Lost Wj 16 another



ゆったりブランコに腰掛けてユラユラ足をブラ下げながら悠々、シャボン玉なんてそろっと吐き出す、ふわり浮かんでキキラキララ七色に輝く。海軍本部マリンフォードの空に輝き飛んでいく、上に上に、登っていくその様子を眺めて、、後ろを振り返った。

「16年前から決めていた。共犯者は、ドフラミンゴにするって」

静かな声。何処までも何処までも透き通るような、底の冷えるような、声である。何者かを容易く利用し裏切るような男とこれからの運命を共にする、危うさなどはない。あるのはただ、どこか捩れたような、発狂寸前の月女のような響きのみ。これこそが魔女の悪意そのものだということをピリリピリリと肌で感じ、サカズキ、の向かいに回りこみ、じっとを見下ろした。その手袋を嵌めた手には小さな花一つ。一輪、と数えるのが正しい、真っ赤な薔薇、である。

「・・・・私が、貴様にかける言葉など、最早何の意味もないな」

向かい合う、視線。サカズキの赤い眼と、の真っ青な瞳。サカズキは一度の方へ手を伸ばした。これまで一度とて、サカズキが手を伸ばせばただびくりっ、と脅えていた。今はもう、あどけなくただ、それを待つだけの幼い子の眼をして、じっと、サカズキを見つめたまま。その手が触れてしまうほどの距離となっても瞬き一つせぬ。サカズキは触れる前に、手を引いた。ぎゅっと伸ばしたはずの手を握り締め、引くとそのままその手は下に下がる。

はその一連をただ眺めて、いっそ憐憫さえ含むような眼差し、気の毒そうに眉を寄せるようなあからさまな様子こそはしなかったものの、明らかに、同情、に似た類の感情しか込めぬ声で、そっと、サカズキに呟いた。

「僕はもう、君のものじゃあない。何一つ、君に従う理由はないし、君を思う理由もない。僕が選んだのは、君じゃあない」

バキリと、の隣の木が折れた。サカズキが唇をかみ締める音と同時である。それすらの怯むところではなくて、ただ、は眼を細めた。これ以上の言葉を吐けば、どちらも、どうにかなってしまうのではないかと、周囲にだれぞいれば感じ取っただろうに、互いに言葉少ない二人。そして今のにサカズキへの遠慮も恐れもなく、サカズキは、己の中に現在渦巻く様々な感情、動揺、これまで経験しなかったほどの、激情をどう処理すればいいのかとぐるぐる自身、軽い嘔吐感さえ覚えるほど、体調に異変をきだしていた。

ゆっくりと、は手に持っていたシャボン液、ストローを振って消し。ブランコから降りる。真っ白いブランコ。昔はこの場所でSiiやサリューとお茶を飲んだものだと思い出しながら、今では何の未練もないと、ただそれだけがはっきりしている。は沈黙し、何も言わぬ、ただ口元だけを険しく結んだサカズキを見上げ、にこりと、微笑む。

「あいしてくれて、ありがとう」

サカズキがその手に持っている薔薇を、手ごとそっと触れて掴み、は真っ赤なその薔薇に口付けた。ぴくり、と、薔薇を持つサカズキの手が震える。その動揺がにもはっきり伝わっているのに、そ知らぬ顔で、、さらに笑みを深くして、その薔薇を己の髪に飾り、続けた。

「でも、もう。きみ、いらないから」



fin




・小説部屋のパラレルってことで。突発的に書きたくなったんですが、本編での出来事ではなくて、パロとお考え下さい。実際のサカズキさんvsドフラは別に書く予定です。さん、どこまで外道なんですか。




NEO HIMEISM