おれの誕生日がシカトされた件について誰か責任とれよという話
「で、誰いっとく?」
真っ赤なソファにじっくりと身を沈め、面白そうに目を細めてのたまいやがったトカゲに、ひくっとは顔を引きつらせると我関与せずの姿勢を貫くらしいサカズキの背後にそっと隠れた。サカズキのスーツの端をツンツンと引っ張ってこわごわと声をかけた。
「なんで大晦日の夜にトカゲがここにいるの?」
「わしが知るか」
「せっかく今年は初めてサカズキと二人だけで年を迎えられるって思ったのに・・!」
不服そうに頬を膨らませて訴えてくるに、サカズキは「ひめはじめでもするか」と今年も色ボケ煩悩まみれすぎる思いを抱く。本当お前捕まれよ、と普段突っ込みをいれるクザンはあいにく自分の執務室で仕事に追われている。当然、邪魔をされたくないサカズキが自分と同じだけの量の(ここ重要)仕事をデスクにどん、と置いてきたというだけのこと。外道である。
海軍本部奥、除夜の鐘はそろそろなり始めるだろう、大晦日、深夜。大晦日だろうと海軍海兵に休みなんぞない。ばっちりしっかり年越し業務、まぁ毎年のことですが!!というある意味行事のような、仕事量。しかし今年は、事前に昼寝をたっぷりしておくという「お前毎年やればよかっただろう」と当たり前すぎる突っ込みもなんのその、深夜でもなんとか起きていた。仕事だろうとサカズキと一緒にすごせるのなら無問題、という素直さで、こうして年をまたぐ気である。そしてそういう健気さを脳内では都合よく「では今日は最後まで付き合わされるな」と変換するサカズキ。
ごーんごん、と108つ程度ではこの男の煩悩は払いきれないだろうから除夜の鐘など聞くだけむだなドS亭主。むしろ焼け石に水に過ぎなかったんじゃねぇかと、そんな結果が出るだけだ。まぁ、そんなことはどうでもいい。サカズキは脳内で年始はにどんな柄の着物を着せるかと考えつつ、ひょいっとを抱き上げた。
「サ、サカズキ!?」
「黙っちょれ」
あわてる声を出すの口を手で押さえ、サカズキは椅子から立ち上がるとソファでつまらなさそうにしているトカゲを見下ろした。
「貴様のことなんぞどうでもいい。帰れ」
「ふ、ふふふ、今から年をまたぐ情交か?この鬼畜。今日はおれの誕生日だったというのに誰一人祝わない。なんだこの扱い?卿、の誕生日をシカトするか?」
当然毎年やることは決まっているのだがそれをこの女に告げる義務はない。サカズキは目を細めて一度本気でこの女を蹴り飛ばしてやろうかと思う。しかし仮にも同じ(別世界ではあるが)を蹴り飛ばせば、腕の中のも怯える。怯えるのは構わないが、犯すよりは協力的にさせたほうが楽しめる、と、そんな鬼畜極まりない思考の男。そして無自覚。ふん、と鼻を鳴らしてからを見下ろした。
「元の世界に返せ」
「それができたらやってるよ。サカズキ、ぼくの薔薇消してくれるの?」
「ありえんな」
即答すればが「じゃあ無理だよ」と息を吐いた。地平線を越えるという荒業は並大抵のことをしなければできないことと、それはサカズキも知っている。しかし、こう、今年もしっかりこの女にあれこれ邪魔をされるのかと思うと、いらっとくる。
「えー、それじゃあおれの八つ当たり候補その1、今をときめくクロ子さん」
「Wj沿い連載できみの面倒なんて見させられたんだから、これ以上彼を苦しめるのはかわいそうだよ」
「じゃあドフラミンゴ?」
「どうして疑問系?鳥をいじめていいのはぼくだけだよ」
「行きたくないがこっちの赤旗のところ」
「サリューがいるのにちょっかいかけられたらきみを尊敬する」
「言っただけだ。おれにも無理だ」
つらつらと、魔女二人がどう考えても外道極まりない相談を、それはもう当然のようにしている。
「っていうかトカゲ、もういい年なんだし未だに誕生日祝って欲しいの?」
「ふ、ふふふ、当然。誕生日というのはな、一年で一番自分がふんぞり返れる日なんだよ」
なんだその開き直りは。は顔を引きつらせて、それで、おや、とトカゲの膝の上に無造作にある白い手紙の束に気付いた。
「なぁに、それ?」
「ふ、ふふふ、聞いて驚け。世のご令嬢がたからおれの誕生祝いの言葉だ」
「祝ってもらっとるじゃないか」
おい、と、とサカズキが同時に突っ込みを入れた。世の令嬢がたが何者なのかは見当がつかないが、まぁ、トカゲを祝ってくれたひとが一人以上いるのなら、別に誰かに嫌がらせをしに行く必要もないのではないか。
「ふ、ふふふ、名前を読み上げてもいいがな。ご当人らのご気分もあるだろう。とりあえずは礼を言う」
「で?それなのにどうして誰かに責任取らせるとかそういう話をしたいの」
ちゃんと祝ってくれる言葉があったのならいいではないか、との言い分。だからさっさと部屋に戻るなりなんなりして消えてくれればいいのに、とさえ含ませる。としてはこれからサカズキとゆっくりすごせる、という心。何されるか予想できていればここでトカゲを帰すなどという無謀はしないだろうが、今年いっぱいもこの子はやっぱり阿呆の子のようだった。
「決まりきっていることを言うんじゃあないよ、なんとか理由をつけて赤旗をいびりに行きたい」
言い切った、この女、あっさり言い切った。
なんかもう、こういろんなシリアス設定やらなにやら「いいじゃん大晦日なんだから」とはっきり言われたほうがましである。こう、ピンポイントで名前と目的を言われればさすがのも、ドン引きした。
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執務室の隣にある簡易休憩室のキッチンから急須を持ってきて、はソファに座っているサカズキに湯のみを渡した。
「なんていうか、年末までトカゲは騒がしかったね」
湯気のたつ、どう考えても普通それ飲めないよね☆という温度まで沸騰させられたお茶をサカズキは当然のように飲みながら、眉間に皺を寄せる。トカゲを退けたくてしょうがないのだが、あいにくあのトカゲ中佐、いろいろ手を尽くしての護衛役の座を獲得した。の周りに置く人事については、確かにほとんどサカズキに決定権があるのだが、しかし、それでも政府からの監視役として一人が任命される。サカズキがを必要以上に傷つけぬように、との配慮だ。それを今回はトカゲが任されている。
「来年は何がなんでもあの女を海軍から消す」
トカゲが執務室から出ないので、とサカズキは休憩がてら部屋を移っている。隣でぶつぶつと「なんとかこう、ノリで戻れる方法は」と真剣にトカゲがリリスの日記を開いていたのは、気にしない。
「サカズキが言うと本当に物理的に消されそうだから怖いよね」
ころころとは面白そうに笑って、サカズキの向かいのソファに座ろうとしたが、しかしその腕をサカズキが引っ張って自分の懐に収める。
「今年もあと15分足らずじゃのう、」
「そうだね。でもサカズキはまだ仕事残ってるよね」
「一時間程度の時間も作れんほどつまらん男ではない」
そのまますいっと、を膝の上に乗せてサカズキはコルセットの紐に手をかけた。サァアアと面白いくらい顔から血の気を引かせては体を強張らせる。これまでの経験上、こういう、妙に優しいことを言っているサカズキは、あぶない。とっても危ない。さすがにこの一年で学習はしている。多分。
「いや、え、ちょ、待ってサカズキ!!別にね!?ぼくはサカズキといたくないわけじゃないんだよね!!?で、でもね!!?な、何するつもり!!?」
「決まっちょるじゃろう。口に出してはっきり教えられたいか」
面白そうに笑うサカズキの口元に見とれた途端、しゅるりとコルセットの紐が一気に引き抜かれる。すとん、と露わになった素肌が外気に触れて背筋を奮わせる前に、サカズキの熱の篭った掌がの白い首をゆっくりと撫でた。
「貴様の中で新しい年を迎えるっちゅう王道も悪くあるまい」
「あ、楽しもうとしているところ悪いんだが、ちょっと借りるぞ」
ぞくりと体を奮わせるを、そのままひょいっと、空気読まずに持ち上げ表れたトカゲ。ヤる気満々、だったサカズキは一瞬行動が遅れた。
抱こうとしていた体がない。
他のどんなことでも動揺などする男ではないが、しかし、さすがにそれでは動揺した。(この男は本当に煩悩の塊だ)一瞬目を見開き、そして冷静に状況を把握すると、それはもう、地を這うような、正直対海賊にでもここまで殺意は込めません☆というほどの、低い声で呟いた。
「……殺されたいんか、貴様」
「黙れよこの変態。一週間ほどの“時間”を出しだす代わりに、ちょっともとの世界に戻ってくる」
サカズキの声にびくりと怯えるのはだけ。ひぃい、と顔すら引きつらせているのにトカゲは堂々としたもの。言われた内容に、震えていたが「げ」という顔をした。
「や!!ちょ!!?放してよトカゲ!!どうしてぼくがキミの変わりに犠牲にならないといけないの!!?」
「暴れるなよ、ふ、ふふふ、今ここでおれが放したらお前はじっくり・・・・・喰われるぞ」
「それも嫌ぁあああ!!!んっ…ぁ!?」
叫ぶの口にもごっと、トカゲは自分の指を突っ込んでしゃべらぬよう舌を掴む。それでが黙ったのを確認してから、素肌の上のトカゲの刺青を乱暴に掴んだ。びくり、と敏感な場所への責めにの目じりに涙が浮かぶ。それを面白そうに眺めてから、トカゲはそのままぱちん、と指を鳴らした。
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「……あー。そう、そういう展開アリ?いや、まぁ、年末年始スペシャルだからアリか?」
目の前にちょこん、と座る人物を眺めクザンはぽりぽり、と頬をかいた。
「ぼ、ぼくだって、すきでこうなったわけじゃないよ!!」
「うんうん、わかってるけどねぇ。で、サカズキ、いくらなんでもこのちゃんには手ぇ出せねぇだろ」
クザンの執務室、真っ白なソファに座る小さな姿。いや、普段から小さいが、いっそう小さい、え、これ6,7歳くらいか?というような、丸っこい顔のの頭を撫でつつ、クザンは怒りで肩を震わせているサカズキに問いかけた。
何がどうなっているのかさっぱりわからぬクザンではあるけれど、まぁ、トカゲさんが何かしたんだろうということでたいていのことは片付く。、どうやら「時間」を一時的に奪われて外見年齢が随分と若返ったようだ。
さすがに幼女すぎる服はなかったため、一足早いが年始のための着物を、かなり折って着ている。脱がしにくくなったと、サカズキが不服そうに言っていたのは聞かなかったことにしよう。
「ただでさえ小っこい癖にいっそう小っこくなりおってからに」
通訳しよう。さすがにこのサイズではできないということだ。
本当、お前捕まれ!!!とクザンは力の限り叫んでから、をひょいっと抱き上げた。
「ありゃりゃ、軽いねぇ。ホント」
言ったはしから、どん、と、クザンはサカズキに頭を溶かされた。
「ちょ…!!お前いま本気だっただろ!!!?」
「触るな」
クザンは溶かされた頭をなんとか戻して抗議の言葉を口にしたが、そんなことを気にするサカズキではない。むしろクザンが溶かされて思いっきり顔を引きつらせるを奪い、とん、とソファの上に戻す。
「貴様も貴様じゃァ。そう軽々と触らせおって。軽いのは尻だけでは飽きたらんか」
「か、軽くないよ!!!ここ最近はサカズキにしか乗ってないもの!!」
「あー、ちゃん。頼むから6歳児くらいの姿でそういうこと言わないでくれる?おじさんなんかショックよ?」
「ぼくはきみたちよりずっと年上だよ!」
真っ赤になって反論するはまぁ、かわいらしくて仕方ない。クザンはちらりと時計を見てから、あ、と呟く。そういえば、いつのまにか新年になっていた。時計はばっちり、12時10分をさしている。こんなばたばたをしていた所為できちんとカウントダウンができなかった。別にクザンはそういう行事に熱意を出すような性格でも年齢でもないけれど、は少し楽しみにしていたようだから、これでよかったのだろうかとそんなことを気遣う。
まぁ、トカゲ中佐の所為でそれどころではない、という現状はあるけれど。
「で?トカゲ中佐はどこいったの?」
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大晦日の夜、どこから除夜の鐘の音が流れているのを聴きつ、ドレークは航海日誌から顔を上げた。ドレーク海賊団。船員はもと海兵がほとんどで、こういった年末年始の行事はみな重要視しているため、今夜はとある港に停泊中である。普段海賊というなれぬ行為をしているために、大晦日を過ごすといった、一般的なものに触れることが彼らの心を休めてくれるのだろう。ドレークも先ほどまでは宴に参加していたが、ふとこの一年を振り返り日誌に簡単にまとめを書いておこうと思い、自室に引き上げていたのである。
「もうそんな時間か」
ゴーンゴン、と除夜の鐘。響く荘厳な音色は心の葛藤や、罪深き思いを浄化してくれるようである。ふと手を見れば、真っ赤に染まっているようで恐ろしい、と悔いる日々ばかりだった、この一年。もう海軍を辞してどれほど経つのか、まだそう、何年、というわけでもなかろうに、もう随分経ったような、そんな気がした。ドレークは日誌をめくり、これまでのことを思い出す。さまざまなことがあった。港で元同僚に会ったり、銃口を向けられたり、裏切り者と罵られもした。海賊と殺し合いもした、海兵とも、殺しあった。どちらがどちらの戦いに意味が見出せずに海軍を辞したというのに、結局は、ドレークには戦わねばならぬ敵が増えただけのような、そんな気がする。
ガッタン、ガガッ、バギッ、と、突然背後で音がした。敵襲か、と即座に身構えるドレークが振り返る、その前に、どん、と、背が蹴り飛ばされた。
「ふ、ふふふ、ふふふふふふ、やはり、こうでなければな。この、ふふ、ふふふふふ、ふふ、このヒールの食い込む感覚、倒れる角度、重さ、完璧だ!!!!赤旗、心の底から愛しているぞ」
「お、お前……!突然表れて何を堂々と言っている!!!?」
椅子やらなにやらをハデに散らかし転倒したドレークの腹にぐいっと、足を乗せ、堂々とのたまう、赤い髪に長身の女。格好はなにやら海軍の将校服に見えなくともないが、この女のこと「コスプレ」と言い切って平然といろんな格好をする。ドレークが嫌がるように叫べば、さらに楽しそうに目を細めた。
「あぁ…これだ、この、おれへの泣きそうになる訴え!!絶対お前のほうが力が強いのに実力行使には出ないヘタレ加減……!!!一年ぶりだな、赤旗」
「?半年振りだろう?」
「細かいことは気にするな。時間の経過が同じわけがない」
相変わらずドレークにはわからぬ話をさくっとすすめ、置いていく女である。ドレークは額を押さえ、そしてなんとか足をどかせると、そのまま座り込んでを見上げた。
相変わらずドSでノリノリな言動をしている。何も変わらぬ海の魔女。それはわかっている、が、つい半年前までは当然のようにこの船に姿を現していたこの魔女が、まるでもうドレークには興味もないように表れなくなった。どこぞで誰か別の遊び道具でも見つけたのだろうとは思っていたが、案じぬ心がなかったわけでもない。また赤犬に暴力を振るわれているのではないかと、あれこれ考えぬ日はなかった。何をしているのか、姿が見えない分、余計に気になった。それなのに、この魔女は何もなかったようにあっさりと、また同じように表れる。
「急に姿を見せなくなった言い訳くらいしろ」
「お前を愛しているからだ。赤旗」
不機嫌そうに言えば、がふわり、と、微笑んだ。いつものいやみったらしい笑みではないことにドレークはまず驚いて、それから、とん、とが自分の胸に飛び込んでくる。
「お、おい!!?」
「ふ、ふふふ、ふふ、お前のにおいを何度焦がれたか。お前の腕の硬さを何度求めたか、回数が多すぎて口に出すのも面倒だ。とりあえず赤旗、昨日はおれの誕生日だった。祝え」
「突然来て強制か!!?」
「ふふ、ふふふ、お前に拒否権なんぞあるものか」
ゴーン、と鳴り止まぬ除夜の鐘。こいつの煩悩は108つで足りるだろうかと、そんなことを考えつつ、ドレークはため息を吐いての長い襟足を指ですく。手袋をしていても、それでも絹のようにさらさらと流れる赤い髪。少し短くなっているような気がするが、まさか、魔女の体はその髪の毛の一本たりとも変化を迎えることがない。
「大晦日に生まれたのか、初耳だ」
「初めて言った。祝えよ、赤旗」
「急に言うな。何も準備がない」
甲板に出れば宴は続いているだろうから、をその席で祝うこともできる。しかし、大勢での祝いを求めているのなら、はさっさとドレークを引っつかんで甲板へ行くだろう。それでもまだここにいる、ということはドレークに個人的に祝え、ということだ。だがドレーク、海賊ではあっても略奪行為などせぬのだから、宝飾品を持っているわけでもない。女性への贈り物にふさわしいものが思い当たらず眉を寄せていると、しゅるり、と手早くがドレークのマスクを外した。
「ただ一言いえばいい。贈り物、現物の類は向こうに持っていけないからな。お前が、昨日誕生日だったこのおれに、何かひとこと、言ってくれ。それだけでいい」
「お前にしては控えめだな」
「茶化すな、おれは本気だ」
貢げ☆が基本スタイルのにしてはささやかな願いに、ドレークは冗談かと思ってからかえば、が真剣な目で見上げてきた。
「バカばっかりで嫌になる。触れればいいのに、触れない。愛を囁けばいいのに言わない。誤解やすれ違いばかりのつまらん連中ばっかりだ。いやになる。堂々としていればいいんだ。女々しくしていて何が変わるでもないだろうに。毅然としても泣き続けても結果は同じなら、開き直るべきなんだ」
ドレークはが何を言っているのか、見当はつかなかった。誰かのこと、を言っているのだろう。自分のこと、とも取れるが、しかしどこか違う。ただ黙ってその言葉を聞き、あまりに、が眉間に皺を寄せているものだから、首を傾け、目を細めた。
「見ているのが辛いのか?」
「鬱陶しい」
「それでもお前は見続けるんだろう」
唐突に、ドレークは、またこの魔女には暫く会えなくなるのだと悟った。どこかへ、行っているらしい。それがこのグランドラインの中のことなのか、それともどこか別の海なのか、それはわからないけれど、しかし、また、彼女は行ってしまうのだろう。ドレークはの顔に手を触れ、長い前髪で隠れがちになっている右目を晒す。青い眼球があったはずのそこは、今は空洞になっていた。
「俺は、お前に傍にいてくれ、とは願わない」
がどこへ行くのか、何をいているのか、それはドレークにはわからない。彼女を縛る鎖が多いことはわかっても、なぜ、どうして、なんで、とそれをドレークはわからない。知ることもできない。それを歯がゆいとは思いつつも、しかし、もし、内面に踏み込んでしまえば、ドレークは自分の道を見失う。それもわかっていた。
「そうだろうよ。お前は、一生、おれにそうは願わない」
「、それでも、俺はお前を愛しているんだ」
言えばふん、とが鼻を鳴らして目を細めた。
「そんなことは、わかっている。抱きしめろ、赤旗。窒息するほどにな」
+++
大きな楕円の、持ち手のない鏡を膝の上に乗せ覗き込み、は目を細めた。
「トカゲって本当に、ディエスがすきなんだね」
「貴様もディエス・ドレークにはよう懐いちょるじゃろ」
「だってディエスはからかうといい声で泣いてくれるんだもの」
にこりとそれはもう楽しそうに笑う、ここにこっちの赤旗がいたら、それはもう、本気で泣くだろうがそれこそには面白いことである。満足そうなを横目で眺め、サカズキは手の中でペンを回す。
折角新しい年が始まったというのに、この幼い外見のではいくらなんでも手は出せない。普段から正直なところ、まぁ、何度も裂けているので、血もよく出ている。あの体でそうだったのだから、それよりも小さなではまず不可能ということだろう。
サカズキはちらり、と時計を見た。もう時刻は午前2時になっている。なんだかんだとばたばたしていた所為でゆっくりと年を迎えることができなかった。いろいろ思うことはあるのだが、まぁ、年末年始だろうと、結局一日は一日である。そんな現実主義極まりないことを考えながら、サカズキはソファでくつろぐに声をかけた。
「貴様の体は何日で使い物になる?」
「き、聞き方あるよね!!!?」
「さっさと答えんか」
直球に過ぎる。は顔を引きつらせ、肩をわなわなと震わせながら、きっと、サカズキを睨み付けた。
「お正月いっぱいはこのままだよ!!!」
Fin
と、いうことで、一葉が休みの1月5日までは幼女さんでお送りしますb
あ、グランド総合病院ネタも書かなきゃ。
トカゲさんの誕生日がサイト内でスルーされた件についての責任はさんが取りますネ。
お祝いメールくださった方々本当にありがとうございました!!!あれですね、トカゲさんからお礼の言葉があるよりも、きっとトカゲさんが赤旗さん蹴り飛ばした方が喜んでくれるよね!!ということで、こんなん←いらないよΣ
(2010/1/1
15:14)
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