注意:書いといてなんですがこの話は「甘い!!!」「うっとうしいよバカッポー!!!」しかいません。砂糖が吐けます。ひたすらバカッポーがいちゃついてるだけの話です。山とかオチとかないです。

あとWJ592話扉絵ネタがありますので注意!






 

 





暑い真夏日といえど庭いじりを欠かすなどもってのほか。は日除け帽をすっぽりとかぶり、また肌を出して日に焼かぬため(文字通り白い肌は日光に当たると色が黒くなるより真っ赤になって火傷する)長袖ロングスカート姿、お前どこの中世貴族だ、というような格好は敷地内ではいつものこと。は膝を追って土いじりに興じつつ、突然できた影におや、と顔を上げた。

「サカズキ、早いね?どうしたの」
「近くを寄ったけぇついでに家内の顔を見に来ちゃ悪ィか」
「なんだ、早く帰ってきたんじゃないんだね、ちょっとがっかりだよ」
「言うわりに顔は赤ぇのう」

面白そうに言われはむっと眉を寄せた。日差しの所為だと言いたいがサカズキ相手にそれは通用せぬ。からかわれたとわかりつつ「顔を見に来た」と言われて動揺しそうなのをなんとかこらえたというのに顔はどうにも正直だ。は白い前掛けで土の付いた手を簡単に拭い、サカズキのスーツの裾を掴む。

「じゃあすぐ本部に行っちゃうんだね?」
「あぁ。茶くれぇ飲む時間はあるが、それよりおどれを手伝っちゃるけぇ」

とサカズキの新居から海軍本部までは歩いて二十分程度の距離があるがサカズキなら半分もかからぬだろう。は頭の中でサカズキが好む緑茶と茶がしのストックを思い浮かべたが、それより「手伝う」という言葉に慌てる。

「い、いいよ!サカズキに手伝ってもらうことなんてないよ!」
「わしは役に立たねェと?」
「そうは言ってないよ!だって、その、ぼくはお庭の手入れが好きだけど、サカズキが、旦那さまがするようなことじゃないし…」
「バカタレ、わしとて盆栽のたしなみはあるわ」

言われてはサカズキが手掛ける盆栽を思い出した。二人の新居たるこの家はの趣味で白薔薇が多く育てられているものの基本的にはオリエンタル風。蓮の咲く池には真っ赤な金魚が泳ぎつつ、大輪の薔薇が咲いている、というもの。そういう造りであるから盆栽があっても違和感はないのだけれど、サカズキが手掛ける盆栽は、なんというか、独創的だった。

枝分かれなんぞ不要!とばかりに一切合財伐採され、直立不動。何その盆栽泣かせ、とクザンが突っ込んで蹴り飛ばされたのは記憶に新しい。いや、その真っ直ぐすぎるたたずまいはサカズキの真っ直ぐで揺れない正義そのものを象徴しているとか、まぁ、それっぽい意見も出ないわけではないのだけれど、庭いじりが趣味で植物のそれぞれの姿を愛するとしては「……いっそ樫の木買えば?」と言いたくなる。

そういうサカズキにが手塩にかけて手入れをしている庭を「手伝わせる」など…それはどんな自傷行為だろうか。

「気持ちだけでぼくは十分嬉しいよ」
「おどれ今無礼なことを考えてねェか」

こういうときばかり鋭いのだからこの人は困ったものである。は咄嗟に視線を反らし先ほどまで自分が弄っていた土の上に落とす。先日海軍本部を訪れた際に馴染みの海兵から貰った苗を植えてしまおうとしていたところだ。土を掘り返した小さな穴を眺め、はサカズキを振り返った。

「サカズキはカミレツとか平気?」
「ん?」
「えっと、こっちではカモミールっていう言い方するのかな?薬草の一種なんだけどね、この前T・ボーン大佐がくれたから植えようと思って」
「聞きなれねェ名じゃのう。花が咲くんか?」
「うん、真っ白い小さな花で、野菊に少し似ているの。匂いは林檎っぽいかな?花をお茶にしようと思っているんだよ。サカズキが飲めるといいんだけど」

基本的にサカズキが好むのは緑茶で、夏には新茶を用意すれば機嫌も良くなるほどだ。夏の庭の番人とさえ言われたとしてはそのうち茶葉の栽培にも手を広げようと思うのだけれど、その前に好みの薬草を育ててサカズキに飲んでもらいたい、というそういうささやかな夢もあった。

カモミールはリラックス効果の高い薬草だ。乾燥させたものが有名だが、香りを重視するのなら生の花を煎じてお茶にした方がいい。気分が高ぶった際や、眠れぬ夜にはいいものではいろいろ気の張ることのおおいサカズキのために庭に植えたいと思っていた。しかし生憎と自分が良いと思える苗が中々手に入らず断念していた。

そういう時に馴染みのT・ボーン大佐が胸に上質なカモミールの花を一輪指していたものだから「それはどこで!」と詰め寄った。聞けば先日立ち寄った島で助けた少女がお礼にくれたのだという、なんともT・ボーンらしいエピソード。それはは興味ないのだが、その花は気に入り興味もできた。それで次にT・ボーンがその島に行くことがあればぜひ苗を貰ってきてほしいと頼んだ。人の頼みごとは「命に変えても!」が信条のT・ボーン。それほど日を開けずの望みの品を手に入れてくれて、それでこうして嬉々として植えていたわけである。

話題を変える意味で出したのだが、言いながらは自然と気分が弾み目を細めて口の端を釣り上げた。

「この庭の土もだいぶぼくに馴染んできてくれたし、前みたいに薬草を育てようと思うんだ」
「毒草はなるべくよせ、ちゅうてもおどれは聞かんか」
「薬草は使い方で毒にも薬にもなるからね」

の力かそれとも気合か、この庭には四季さまざまな植物が育つ。本来は冬の植物であるバジルやラベンダーも温室を使わずに育てられるためには重宝している。肉や魚は無理だが、できる限り野菜も育ててサカズキが口にするものは自分が最高のものを用意したいとそれがの目標だった。

「……」
「?なぁに」

今後どう庭を展開していこうかと楽しげに考えているとじぃっとサカズキがこちらを眺めていることに気付いた。放っておいたことをとがめる目線ではない(それなら首を掴んで振り向かせる)ので小首を傾げると、目を細めたサカズキがそれはもう満足そうに頷いた。

「いや、おどれの楽しそうな顔を見るっちゅうんは気分が良い」

今度こそボッとは顔を真っ赤にした。



 


暑い夏!はいはいはい!!水でも被れよバカッポー!!


 

 



「離れちょってもわしのことしか考えんあれがわしを前にしてどう顔を赤くするかじっくり眺めるちゅうんも悪くねぇのう」
「聞きたくねぇよ!!まだ午後の仕事残ってるこんな時間からンなのろけ話…!!!!!」

わざわざクザンの執務室を立ち寄ったサカズキに新居であった一部始終+の心境を聴いてクザンは机を叩いた。

赤犬が青雉の執務室を訪れるなど滅多にない。何か急な事態でもあったのかと身構えて、なんだこのバカッポー。

「マジでこれどんな名前の嫌がらせよ!!!おれにどうしろって!!?」
「おどれはわしの「友人」じゃろう。新婚生活の報告をして何が悪い」
「嘘付けぇええ!!!お前がおれを「友人」なんて対等な関係で見てるわけあるかぁあああ!あれだろ!?どうせ嫌がらせだろ!!!?」

何白々と寒いセリフを吐いてるんだとクザンは突っ込んだ。いや、自分はサカズキを数少ない友人だと思っているが、サカズキがそう思っているなんぞタチのわるい冗談にしか聞こえない。多分人徳、と心の中で付けたし、クザンは頬杖をついてぶすーっとした表情を浮かべる。

「あー、はいはいどうせおれは独身貴族ですよー。お前は家に帰ったら可愛い幼妻が待ってる新婚!本当なにこの差!」
「日ごろの行いじゃねェか」
「お前行動のどの辺が善行だった!!?」

堂々をのたまうサカズキにクザンは再度血管が切れそうなほど声を上げる。いや、確かに「大将赤犬」としてのサカズキの振る舞いは、まぁちょっと「過激☆」と思わなくもないけれど、その信念ゆえの真っ直ぐさ、当人は「正しく生きている」というのだから、それはまぁいいとして。

しかし、クザンが言いたいのはそうではない。

いや、昔に暴力を振るっていた過去とかそういうことでもない。

に近づく男にマヂの脅しかけたり一緒にお昼食べようとしただけのおれに仕事大量に投下したり偶然の洗濯もの(下着)手にしただけでマグマ浴びせるような男が何ほざいてんだお前…!!!」

先日偶然が洗濯ものを取りこんでる最中、強い風が吹いて飛んでしまったらしい真っ白いパンツを上手くチャッチした瞬間、クザンは死を覚悟した。

そのことを思い出してしまい思わず身をぶるっと震わせる。あの時はクザンが掴んだパンツをが二度と履かないということで何とか命は免れた。(本当心狭い)

「わしゃァ愛妻家じゃけェ、当然じゃろ」

基本「目が合ったら浮気」認定の男、ふん、と「何を言うちょるんじゃァ」とクザンの発言が非常識扱い。うわ、とクザンは顔をひきつらせ頭を抱えた。

恋は人をダメにするというが、恋とかそういう大事なプロセスをぶっ飛ばして結婚しやがったバカッポーは、ダメにするというか、厄介さに環をかけて手に負えなくしている気がする。

もうやだこんな同僚。

もう一人の同僚である黄猿はここ最近姪っ子と交換日記を始めたらしく何か始終ニコニコ(いや、以前からではあったが、最近なんかその笑顔がピンクだ)しているし、あれか?三大将でまともなのは自分だけなのか?

「ところでクザン、貴様に頼みがあるんじゃがのう」

自分は転職とか可能なんだろうか、とクザンが本気で考えていると、空気も読まず再度サカズキが声をかけてきた。

「……頼みごと?バカッポー関連?の半径五キロ以内に近づくなって?」
「バカタレ。氷の柱を一本こさえてくれっちゅうだけじゃァ」

その願いならまぁ、容易い。というか、最近猛暑が続くためクザンはあちこちに氷の柱を作るようにセンゴクから言われていた。元帥や大将の執務室、医務室など重要な場所は夏でも涼しいようにと配慮がされるためクザンの出番というわけだ。しかしマグマの身のサカズキが氷の柱など用途があるわけもない。昔はが執務室のソファの上にちょこんと腰かけて過ごしていたのでいくつか所望されたが、今は新婚生活満喫中。

「……あー、ちゃんの?」

そこまで考えてクザンはぽん、と手を叩いた。

というかサカズキが言うのだから関連でないわけがない。っつーかどんだけに甘いんだお前、とクザンは突っ込みたい。

「夜暑くて寝苦しいちゅうあれが何度も寝返りを打とうとするのが不憫じゃねェか」
「……本心は?」
「抱きすくめてるちゅうにあちこち動かれちゃァやりずれェ」

聞かなきゃよかった。

あれか、お前らどんなに暑い日でも一緒に寝てんのか、とクザンはに拍手を送りたくなる。マグマの体。普段からマグマになり高温、というわけではないが常人よりも体温は確実に高い。そんなサカズキの抱き枕になっているは、実は暑さに結構強いんじゃないかと突っ込みたくなった。

「……隔離すれば?部屋」
「バカタレ。わしから離れりゃァ、あれは泣くぞ」
「いや、ちゃん悪夢克服したんでしょ…?」
「わしがおらにゃ、あれは泣く」

二度言いましたよこの男。

悪夢無関係だそうです。悪い夢観よう寝苦しかろうがなんだろうが自分がいれば可だとか堂々とのたまってます。

「とにかくでけェ氷柱を用意せェ」
「あー、はいはい。まぁちゃんが苦しそうに汗かいてるのは可哀そうだもんなァ」
「それはそれで眺めるんは悪くねェぜ」

黙れ鬼畜。

声に出すと殴られそうなので、クザンは心の中で突っ込みを入れ、とりあえずこの夏は何度真夜中に熱中症になるのだろうかとそんなことを考え、できるだけ長持ちする氷柱を作ろうと、とりあえずマリアちゃんに塩を大量に貰いに行こうと思うのだった。




Fin


まぁ、リハビリ目的なのでこんなサラっと。
塩入れると氷は溶けにくい、とかそんな話を聞いた覚えが…?

ネタ提供は「せん」さん。「無自覚だけど赤犬がクザンにのろける話」でした!
いやぁ、ありがとうございます。あれ?これ無自覚!?と思わなくもないですが…なんか組長確信犯っぽいですが…!mainでやろうとも思ったネタ、でもバカッポーの方がクザンの不幸っぷりが面白いと思ったのでこっちにしました!
せんさん、ネタ投下ありがとうございました!こんな感じでいいのか…!!ちょっと不安ですが、まぁ生温かい目で見てやってください!

(2010/07/21 23:56)