*普通にドレークが海軍にいますが、組長verということでさんがとっくに食われているという設定でお願いします。←



*っていうか軽くR16位はあるから、義務教育中のお嬢様はお帰りください。


















真夏日、ミンミンとセミの鳴き声引切り無しで喧しい。いくら心頭滅却すればうんぬんかんぬん、と言ったところで暑いものは暑いに決まっている。きっちり軍服を着こんだディエス・ドレーク少将は額から流れ落ちる汗を拭いながら、真夏の太陽を見上げた。海軍本部、現在真夏日まっ盛り。本日の最高気温は36度、日射病や熱中症に注意するように、と訓練生たちに呼びかける佐官クラスの声が響く。

回廊を越えて、ドレークが足を踏み入れたのは海軍本部“奥”に位置する棟である。大将らの執務室が構えられているだけあって、ほかの場所よりは多少、涼しいように配慮がされている。しかしそれでも建物の一歩外に出れば容赦なく強い日が照り、水分を奪うことに変わりはない。ドレークはなるべく日陰を歩くように注意しながら進み、数歩歩いたところでがっくりと、力尽きた。

暑さに、ではない。

少し進んだ先、見えた白い中庭。白いベンチとブランコがこの軍人たちの仕事場に不釣り合いに設置されていることはもう見慣れたからいいとしても、しかし、いや、確かに、ドレークが今朝ここを通りかかった時はなかったものが、さもあるのが当然のように設置されている。

色は涼しげなブルー。円形、大きさは半径一メートル未満。平たく言えばビニールプールが、冷たいキラキラ光る水をようしてどーん、とその場に置かれていた。そして、その中で当然のようにキャッキャ、と遊んでいるのは、暖色の髪を項で一つにまとめ上げた世界の敵認定されているはずの魔女。魔法だか科学だか知らないが、まぁそんな力で操っているらしい水の竜と戯れながら、それはもう楽しそうな様子。

「…ひ、人の仕事中に何をしているんだ……!!貴様は……!!!」
「あ、ディエス少将。暑い中御苦労さまー」

この海軍本部、現在暑い中、誰もが厚い暑いと辛い思いをしながらも、けして弱音は吐かずに気力で仕事をしている中、ハナっから暑さを堪える気のないこの魔女は、いったい何なんだ!?ドレークはがっくりと肩を落とし、うなだれていると、の、全く持って労りの感じられない声がかかる。



ピンクのレース!



「だってあんまりに暑いんだもの。ぼく、寒いのも嫌いだけど暑いのも、殺意が湧くんだよねぇ、ふ、ふふふ」
「頼むから、自然現象ごときで仄暗い笑いを浮かべないでくれ。というか、どこから出したんだ、このビニールプールは」

手に持っていた書類はひとまずベンチに避難させ、ドレークはプールの脇に立ってを見下ろす。の持ち物はほとんどが赤犬が用意していることは知っているが、あのドSで鬼畜な大将殿が、いくら暑いと言って子供用のビニールプールを用意するとは思えなかった。あの男なら暑い中苦しそうに喘ぐを楽しそうに眺めて仕事をするだろう。だろう、というよりも絶対にやる。ドレークは上官に対してそんな信頼があった。←

問えばはきょとん、と顔を幼くして一言。「アイスバーグが暑くなったからこれで遊べって」とあっさり返す。なるほど、水の都の市長からの贈り物なら、いくらあの独占欲100%の男でも無下にはできないのだろうと思いいたった。

「そうか。礼状はもう出したのか?」
「電伝虫でお礼言ったよ。そしたら、選んだのはルッチくんだって教えてくれた。あの子はやさしい子だね、そう思うでしょう?ディエス少将」

そういうところは礼儀をわきまえているである。ドレークはあのロブ・ルッチが優しいかということには答えず、曖昧に濁して、が立っているプールの中を見ようと何気なく視線をやって、ぎょっと眼を見開いた。

……!!おまっ…!!?」

遠目では気づかなかった。あまりに驚いての両肩を掴めば、も驚き目を見開く。一瞬力が入り過ぎたため顔を顰めたが、しかしすぐに「なぁに?」と首を傾げる。

「ちょっと待て…その格好は何なんだ!?」
「?何って、普通に洋服だけど」

それは見て解る。ドレークは焦った。、現在はTシャツ一枚という格好。まぁ水遊びをしているのだから水着の上にシャツくらい着て当然だと当初は気にもしなかった。おそらく水着だけではないのは赤犬が必要以上の露出を許さなかったとかそういう理由だろうと見当付けていたのだが。

まず、Tシャツの裾からちらり、と見えるもの。水着ではないだろう。ピンクのフリルに縞模様、紐のついた…それはどう見ても下着ではないのか。

「み、水着はどうした……」
「持ってないよ、そんなの」

けろり、と答えて何でそんなことを聞くのかとがいぶかしがる。腕を動かしたはずみで肌に張り付いた濡れたTシャツが線を作る。生々しく肌の透ける胸元は、どう頑張って見ても、そのしたは何もつけていない。

ドレークの名誉のために言っておくが、いくら飢餓を経験しているとはいえドレークはに対して劣情など抱いたことはない。(たぶん)しかし、そのドレークの公平な目には現在、薄く桃色に色づいたの小さな胸の先端が濡れたシャツを押し上げて突起している様子がありありと、解ってしまった。そしてそれだけならまだ、小さな少女の健康的な格好、とごまかすこともできるのだが、濡れてすきとおったシャツからはの体の至るところ(それはもう、本当、ありとあらゆる場所に…!!!)赤い所有の印が残されているのが見えてしまった。

中佐時代からの世話係をしているドレークからすれば、その光景は「煽情的」というより「親心、なんて格好をしているんだうちの娘はッ!!!」といった冷や汗もの。

ドレークは慌てて自分のコートを脱ぎ、の肩にかける。きょとん、と不思議そうにしているの顔を覗き込み、ドレークは辛抱強い親の顔で(まだ彼は独身者である)に問いかけた。

「水着がない、と言うのはわかった。だが、なぜ下着をつけていない」
「パンツははいてるよ?」
「普通年ごろの娘ならシャツのしたにつけているものがあるだろう」

流石に、自分で女性物の下着の名称を言うのはためらわれ、婉曲に言えば、そういうときは悟ってくれる「あ、ブラジャー?」とかわいらしい声で言う。ドレークは頷いて「なぜつけていない」ともう一度繰り返した。

は途端顔を曇らせ、というか、不機嫌そうに眉を寄せる。一瞬ドレークを殴り飛ばそうかととういう物騒な目をしたことには気づかぬふりをしてドレークは大人しく答えを待った。つけていないのならつけさせればいいだけの話なのだが、の場合、自分が気に入らぬことはけしてしない。唯一赤犬が言えば何でも従うのだろうが、ドレークは「赤犬がわざとつけさせていない」と言う可能性はあえて考えないようにした。

「必要ないもの」

暫くしてぼそり、とが小さな声で答えた。ドレーク相手に癇癪をぶつけてもどうしようもないことを時々だがは悟るらしい。降参するように息を吐いてプールの中に座り込む。足を立てた体制のため、太腿の内側の白い肌にまで赤い痕が付いているのを確認できて、ドレークは胃が痛んだ。そっとこめかみを押えながら、自分のコートが水に沈んでいくのを眺め、首を振る。

「必要ないわけないだろう」
「いらないの!だってぼく……つけててもパット入れないとスカスカしちゃうし、金具が背中に当たって痛いんだよ」
「……まさかと思うが、この400年つけてないとか言わないだろうな」
「ぼくの体系が変わってないこと知ってて言う?」

それはそうなのだが、ドレークはぐっと、言葉に詰まった。いや、まずいだろう。がいくら小さな、本当に小さな少女の体であるとはいえ、しかし、それでもを「女」と見ている連中はわんさかいるのである。薄い布を一枚めくれば何もない素肌なのだということが解ればどうなるのか。全くもって考えたくもなかった。というか、赤犬は何をしているのだ?あの独占欲の塊のような男がのこの格好を許しているとは思い難い。

「必要かどうかは問題ではない。子女の嗜みだろう」
「ディエス少将は口うるさいね。ぼくの父親か母親みたいだよ」

ころころと面白そうには笑って、ばしゃん、と水をドレークにかけてくる。魔法で作った水の大玉をぶつけられなかっただけマシだと自分に言い聞かせ、ドレークは水で乱れた髪を耳元に撫でつけた。

「大将赤犬は何も言わないのか」

何となく聞きたくなかったが、一応、最後の望みということで聞いてみた。これでやはり、あえて赤犬がその格好をさせていると答えられたら、ドレークは本気で辞表を書こうと心に誓った。その時は、の貞操を守るために海の魔女の誘拐も厭わない。(貞操はとっくに奪われている、と言う突っ込みはしない方向で)

しかし、予想に反しては「バレてないから平気」とあっけら、と答えた。

「バレていない?」
「うん、だって普段はぼくコルセットつけてるし」

確かにがこうしたTシャツ一枚などというラフな格好をしているのは珍しい。普段はなぜ普段着としてそんな格好をさせるのはドレークには理解に苦しむような厚手のドレス姿が殆どである。ドレークは女性物の服装についてそれほど詳しくはないが、確かにあれを着るにはコルセットや、ほかに様々なものを着こむ必要があるのだろう。

「サカズキの前でシャツだけになんてならないよ。だらしないって怒られるに決まってるし」

というか、次の瞬間押し倒されるに決まっているだろう。とはさすがに言わず、ドレークは「ならいい」と頷いた。

「とにかく、お前も子女の自覚があるのなら見えないところでもきちんと装いをしろ」
「このぼくに指図するの?」

の目が不機嫌そうに細くなった。ドレークはそれに怯むような精神は持ち合わせていない。逆に目を細めて、の濡れた髪をぽん、と叩く。

「そうした方がいいと俺は思っているんだ。聞くかどうかはお前が判断すればいい」









そのあと三十分ほどドレークと水遊びを楽しんだは、そろそろ午後のお茶の時間だということを思い出しやっとドレークを放した。書類を届けに行く途中だったドレークはほっと息をついて、そこでと分かれた。

はサカズキの執務室に戻る前に一度着替えを済ませてしまおうと自分の部屋に戻り、下着などをしまってある葛篭の前でうーん、と首を傾げた。

ドレークの言った言葉を聞くのは気に入らない、が、確かに淑女なら上下揃えた下着をつけているべきだろう。には女性の意識、とういうものはなかったが、礼儀作法の感慨はあった。どんな時だって午後のお茶は欠かさないし、ハンカチは常にポケットの中に入れている。

葛篭の蓋をずらして、は揃いのブラジャーとショーツを取り出した。一応、下着は一揃いで持っている。ブラジャーは尽く出番がないだけで、持っていないわけではないのだ。

は床の上に下着を一組並べて、考え込むように唸った。400年前から変わらぬトリプルA。いや、これはノアが悪いわけでもない。成長期になる前に命を絶たせたにも責任がある。まぁ、それはいいとして、しかし、一生変わらぬ胸のサイズ。ブラジャーをつけてもすかっ、と前が空く。そういう虚しさを体感しろというのか?は悶々と葛藤した。

確かに、コルセットが胸に直接当たって痛い時もある。だがそれならキャミソールを着れば十分じゃないのか?しかし脱ぐのが面倒になる。いや、別にそこまでの手間ではないといえばないのだけれど…。

「何をしている?」
「っ、サ、サカズキ!?なんで……!」

さてどうしたものか、と悩むの背後に、聞き慣れ過ぎた低い声がかかった。びくり、と反射的に体を強張らせて振り返れば、扉の下に赤系のスーツ姿の偉丈夫が腕を組んで立っていた。どこか楽しそうな様子なのは気のせいだろう。

「三時になっても戻らんからな。何をしているのかと迎えに来てやったまでだ。感謝しろ」
「え、あ、うん、ごめん…って、ちょ、サカズキ!?」

言われるままに素直に謝罪を口にすれば、ズカズカと当然のように近づいてきたサカズキが、無遠慮なまでに強引に、ぐいっと、の体を床に押し倒した。

「やっ……な、何!?」
「いつまでも濡れた格好でいるな。夏に風邪を引くつもりか?」
「いや…だから、それは今着替えようと……」
「濡れた服では脱ぎにくいだろう?」

手伝ってやる、と耳元で囁かれたと思ったら、サカズキの手がのシャツに掛った。濡れてぴっちりと肌に張り付いたシャツは確かに脱ぎにくくはなっているものの、別に人の手を借りるほどではない。つまんでめくればなんとか脱げぬこともないのだが、サカズキはわざとらしく、一度シャツの中に手を入れて空気を入れるように、そっと体の上を撫でまわす。の肌にサカズキの手袋の革があたり、硬い感触にぞくり、と体が震えた。

「……んっ…」
「どうした?」
「…べ、別に…なんでもない、自分でできるから……サカズキが、わざわざしてくれなくても……!」

は逃げるように腰を引き、サカズキの下から退こうとしたのだが、空いた方の手がの顎を掴み上を向かせる。身動きとれぬように、開かれたの足の間にサカズキの体が入った。

「遠慮するな」
「し、してない!!」

明らかに急接近した顔には顔を真っ赤にさせ、首筋に掛るサカズキの吐息に身を捩った。その間にも濡れたシャツと肌の間をサカズキの手が行き来している。はサカズキが好きだった。本当に、大好きだった。だから時々、サカズキが自分の体に触ってくるのも、そうしたいのならと我慢してきたが、だがその度に自分の口から妙な声が上がったり、息ができなくなるほど苦しくなったりすることが嫌だった。今も、まるで動いていないはずの心臓がせわしなく動き、口から飛び出すような感覚がするのだ。

ぎゅっと目を閉じて、喉から洩れる息を堪えようと自分の指を噛めば、サカズキがやんわりと、その手を奪った。

「…っん…あ、やっ…なんで…?」
「たとえ貴様当人であろうと、私以外が貴様を傷つける行為をするのを許すつもりはないのだが?」

言って、の歯型のついた指をなめる。楽しむように細められた眼に、ぞくり、と背筋が震えて、耐えきれぬようには顔を背けた。それすら許さぬように、サカズキはの頬に口付けて、耳元で問いかける。

「ディエスと何の話をしていた?」

一瞬、機嫌の悪そうな声音になっていた。が何のことかと思いだす前に、びりっ、とシャツの前が奇麗に破かれた。

「っ……やっ!!」
「やはり、こうした方がてっとり早いな」

あらわになった胸元を隠そうと手を出すが、今度はその両腕を押えられて、はサカズキの顔を見上げる。

「話…?別に…ただ、ちゃんと服を着ろって」
「それだけか?」
「そ、そうだよ…!ディエス少将は…そ、その…ちゃんと、ブラジャーも着けた方がいいって、忠告してくれ……ぁっ…ん」

最後まで言い終える前に、の背中がしなった。項から背筋にかけて手袋をはめた手で撫であげられ、もう片方の手が臍の周辺を撫でる。は息を詰まらせて、眉を寄せる。

「………着けていなかったのか?確かに今も着けてはいないようだが……」

先ほどとは違う種類の機嫌の悪さに、は「マズイ」と本能的に危険を察した。というか、バレた。のぼせあがっていた脳が急激に冷え込み、は不機嫌になって眉を寄せるサカズキを見上げ、恐る恐る言い訳をしてみる。

「だって、暑かったし、水着なかったし、シャツだけでいいかなぁって」
「ディエスは貴様の肌を見たということか?」
「……ふ、服の上からだし…」

はけしてドレークを庇っているわけではない。別に、これでサカズキの嫉妬がドレークに向けられるのならは堂々と罪をなすりつけただろう。だが経験上、サカズキの嫉妬は基本的にに向けられる。それは、まずい。とってもまずい。は現在サカズキみ組み敷かれて身動きが取れない状況だ。どう考えても、このままは、まずい。

「そ、それに、」
「いつも着けていないのか」

何か言おうと続けたの言葉を遮り、サカズキの低い声は続く。嘘を言うわけにもいかず、は少しためらってから、こくん、と頷いた。すぅっと、サカズキの目が恐ろしいほど、鋭利に細くなる。

「脱がせる時には気にしたことはなかったが……仕置きが必要だな」
「ちょ、っと、待って!!ねぇ、ぼくの言い分も聞いてよ?」

本気でまずい、との防衛本能が働いた。サカズキの首に腕を回して、キスでもねだるように見上げれば、一瞬、ほんのわずかにサカズキの動きが停止した。この次の瞬間、サカズキが動く前に行動しなければ普通に襲われる!!はそのままたたみかけるように言葉を続けた。ちなみに今の行為、タイミングを謝れば大惨事になるのでにとっては命がけだった。(笑うところ)

「ぼくは胸が本当にないんだから、下着なんて付けて立って役に立たないの!意味ないの!だからしなくてもいいと思うでしょ?!」

なんで自分でこんなに虚しい主張をしなければならないのかと、本当に悲しくなってくるのだが、は現在、精神的苦痛と身の危険を秤にかけるしかなかった。半分やけっぱちのように叫べば、一瞬あっけに取られたような顔をしたサカズキが、にやり、と、それはもう人の悪そうな笑みを浮かべて、の顎を掴んだ。

「別段私とて貴様を私の部屋に監禁できるのであれば衣服など身につけさせるつもりはないがな」

さすがにそれは犯罪です、と突っ込む人間がここにいないのはとても惜しい。

「しかし、不特定多数の男を誘惑して歩く貴様には分別のある格好をさせねばなるまい?」
「ゆっ、う、わく!!?何その不名誉な評価!!?ぼくがいつ…!!」
「黙れ。それに、貴様の、前だか後ろだか判別しにくい体でも、つければ付けたで有意義に活用はできると思うのだがな」

どっちが前だかわかるからですか、と突っ込む人間も生憎ここにはいない。は、とりあえずは侮辱されたのだとわかりわなわなと唇を震わせて、きっとサカズキを睨む。どう考えても、勝気な少女を屈服させることに悦びを見出せるようなサカズキには逆効果だが、は今のところ気付けていない。

先ほどの機嫌の悪さが嘘のように口元を緩めたサカズキは先ほどが出した下着のセットを手に取り、の体を引き起こした。

「え、な、何…?」
「大人しくしていろ」

ぐるん、と背中を向けさせて、そのまましゅるっと器用にの胸にブラジャーを当てる。そしてフックを止めて、肩ひもを両脇にたらしたままにすると、すかすかと前の空いている布と胸の間に手を入れた。

「ひゃ、あ……あ、んっ…い、たっ…」
「これで、普段一糸纏わぬ姿にされて嫌がる貴様を思いやることができると思わんか?」

全く思えません。なんですかこの変態プレイは、と、素直に警察に通報してくれる人間も生憎不在である。は下着の隙間から乱暴に胸をもみ砕かれて息を荒くし、首筋を強く吸われるたびに言葉にならぬ声を漏らす。

朦朧としてくる頭ではなんでこんな展開になっているのかと、疑問に思った。暑かったのでプールに入っただけで、水着がなかったからパンツとシャツで代用しただけだ。別に自分は何も悪くない。

「何を考えている?」
「……んっ、あ…い…」

自分にだけ意識を集中せぬことにサカズキは聊か腹を立てて、の濡れた髪を引く。ぐいっと、上向きになった白い喉に噛み付くように口付ければ、がぎゅっと、目を閉じて、膝をもぞもぞっと動かした。サカズキは後ろ向きに抱きかかえているため疎かになっていた腰元を思い出し、の膝を割ろうとすれば、その前にが「さすがにちょっと待って!!」と声を上げた。

「……なんだ?」
「今、まだお昼だし!!しかもサカズキ仕事中!!」
「じっくり堪能できんのは惜しいが、貴様が協力すれば5分で終わる」

ひくり、との顔がひきつった。長年の付き合いでわかっている。サカズキは本気だ。本気の目で言っている。は本気で怯えた。まずい、本当に、まずい。協力など絶対にしたくないし、大体、サカズキは5分で終わるだろうが、そのあとの自分は、どう考えたってそれでスッキリするわけもない。よくて放置プレイという単語が浮かんだ。良くてって何だ?という突っ込みはしないでほしい。悪い場合など考えたくもない。

はごくり、と喉を鳴らした。なりふりを構っている場合ではない。

意を決して、は一度ぎゅっと目を閉じてから、ぐるん、と体を反転させて、サカズキの胸、刺青の部分に手を当てて顔を覗き込んだ。

「……急ぐのは、いやだよ。サカズキの仕事終わって夜になってからだったら、何でもするから、今はもう止めようよ」

おねがい、と素直にまっすぐ見上げて言えば、サカズキが目を細めたのがわかった。まぁ、明らかにサカズキの方が上手であるのだから、自分がこうわざとその場しのぎに言っていることくらいバレているのだろう。なのではさらに続けた。

「サカズキは、嫌なの?」

サカズキの目が何か思案するように揺らぎ、の顎を掴んでそのまま息が重なるほどに顔を近づけてきた。

「貴様は嘘をつかない」
「うん。そうだよ」
「なんでもする、と言葉にしたこと、忘れるなよ」

……あれ?ぼくなんかとんでもないこと口走った?とはたらり、と冷や汗が流れたのだが、しかしもう後の祭りである。の返答を待たずに、サカズキは立ちあがって、をベッドまで抱き上げると、やわらかな寝具に座らせた。そのまま自分は扉の方へ近づき、一度振り返る。

「途中で眠られても殺意が湧く。私が訪ねるまで寝ておけ」

……何か、ものすごく今の展開を後悔している自分がいる、とは顔を引きつらせた。の言葉など待たず、サカズキはスタスタ、とそのまま去って行ってしまう、乱れの一切ない足音を聞きながら、こてん、とはベッドに倒れ込んだ。

嬲られた肌は色づいているし、欝血の後だって、増えただろう。体の奥がじんわり、と熱くなっているのを感じてはとりあえず「水風呂はいろ…」と呟くしかない。

昼間っからサカズキに抱かれるのだけは回避できたとは言え、なんの問題の解決にもなっていないことをもちろん忘れてはいないし、自分が、よりにもよって「なんでもする」などと恐ろしいことを口走ったことも、忘れていない。

は柔らかなベッドの心地を感じながら、とりあえず、下着は上下セットでちゃんとつけておこうと、脱がすのに時間が少しでもかかる努力をしよう、と心に誓ったのだった。

まぁ、確実に無駄な努力だろうと助言してくれる人間は、あいにくいなかった。


 

 

 




Fin