、ドレーク中佐は少しだけ困ったような、だがほっとした顔をする。なるほど魔女のことうんぬんではなくて(確かにその礼は先ほど言われた)先ほどのことかとラクロウは気付く。どう見てもドレーク中佐が下士官に殴られていたようだが、ドレーク中佐の実力はラクロウも聞き及んでいる。階級章から察するに一般兵だろう2,3人程度にどうこうされるとは思わぬのだが、このドレーク中佐の態度で何ぞわけありか、とも思う。
まず考えられるのは、あの絡んでいた海兵たちはドレーク中佐とほぼ同時期に入隊した人間なのではないかということだ。ラクロウには理解できぬが、自分よりも早く出世する人間に対してよからぬ感情を抱く者も世の中にはいるらしい。
海兵になってラクロウが心底不思議に思ったのはそういう「嫉妬」という心だ。
巨人族のラクロウはそのようなことを感じたことはない。育った巨人族の村でもそうだったように思える。海軍本部にいる同族にも一度問うてみたが、やはり皆男女の関係なしに人を羨んだことはないという。
ラクロウら巨人族にとって重要なのは信念を持ち続けることと、武力・知識のどちらでも構わぬが強くあることだ。こうありたいと思う己の姿を描きそうなるために300年の寿命を生きる。他人を尊敬し教えを請いたいと思うことはあれど、羨み妬むという、その心がどうもわからぬのだ。
だが海兵になってこうして巨人意外の生き物の居る世界を見ると、どうもそう単純ではないのだと知った。
しかし先ほどの出来事は、海兵として規律を乱したものは罰せねばならぬという考えが浮かんできたが、ドレーク中佐は今「ありがとうございます」とそのように礼を言ってきた。それはあの連中の間に入ったことと、そして何も罰せず立ち去ったことへの礼かと、そう思い当たった。
もちろんラクロウはそうと気付いておらず見当はずれの言葉を返してしまったのだが、それも、表面上受け取れば「自分は関与しない」とそのように示したと取れるやもしれぬ。いや、ドレーク中佐とてラクロウが今やっとそう思い当たったと気付いていようが、一応先ほどの「会話」はそのように「作られ」たのだ。
ほっとしたという仕草はラクロウが「黙っている」というような態度を取ったからではなくすぐに「海兵同士のいざこざ」を思い当たらなかったことへの安堵か。
「……その若さで魔女の世話役になるだけのことはある」
「何か?」
人のよさそうな顔をして中々やるとラクロウは関心する。生真面目な性格を自負しているが、こういったやり取りをする人間を素直に賞賛する心くらいは持っている。それにドレーク中佐のこと、「いざこさ」が発覚したら面倒なことになると考えるその根底は、おそらくは私情ではなく海軍にとっても意味のあることではないのかと、そう信じるに足るものをラクロウは感じ取った。
「いや。ところでドレーク中佐。魔女は銀杏の葉を集めるためにこちらに来たようだが、いったい何に使用するつもりなんだ?」
「………どうやらご面倒をおかけしたようで」
話題を変えようとつい気になっていたことを問えば、ドレーク中佐は足を止めて片手で顔を覆った。どうやら心当たりがあるらしい。深いため息を吐き、謝罪の言葉を口にする自然の流れから普段苦労しているのだと察せられる。
「いや、面倒とは思わないが…」
「彼女のことです。手伝ってくれ、などといいつつ自分でやる気は皆無、全て中将にお任せしただろうことは…見ずともわかります」
事実その通りだったのでラクロウは何も言えない。
いや、べつに落ち葉を集めるのなど一瞬だったので面倒というわけでもなかったのだが、ドレーク中佐にしてみれば「あいつはまた人様に面倒をかけて…」と胃の辺りを押さえていた。
「世話係というよりは保護者か何かのようだな」
「……自分でも最近そのように思います。私はまだ独身なのですが」
300年生きる巨人族からすれば人間の寿命は短い。ドレーク中佐の正確な年齢は知らないが結婚し所帯を持っていてもおかしくはないのではないか。そう思いつつ、ラクロウ自身巨人族で考えれば結婚していて問題ない年齢なのでお互い今はまだ海兵としてのやるべきことを念頭に置きたいのだろうと見当つける。
+++
少し前を歩き、こちらが追いつくまで待っていてくれるラクロウ中将に続きながらドレークは久しくなく穏やかな気分だった。
先ほどまではがまたどこぞに行って怪我でもしていないかと気が気ではなかったが、保護されていると聞いたからだろうか。そしてラクロウ中将との会話がまるで胃への負担にならないことに軽い感動もあった。(いや、普段から対面する相手相手がとんでも海兵ばかりなので)
親しいわけではなく、こうしてじっくり話しをすること事態初めてなのだが、なるほど聞いていた通りの人格者だとしみじみと思う。巨人族の声は大きく耳が痛くなるというのに中将はこちらを相手にしたときにどれほどが適当かと理解してくれているらしい。
この落ち着いた話し方がドレークにはとてもありがたかった。ここ最近は我侭放題のや、だらけた性格やら、理不尽な嫉妬を向けてくる大将らの相手をすることが多かったので、ドレークは本当、マトモな人間を切望していたのかもしれない。
お前どんだけ普段から苦労しているんだ、と誰か突っ込んでやってほしい。
さて、暫くいけば、巨人部隊の使用する広場に出る。広すぎるその場所であってもドレークの目は素早くを見つけ出し、そして額を押さえた。
「おや、ディエス。あれ?ラクロウ中将ってばこのぼくを放っておいてどこかに行ったとおもったらディエス探しに行ってくれてたの?」
ラクロウが戻ったことに気付き、こちらに顔を向けたが首を傾げる。自分が脱走した、ドレークに面倒をかけた、などという自覚は、当然のようにないのだろ。
おそらくはラクロウ中将に集めさせた落ち葉の山にちょこんと腰掛け、落ち葉を舞わせて遊んでいる様子。脱走したことが赤犬に発覚すればただではすまぬというのに、相変わらず危機感がない。
寒さのためか少し赤くなっている頬に気付き、部屋に戻ったら一番に体を温める飲み物を用意しなければと思いつつ、に近づく。
「、勝手にいなくなるんじゃないと何度言ったらわかってくれるんだ」
「なぁに、ディエス、このぼくにお説教?」
「心配したんだぞ」
言えばが黙る。眉間に皺を寄せて、それで何か言おうと一度口を開くが結局何も言わず、ふいっと顔を逸らした。
子供かお前は、といいそうになりドレークは機嫌を損ねるのもどうかと思ったのでそのままくるりとラクロウ中将を振り返った。
「ラクロウ中将、本当にありがとうございます。助かりました」
「先ほども言ったが、海兵として彼女を保護するのは義務であるし、また力ない幼い子供を守るのが海兵の務めだ」
ドレークの礼の言葉を受ける身分ではないと辞退するその謙虚な姿勢。ドレークは本当に「普通海兵というのはこうあるべきだ」とじんわり感じ入った。
そしてを魔女と知っているのに「子供」「守るべきだ」とそう考えてくれているのが嬉しい。ドレークにとってどれほどおぞましい過去を持とうとは。幼くあどけない、少々性格のひねくれた子供なのだ。それが周囲に「化け物」「魔女」とそう扱われてその色を濃くしているのが時々たまらなくなる。だから、こうして自分と同じように海兵の義務、人としての考えを持ってに接しててくれているラクロウ中将がありがたく思えた。
そういう意味を含めてもう一度頭を下げると、そのコートの裾をぐいっとが引っ張ってくる。
「……なんだ」
「落ち葉、これだけ集めたんだから労いなよ」
「ラクロウ中将、彼女の面倒を見て頂いてありがとうございました」
「違う違う、ぼくを褒めなよって」
いや、見たわけじゃないが絶対お前が集めたとかそういう展開はないだろう。
山盛りになった落ち葉に腰掛けて堂々と言い放ってくるこの悪魔っ子はどうすればいいのだろうか。ドレークが絶句しているとラクロウ中将が軽く咳払いをした。
「それで、この落ち葉の用途は何なんだ?」
「この前ねピアくんから手紙が着たんだけど秋に焼き芋を食べないのは人としてどうだろうか、って。何だか気に入らないからぼくも焼き芋しようと思ったんだよ」
頼むから余計なことを言わないでくれとドレークが頼む間もない。あっさりとバラしてしまうにドレークは胃の痛みを感じ、何か言いたそうにこちらを見下ろしてくるラクロウ中将から顔を逸らしたくなる。言いたいことはわかる。一応に炎を見せるなと赤犬のお達し。それはドレークも知っているし、炎を見てがどれほど怯えるかも知っているのだけれど、そのの恐怖スイッチは妙なもので、焼き芋をするための焚き火なら大丈夫!とそう宣言するのだ。まぁ、気分的な問題なのだろうとその辺は納得するが、よりにもよって海軍本部内で焼き芋をするなんぞ、まぁ…あんまりよろしくはないだろう。
しかし、はやるといったらやる。
シェイク・S・ピアからの定期便を受け取ってから妙にはしゃぐのこと。何ぞするかと確かにドレークも思ってはいたのだが、本日こういう行動を起こすとは思っていなかった。自分もまだまだ読みが浅いとそういう妙なところを反省しつつ、ドレークはひょいっとを抱き上げた。
「まずは焼く芋を用意してから考えよう。とにかくお前は一度部屋に戻ってくれ」
「なぁに、ディエスのくせにぼくに指図?」
「大将赤犬がそろそろお前の部屋を確認にくる頃だ」
言えばの顔から血の気が引いた。なんだかんだと我侭し放題でありながら、やはり赤犬のことを直接思い出すと危機感が生まれるらしい。そう思うのなら脱走などしなければいいのにと思うが、言っても無駄だろう。
確実に自分も責任を追求されるだろうと思いながらドレークが歩き出し、とりあえず焚き火の中に放り込む芋をどこから入手してくるべきだろうかと、そんなことを考えた。
Fin
(2010/12/09 17:41)
|