ガスの充満する室内、トカゲは口元を布で覆いながらぐるりと辺りを見渡した。さすがのこの体も、毒は効く。ガスだって必要以上に体内に取り込めばどうなるか。試そうとも思わない。

さて、ここはどう見ても、まともな生き物のいるような場所ではない。ならこれが毒ガスだろうと全員死んでしまえばスッキリするのではないか。そんな暗い感情がほこり、と湧く己だけの感情ではないということはもうトカゲにもわかっていた。の魔力を分け与えられた己は、あの魔女と多少なりとも惹かれあうらしい。まぁ、そんなことはどうでもいい。

「へぇ、便利だな。シザーハンズ」

ガスの充満した部屋、見れば、己の鋏の手で見事に床を斬り裂いて塞いだイナズマの所業。これぞ鋏男の真髄、と手を叩いてやったらじろりと(サングラス越しに)睨まれた。おや、とトカゲが薄ら笑いを浮かべてみれば、その隣でイワンコフがおのが誉れのように説明をしてくれる。

「イナズマはチョキチョキの実の鋏人間。切りだしたものを紙のように扱えるのよ」

まぁ、見ての通りではある。だが、イナズマ。イワンコフに己の能力の説明をされ、少し頬を上気させたようにトカゲの目には映った。何を、生娘じゃあるまいし、褒められて照れているのかとほほえましく思いながら、トカゲは催眠ガスで見事に眠りこけたルフィの頭を蹴り飛ばした。どこぞの死者の眠りを妨げるフライパンでもあればいいのだが、あいにく自分にそういうオプションはない。手荒だという自覚は珍しくトカゲにもあったが、しかし、モンキー一族の眠りをただの呼び声で覚ませるという盲信はない。

「ほら、ルフィ。寝ている場合か?」

がつん、と、かかとの欠けたヒールでも威力はある。ゴムの身でなければ多少、頭蓋に罅が入っただろうほどの一撃に、ルフィはぱちり、と眼を開けた。

「はい、おっはー」

両手を広げていつものセリフ。一瞬ルフィはぱちり、と眼を瞬かせて今がどういう状況なのか思い出すような眼をした。あどけない子供の目である。トカゲは自分が蹴り飛ばした頭蓋が記憶でもふっとばしたかとそんな面白い展開を期待したが、しだいにルフィの目がはっきりと焦点を合わせていく。

そして眠そうな眼をこすりながら「そ、そうだ!!寝てる場合じゃねぇよ!!」などと独り言。たちあがって、あたりの様子を確認して、封鎖された出口を見た。

「おい、おれは上に行きてぇんだよ!!階段閉じしまったらエースに追いつけねぇよ!!」

うとうとと眼をこすりながら、それでも兄の救出を願う。その様をトカゲは眺めて、やはり己はこの子供についていくのがふさわしいのだろうと思う反面、しかし、だからこそに、しなければならないこともはっきりと分かってきた。そういうのは、あまり好きではないのだが、しかたがない。

さて、どうするのかとトカゲはイナズマたちを眺めた。

あのガスを封じる方法として、階段を閉じたのは得策だっただろう。インペルダウンのガスが口を塞いだくらいで防げるような生易しいものとは思えない。であれば、石畳みであぁしたイナズマの判断はもっともだ。意識を失っては脱出どころではなく、気がついたら拷問部屋でした☆なんて展開、トカゲとてごめんである。

だが、その道理をルフィに解いてどうなるのか。この子供は、諦めるということをしない。諦めの悪い、ダダをこねる厄介な子供、ではないのだ。諦めないから、なんとかする。そういう強い、いや、はっきりとした己を持っている。

「単純だが、敵の作戦勝ちだ。我々はこのレベル6に閉じ込められた。現状、脱出の術はない」

淡々としたイナズマの声。冷静に現在の状況を把握し、分析する革命家にふさわしい言動である。それを聞きながらトカゲはひょいっと、手頃な樽の上に腰をおろした。

目を閉じて悪魔の気配をたどれば、炎の悪魔の鼓動が段々と遠ざかっていることが感じられる。マゼラン付きの護送だ。すべては迅速に運ばれ、また、ルフィがここにきていることが彼らの耳に入っていれば、まずルフィたちの拿捕よりも優先させるべきは、エースをこのインペルダウンから出すこと。
そうなれば、救うべき対象を失ったルフィたちはこの海の牢獄に閉じ込められ、あとはただ追い詰められるのみである。

それで、現状、脱出はできるだろうか。

トカゲは脳裏にいくつかの駒、黒クィーンをイワンコフとし、キングをルフィとしたチェス盤を並べてみる。敵のキングは当然マゼランだとして、さてその白のクィーンをどうにかしない限り、己らがこのインペルダウンから脱出することはかなうのだろうか。

思案するトカゲの傍らで、イワンコフが腕を組み替えて息を吐く。ルフィはビブルカードを手のひらに乗せ、うつむいていた。これはもうどうしようもないことと、さかしい大人であれば判じ、気持ちを、目的を切り替える。

「ヴァターシはこの大監獄からヴァナタを無事脱獄させることに全力を尽くす。エースボーイの身柄はもう海軍本部に渡ってしまう。あとは白ヒゲにかけるしかないわ」

呟く言葉はどこまでも、正論である。

諦めろ、とイワンコフの肉厚のある唇がつぶやいた。長い前髪に隠れた目でそれを眺めながら、トカゲは目を細める。何もかもを、諦めろ、と、そういうのではない。

ルフィのような、小さなたった一人の男がエースを助けようとあがいたところで、どうなるか。大渦にかたつむりが入り込んで流れが止められるわけがないようなもの。ならば、より大きな力。白ヒゲが、あとはあの男を救い出すのを待つしかあるまいと、そういうことだ。

実際のところ、トカゲもそれが一番「正当」だと思ってはいるのだ。エースの掲げる旗の主どの。あの男が出てきて、どうにかこうにかすることが、流れなのだろう。歴史の道理だ。もしも、正しい歴史書(そんなものがあると仮定して)に書かれるべきは、その一文。「ポートガス・D・エースの処刑は白ヒゲによって阻まれた」と、それが残るべき足跡だ。アラバスタの歴史に、麦わらの一味が名前を残すことがなかったように、世の道理として受け入れられるのは、小さなルフィの叫びではなくて、空をとどろかせ、海を割る豪傑の怒声である。

ここで、ルフィが諦めたら自分はどうしようかと、トカゲはそのことを考えた。それと同時に、ぽつり、とルフィがつぶやく。

「だったら、おれは海軍本部に行く」

おや、と、トカゲは片方しかない目を見開いた。当たり前のように、それがまるで世の道理のように、呟いたこの子供。トカゲは口元を綻ばせ、ひょいっと樽から降りた。

「ヴァ、ヴァカおっしゃい!!!この世界の頂点の戦キャブルよ!!!?白ヒゲの実力知ってんの!!?迎え撃つ海軍の「大将」「中将」「七武海」の実力知ってんの!!?ヴァナタ命いくつ持ってんの!!?」
「もし諦めたら悔いが残る!!おれは行く!」

悔いは残るだろうが、命も残るかもしれないのに、それでも行くというその決意。まっすぐにイワンコフを見上げて断言するその勢いは、トカゲも懐かしい、あの気に入らぬドラゴンと同じ強さがあった。あの男がそう言ったら、トカゲは容赦なく弾丸をこめかみに打ち込むだろうが、この子供が言うとそれはとてもすがすがしく聞こえるもの。

トカゲは腰の短銃を手にとって、たった一発だけ残していた弾丸を抜いた。ここで実際ルフィが諦めたら、己はきっと失望しただろう。ルフィに対して、ではない。己に対してだ。いくら「好き勝手してなんぼ」のこの己とはいえ、世界の檻に入れられている以上、誰かのそばにいて、その誰か、が道理となる行動を取らねばここから脱出することはできない。ルフィが諦めたとき、それは、トカゲがこの檻(インペルダウンに限るものではない)の中で殺されるということだ。その時は、おそらく自分はこめかみを打ち抜いて自滅しただろう。そういう予感が、いま沸いた。

「ふ、ふふふ、馬鹿は好きだよ。それで、どうする?行くといっても、まずここから脱出することから考えなければ、ふふ、どの道死ぬぞ」

そういえばこの子供は、自分のやりたいことのために死ぬのなら本望だとそう堂々とのたまったことがあるらしい。だが、今の状態で死ぬことが本望なはずもあるまい。夢のために死ぬのはいい、が、現在、エースを救おうという途中で死ぬことは、認められるはずがないだろう。

「ここを抜けたきゃ、俺を解放しろ」

決意、目標の確定。しかしさて、どうする、という状況に変化はないもの。それで思案する面々の耳に、低い男の声がかかった。はっとしてトカゲは顔を上げる。

(そういやぁ、ここにはこの男がいたのだった。いやぁ、すっかり忘れていた)

ぽん、と手を叩いて振り返る。ルフィたちの背にした牢の中にうっすらと見える人影。

「俺ならこの天井に穴を開けられる。どうだ、トカゲ」

気安く呼ばれ、撃ち殺してやろうかとトカゲは少し本気で考えた。







あの時、目の前でが何かを聞こうとした瞬間から、クロコダイルの身は妙に軽くなっていた。これまでずっしりと己を蝕み、侵食していこうとしていた悪意のようなものが、きれいさっぱりと、消えている。悪魔と魔女の呪が解けたのかと、最初はそう思っていた。だが、が去り暫く、ころん、と、己の横に(いつのまにか)現れ転がった砂時計を見て、そうではないのだという、確信が沸いた。

鎖でつながれた手で砂時計を手に取って、暫く考えた。どう見ても、ただの砂時計だった。ガラスの空洞、木の支え。だが、その砂は金でできていた。その木にはリンゴ模様の細工が施されていた。黄金の林檎は、魔女の象徴である。クロコダイルは一目でそれが“どういう意味をもつ、どういうもの”なのかわかった。

なぜこれが己のそばに現れたのか、それはまだわからない。だが、あの魔女が、あの小さな魔女が真っ赤に目をはらして、己の前に現れた時のことを思い出す。

クロコダイルは、ほかの七武海(特にあのバカ鳥)と違い、に情も、期待も、何も覚えたことはなかった。欲、ばかりはあったが、それは魔女の呪いゆえに仕方がない。ある意味生理現象だと割り切れば、かえってが懐いた。それは今となってはどうでもいいことである。

しかし、クロコダイルはにニコ・ロビンの面影を感じることが何度かあったのだ。普通、を知る男であれば、の面影を誰ぞに見る、と言うことが普通だろうが、しかし、クロコダイルは、を見て、ニコ・ロビンを思い出すのだった。それが、彼にはどうしても、たまらない。

が真っ赤に泣きはらす顔を見れば、今頃あの女はどうしているのかと考える。が笑えば、あの女は笑えるようなことがあるのだろうかと、そんなことを考えさせられた。鬱陶しいと、何度かを殴って、浮かぶニコ・ロビンの面影を打ち消そうとしたこともあった。がいなくなれば、なんということもない。どこぞであの女がのたれ死のうがなんだろうが、思い出すことも、考えることも、患うこともないだろうと、そういう確信すらあった。だが、はクロコダイルの前から消えることはなかった。こうしてインペルダウンに封じられてからも、嫌みのようにまたあらわれて、そして、クロコダイルに、その泣き顔を焼きつけていった。

ニコ・ロビンが苦しんでいるような顔が浮かぶのだ。あのガキ、わかっていてやってんのかと内心ののしりたくなる。

クロコダイルは、には何の情もなかった。何もかもを、は持っている。だが使おうとはしなかった。なら、ただの無力なバカと何が違うのかとそれがクロコダイルの結論だった。その力の全てが煩わしいのなら自分が貰ってやろうかと提案をして聞き入れるではなかった。だがらクロコダイルは、にはまるで興味がなかった。

だが、はニコ・ロビンに似ているのだ。それが、クロコダイルには、無視できぬ。

「もうシャバに出たところで面白みはねぇと思ってたが……」

牢の外からこちらを睨みつけてくる麦わらを眺め、ゆっくりと立ち上がる。鎖の重い音がして、ぴくり、とトカゲが顔を向けてきたが、によく似たその顔、だが、クロコダイルは(年齢的には此方の方がニコ・ロビンに近いにも関わらず)この女からは何の印象も、憐憫も受けないことに気づく。そうなれば、やはりでなければならないのだろうとも思った。

「白ヒゲと海軍が戦争を始めるって?あのジジィの首を取るチャンスが来るとはな」

このインペルダウンに来る前に、クロコダイルは、ミスGWに無理やり、己の心を呼び起こされた。否定するつもりはなく、受け入れればあっさりと肩の荷が下りたような心持であった。そして、今こうして目の前で「そういう流れ」を前にすれば、己の行動の理由も、原因も道理のように思えてくるのが面白い。

何もかもが、決まり切っているような、そんな気色の悪さを覚える。たとえば、ここでクロコダイルが名乗りを上げずとも、己がここに閉じ込められていることに気づいたイワンコフが己に協力をさせただろう。それでなくとも、あるいいは、彼らが脱出するその混乱に乗じて、己はやはり、また世に放たれただろう。そういう、それが当たり前だと何かに突き付けられる予感がした。

ならば、己から名乗り出た方がいささか面白い。

「俺はその戦争に興味がある。この俺の能力があればおれもお前もここから抜け出せる。悪い話じゃねぇハズだ。互いにメリットがある」
「フザけんな!!!!おまえはビビの国をメチャクチャにした奴だ!!!!」

提案、すれば、麦わらがこちらに歯を向いてきた。今にも噛み付きかかねない様子。クロコダイルはあきれたように眼を細めながら、脳裏にあの砂の王国を思い返す。

巨大な王国だった。手に入れようとはした。だが、それはもう昔のことである。古代兵器には興味があった。正直、今現在だってまだそれには興味がある。だが、あの国には興味はなかった。

もともと、いろんなことを諦めた己が、作り上げようとした目的、だったのだ。あの計画は。夢、ではなかった。ただの目的でしなかい、その事実をはっきりと、クロコダイルはインペルダウンに来る前、あの虹の幻想に抱かれて気付かされた。

自分が欲しかったのは何もかもが思い通りになる王国ではなかった。だからもう、あの国に未練はない。

「解放しましょう、麦わらボーイ。確かにこいつがいれば相当な戦力になる。ヴァナタは止まらない。海軍本部へ行くならなおさらよ」
「でも!!イワちゃん!!こいつは!!!」

ぴくり、とクロコダイルの額に血管が浮き出た。いることは当然気づいていたが、やはりこうして面と向かえば、腸が煮えくり返るもの。

「イワンコフ……!!」
「お久しぶりだわねェ、クロコボーイ」

厭味ったらしくこちらを眺め名を呼んでくる。その分厚い化粧を砂まみれにして窒息死してやればどれだけ胸がすくかとそんなことを考えながら、クロコダイルはイワンコフを睨みつけた。

「うん?なんだ、女王、この男の知り合いか?」

これまでこちらを傍観していたトカゲが興味をそそられたようにイワンコフを見上げる。

「ちょっと昔ね。まだコイツがルーキーと呼ばれた時代にちょっとね。大丈夫よ、万が一ヴァターシたちを裏切るような行動に出ても、ヴァターシが抑え込むから。ン〜フッフフフ、それにヴァタシはこいつの弱みを1つ握ってるのよ」

おや、とトカゲが面白そうな顔をした。ニヤニヤと、品のない、まるで女とは思えないいやしい笑い方をながら、こちらに近づいてくる。

「ふ、ふふふ、なんだ卿。この女王陛下に弱みでも握られ……まさか女だったとか?」
「ブッ殺されてぇのか……貴様……!!」

言うに事欠いてそれか。ぎりっと歯を食いしばり、しかし、下手なことを言って自滅するつもりはクロコダイルにはない。それでひとまず怒りはやり過ごして、トカゲを睨みつける。

「それで、テメェはなんでここにいる。トカゲ中佐」

によく似た顔と配色をしたこの女の正体を正確に把握しているクロコダイルではない。だが、ある日突然海軍本部に現れて、ある日突然、の傍にいるようになったこの女海兵がただのまともな生き物であるとは思っていない。

牢の前で見た、とこのトカゲはやはり似ていて、どこか信頼、をしているようにも思えた。だがその信頼は、自分がニコ・ロビンを信じていた(はじめから、裏切ると信じていた)心よりは浅いようにも見えた。

「ふ、ふふふ、このおれのスケジュールを聞きたいのか?有料だぞ」

ここで最初に見たときは、それでもきっちりと着こんでいた海軍の制服は、再度ここへ来る前に様々なことがあったらしい、あちこちとすり切れている。歩くR指定されたいのかと突っ込みの入れたくなる格好はどうでもいいとして、クロコダイルは床に落としていた砂時計を目で刺した。

「これがなんだか、テメェにはわかるか」
「やはり卿のところにあったか。探していた、わけではないがね。目安にはしようと思っていた。寄越せよ」
「なら俺をここから解放しやがれ」

トカゲの扱う弾丸であれば、この檻も破壊できるだろう。言えばトカゲは肩を竦めて近くの牢、魚人のジンベエに視線を向けた。

「卿は裏切るだろ。それに引き換えあの御仁はそういうオプションはついてない。連れていくなら卿より断然あっちだ」

牢の前ではジンベエがルフィに必死に何かを訴えかけている。それはクロコダイルには興味のあることではない。この戦争を止められぬことを誰よりも嘆いているあの魚人はどうでもいい。クロコダイルは、正直な話をすればこの戦争も、本当はどうでもいいのかもしれなかった。だが、世界が動くその時に、己がおらぬというのも腹だ正しい。それに、最後にみたの顔があの泣き顔であるのなら、それはそれで、鬱陶しいのだ。

ニコ・ロビンに会いたいわけではなかった。だが、の泣き顔を消さない限り、あの女が泣いているような気がするのが気に入らなかった。

「俺が裏切ると思うのか?」
「え、なんだ卿、自分が“ステキ正義の味方★”だとか思ってるのか。医者に通えよ」

あぁ言えばこういう、容赦のない女である。かかとの欠けたヒールで地を蹴り、トカゲの長い脚が格子を蹴った。グィィインと鉄の響く音。下着が見えたが、恥じらう心はないのだろうか、この女。

「まぁ実際、卿は強いからな。裏切ったりルフィに手だしをしたら容赦なく海まで飛ばしてやるからそのつもりで、精々尽くせよ」
「麦わらに入れ込んでるじゃねぇか。惚れたのか?」
「このおれのMy sweet honey(笑)は赤旗だ」

カッコワライ、とか音声に出して言うものなのだろうか。堂々とのたまって、しかし、これ以上のおしゃべりは時間の無駄と判じたらしい、トカゲ、イワンコフの名によってイナズマがジンベエの鍵を開けているのを見て、クロコダイルの牢の鍵を破壊した。

「さぁて、こうなったら時間がナッサブル……!!力技でこの監獄を突破するわよぉお!ヒーハー!!!」

やたら顔面のでかいイワンコフがこうこうと語る言葉は無視し、クロコダイルが義手の具合を確かめていると、ジンベエがこちらに近づいてきた。

「白ヒゲのオヤジさんには手だしさせんぞ、クロコダイル!」

忠義だかなんだか知らないが、ここまで懐かれると鬱陶しいのではないだろうか。クロコダイルは鼻で笑い、久しぶりに広くなった視界に魚人の顔を入れ、こきり、と首を鳴らした。

「じゃあ今のうちに殺しあっとくか?」

当然、砂時計は持ち出して手に持っている。




 

Fin