*書いた後に気付いたんですが、この話はグロイです。
そうかと思えば後半結構アレです。苦情は受け付けません。
切り落とされた腕、傷口を押さえは片足に重心を移動させながら次の衝撃に備えた。回避できる、などと過信はない。予想通り次の瞬間、真横から飛び出した鎌が腹を薙いだ。
「……ッ」
腸を引きずり出しかねぬ勢いのあるそれに、さすがに顔を顰めれば、そのまま髪を掴まれて、背を蹴り飛ばされた。土に頭を叩きつけ、膝でかろうじて体勢を整えてから、は一瞬歪んだ顔を元に戻す。目の前に現れた色素の薄い女、そのままゆっくりと口を開いた。
「詩篇をその身に宿すなんて、ねぇ?これで立派な化け物の仲間入りだよ、カッサンドラ。おめでとう」
「……なぜ腕が戻らない?なぜ私の鎌が届いた」
ちろりと眼を向ければ、先ほどが切り落とし散々な状況になったはずの狂い咲き姫どの、今はご立派に何もかもが元通り、いやいや、さすがにそうはいかぬけれど、見えていた死相だけは消えた。眼の暗ささえそのままで、当然両腕はないが、しかし、二の腕にしっかりと刃をくくりつけている。それはピアの詩篇によるものだろう。生易しい接着ではない。肉と骨に直接指しているようなもの。あれは詩篇の止血がなければ死ぬほどだろうに。はさめざめとした眼でそれらを眺めた。面白いのはその足元。いえばスケート靴のようなものを履いている。両腕が満足に使えぬのなら足をそのまま鎌にすると、戦になれた娘の思考。それはにはない心だ。いや、そうではないのだけれど、まぁ、それは今はいい。
それにしたって、この娘は、きちんとした魔女ではなかった。まだ、魔女にはなりきれずにいられていた。それは見苦しいことである、見っとも無く、醜い状態ではあったけれど、しかし、魔女になりきるよりははるかにマシであったのに。この娘は、最後の星に手を伸ばしてしまった。
愚かしいことを、とは眼を細め、髪を掴まれ乱暴に足蹴にされた態勢のままキキョウを見つめる。
この身が修復せぬのは、少し前からのことでそれは別段自身驚くことではない。しかしキキョウは知らぬので、まぁ驚きはするだろう。それはいい。そんなことは、実際どうだってよかった。どのみち今日死ぬのなら、腕の一本先に灰になったところで如何なものか、とすら思う。そう思うの目の端には切り落とされた己の白い腕が見えた。いや、身体から離れて、あれはようやっとノア当人のそのものに戻れたのだろう。と、見ていれば、その腕を、白い指が触れ、ひょいっと掴みあげた。誰だ、と考えるまでもない。この場に居るもう一人の魔女、シェイク・S・ピアだ。
優雅に腰を折った姿勢での腕だったものを広い上げ、眼を細めて口の端をゆがめると、その腕、血の生々しく滴り骨や筋肉、神経の断面の見えるその腕を、そのままひょいっと、氷の張っておらぬ海の中に投げ入れた。
「供養のつもりかい」
「道理にしているだけですよ。実際、本当に供養する心があるのなら貴方の死骸を無残にせずに海の底に叩き込むのが最もでしょう」
思わず口を突いて出た言葉に、ピアが穏やかな微笑を持って返す。この女が一体何を考えているのか、わかるようでわからない。詩人シェイク・S・ピア。詩篇の回収者となったこの魔女は、世のどんな女よりもに近いところがある。リリスの日記を読み、そしてその逃げた文章を集めているうちに、段々とリリスの記憶を胸のうちに秘める。それが詩人というものだ。それなのに、には彼女が一体どういうつもりで、今、この場にいるのか、見当がつくようで、つかぬのだ。
ボルサリーノの味方をしにきたのか、いや、それなら、いっそキキョウを殺し、その首をエドワードに贈ってやるくらいをしたほうが「らしい」というもの。しかし、ピアの殺意は、あきらかにこちらに向いている。そのことがには解せなかった。いや、ピアに殺される理由など、ありすぎて困るほどだ。だが、あの賢いシェイク・S・ピアが、世を覆させかねぬこの己の命を狙う、そのことが疑問だ。
「どういうことだ?シェイク・S・ピア。なぜ悪意の魔女に、私の鎌が届く。この女の身体は再生しない」
キキョウの、若干困惑した声がの耳に届く。それでは今のこの状況を、そういえばどうにかせなばならぬのだ、と思い出す。
どうも、どうやらこの自分、魔女の力の一切がキレイさっぱり消えうせているらしい。それは、かなり困る。こうなれば、詩篇を刻んで身を戻すこともできないし、なによりも、デッキブラシで悠々逃亡、という卑怯技も使えないということだ。
それは、かなり困ったと、額を土に押し付けられながらはぼんやりと思う。
「簡単な話ですよ。悪意の魔女どの、いいえ、夏の庭の番人どのはもはや魔女たる資格を持ちえていない。ただの、嫉妬とエゴと欲の塊の、浅ましい女なんです」
キキョウの問いにピアが優しげに答える。その、あんまりな回答にはぴくん、と眉を跳ねさせた。
嫉妬の心でカッサンドラに勝るとは思っていないし、エゴならキミの方がはるかに上だというのに、その言い分はないだろう、と、そう突っ込みをいれたいが、しかし、まぁ、ピアのいうとおり、でもある。
自覚してしまったのだ。
それだから、ありと、あっさり、自分は魔女の資格を失った。やれやれ、あれほど強く拒絶していたのに、こうもあっさりと、と笑う気にもなれぬ。けれどもう、認めてしまったのだから仕方ない。
仕方、ないのだ。けれど、それと、ここで彼女らに殺されるかどうか、というのは話が別だ。
さて、どうしようかとしていると、ぐいっと身体を押さえられ、はそのまま首を掴まれた。耳元でキキョウの怒鳴り声が響く。
「聞け!!!!海軍本部!!!!!!」
とても大きな声である。あの、引きこもり疑惑のたっているキキョウからこんな大声が出るなどとは信じられないほどだ。はびっくりと眼を開いて、そして、彼女が何をしようとしているのか気付き、サァっと蒼白になった。
キキョウの声は詩篇により拡声されて誰の耳にも届く。一瞬ぴたり、と、戦場の動きが、ほんの一瞬だけ止まった。
は自分を押さえつけるキキョウの腕を噛んでなんとか逃れようとするが、痛覚などとうに失っている腕。腕に付けられた刃がの肩に当たり、だらり、と血が流れる。
「白髭海賊団2番隊の、キキョウか」
真っ直ぐに、センゴクがこちらを見下ろしてきている。その眼の冷たさにこちらまで凍りつきそうになるが、キキョウは目が見えないのだから意味はあまりないだろう。底冷えのする声が当たりに響き、その余韻が消えぬ間に、ぐいっと、キキョウがの腹に剣をつきたてる。
「……ッ!!!!」
ブシュッ、と、トマトでも刺したような軽い音。それと同時にあふれ出る血、その流れる音には体の力が抜けそうになった。痛みには慣れている。とはいえ、修復せぬのだとわかっている心が、恐怖すら募らせる。叫びそうになった喉を必死に堪え、は額に脂汗を浮かべる。
キキョウはぐいぐいと、付き立てた刃をの肉の中で回しながら、叫んだ。
「お前たちの魔女はここにいる!!!この女の首を私が飛ばすか、それともお前たちがエースの手錠を外すか…選べ!!!!!」
「人質かい…?白髭海賊団らしからぬ所業…ふ、ふふふ…つくづく、親の顔に泥を塗る子だね」
軽口を叩けば、そのまま切り落とされた腕の傷口を殴られた。脳天から焼き付くような痛みを感じ、はさすがに意識を失いそうになる。が、それを堪えるべく、自分で自分の肩を噛み、歯を食い込ませて血の滴る、その唇。別の痛みによって堪え、荒く呼吸を繰り返す。
周囲に取り巻く海兵たちがこちらに注意を向け、ざわめいているのがわかった。海兵たちの顔に浮かぶのは困惑と、屈辱だ。それがにもわかる。本来、この場に居る海兵なら人質ごと海賊を葬る。それだけの強い精神を持っているのが道理だ。しかし、悪意の魔女に手をかけることはできぬと、それを、よく知りすぎている者ばかり。
正義を保証する、悪の体現者。それを失うようなことがあれば、正義の根底が揺らぐ。どれほどの強者であっても、己のその立ち位置を危ぶまれれば躊躇うもの。
そして何より、この光景が放送されていると、そのことがには気がかりだった。一般市民からすれば、ただの少女が人質にされていると、そういう図だ。とっくに賞金のかかっているピアやキキョウが、幼い少女に刃を向けていることは、別段問題はない。しかし、この場で海兵らがそれを見捨てるということが流れることが、聊か気になる。そして、この映像が、加盟国にも伝わることが恐ろしい。、この20年間、それなりに海軍の役にたっているらしいという実績もある。が“説得”して世界政府の旗に加盟した国は、1つや2つではない。己に何かあれば、彼らがどう動くかということを、考えなければならなかった。
ただ死ぬのなら問題はなかったのに、ここで、キキョウが、よりにもよって、歴史の波の底に沈み生きねばならぬはずの魔女が、こうもあっさり、表に顔を上げるなど。
「エースを開放しろ!!!海軍本部!!!」
ぐっ、とキキョウはの心臓の真上に細いキリのようなものを付き立てた。ちくりと、しかし確実な致命傷にの顔が歪む。が苦しそうな様子を見せれば、海兵らの中に一層、動揺が走った。
一人の海兵が、素早く動く。剣を振り、キキョウに狙いを定め正確に挑みくる、が、しかし、その身体はキキョウたちの半径2メートル付近で、見えぬ壁にはじかれたように吹き飛んだ。
「あぁ、説明をしていなかったんですけどね。ここから先には、入れないんです。残念ですけど」
ちっとも残念ではなさそうに、にこりと微笑を浮かべてピアがかわいらしく宣告した。ピア、キキョウ、そしてのいる場所を中心としてサークルのような、妙なものが出来ている。はローの作るRoomに似ていると思い、顔を顰めたが、あれとはまるで違うものだ。こういう言い方は気に入らないが、魔女の結界、とでも呼べばいいのだろう。結界、結界、魔法じみたものいいは好きではない。そんな特別、なものではないのだが、しかし、ここにいる、ありとあらゆる強者を弾く。
詩篇の一部、ではある。それなら自分が内側から破壊できるのではないか、とは二人に悟られぬように小さく唇を動かしかけ、喉に強い熱を感じた。
「ッ!!!!!!」
「舌を抜いておくべきなんでしょうけれど、今はまだ喉を潰すだけに留めておいてさしあげます」
周囲に散らばる炎の残骸を拾い上げ、ピアはの喉を焼く。己の肉の焼ける匂いがの脳を侵し、ガタガタと体が震えた。そのままピアの手がの首を掴み、ゆっくりと腹部に炎を押し当てる。
「ふっ…ぁ・・・・・・!!!!!!ぁ・・・!!!」
喉をのけぞらせては呻いて痛みを和らげようとするが、その喉をピアがきつく抑える。咄嗟にはまだ僅かに扱える詩篇を指で記そうとしたが、その手をピアがそっとつかみ、微笑んで首を傾げる。それと同時に、ボギッと鈍い音を立てての白い指が折れた。
「片腕だけで助かりました。そうしたら、人差し指を折ればもう、貴方は詩篇を扱えない」
いっそ穏やか過ぎる声にぞくり、との背が凍りつく。この娘、これでもまだこの己に対しての憎悪が欠片も感じられない。それなのに、背後のキキョウよりも深い、何かしらの感情を持っている。敵意、憎悪、殺意、それら全てをあわせても足りぬ何かを、シェイク・S・ピアはこの己に対して抱えている。
わなわなと睫を振るわせるの、その左の瞼と頬骨にピアの長い指が当てられる。親指は頬骨、人差し指は瞼、そっと触れて、そして、力が込められた。
「炎を当てれば、あなたはこれほどまでに無力になる。どれほど強がっていても、所詮、自分の死因を乗り越えられないんですね、お気の毒に」
ぶぢぶぢと、組織を行き破りピアがの左の眼球を抉り出した。
+++
「ほぅ、すっごい状況だな」
緊迫する周囲を完全にムシして、トカゲはけろり、とした表情でどうどうとのたまった。クロコダイルは神経質そうにぴくり、と眉間に皺を寄せてからゆっくり、葉巻を口から放す。
「テメェは破れねぇのか?仮にもあいつらと同じ魔女なんだろ」
先ほど、ジョズとドフラミンゴ、それにクロ子さんパン粉さん(・・・)の四人で面白おかしく井戸端会議(誇張表現有り)をしていたが、更年期かしらのクロコダイルの砂嵐でキレイさっぱり場も消えて、それでもしっかりクロコダイルストーキングを決め込んだトカゲ。帽子の唾を銃でツンと弾きながら眼を細めて、海兵らの注目の的となっているその一角に視線を向けた。
「ふん、できるならしている。そうもいかない事情があるんだよ」
今もそこらかしこで戦争は続いてはいる。しかし、明らかにキキョウらの方向を誰もが気にかけている。白髭たちからすれば人質を、それもよりにもよってを人質に取るなどと、と、困惑しているのがわかる。ちらり、とトカゲは赤犬の気配を伺った。海軍の作戦うんぬんもあろうから、今ここでドS亭主殿が動くわけにいかぬけれど、こうも見事に、☆リンチな状況。さてどうしているのか、と見て、トカゲは素直に、顔を引き攣らせた。
「って、ちょっ!!!!待て!!!!!!!!」
叫び、咄嗟にデッキブラシで飛び上がり、処刑台付近にいる赤犬どのを止めようとしたが、すでに遅い。ドS亭主殿、それは見事な足の踏ん張り具合と、腕の突き出し加減で、先ほど最初に氷塊を溶かした以上の破壊力のありそうな、巨大なマグマの拳をキキョウたちに向けて繰り出した。それはもう、見事なまでの大噴火☆
「・・・・・・う・・・うわぁー・・・」
あたり一面焼け野原、いやいや、ここは運よく、ピアの結界が見事に吸収してしまった。そのお陰で周囲への被害も皆無。ほっとトカゲは息を吐き、そしてサカズキに詰め寄る。
「け、卿!!!何をしてるんだ!!!!ピアの結界が強かったからいいものの…!!今おれたちが手を出せばの状況が変わることくらいわかっているだろう!!!」
「だったらなんだ。わしの目の前で、わし以外がアレをいいようにしちょるんが気に入らん」
い、言い切った。この男、きれいさっぱり、言い切った。
ピアの結界、確かに同じ魔女ならどうにかできるが、しかしトカゲは彼女らとは次元の異なる魔女のため、それは適応されていない。そして何よりも、今あの魔女たちの争いに、部外者が介入するわけにはいかないと、それをわかっていた。
「い、今を助ければ、完全に魔女ではなくなる。守られる姫君になって、唯一まだ、かろうじてピアとキキョウい対抗できている素養が無くなるんだぞ……!!?」
それこそがピアの狙いだろう。状況が人を殺す。を、魔女ではない、誰かが助けに入れば、その途端、は「守られる姫君」の立ち居地になる。途端、は完全に無力化される。トカゲの目に、の力が完全に消失していることはわかる。その理由、なんのことはない。が己の本心と、そしてその覚悟を自覚してしまったからだ。しかしそれでもまだ、根底の、本来の魔女の素質は残っている。今ここで、誰かがを助けてしまえば、その最後の盾すら消え、は本当に、ただの無力な小娘に成り果てる。
「それがどうした。あれはわしが守ると決めちょる。何の問題もないわ」
誰かこの馬鹿に突っ込みを入れてくれ。トカゲはひくっと、口元を引き攣らせて、思わず後ずさりした。何この開き直りっぷり。そしてこのノリノリ後亭主殿。今がシリアス展開だってわかっているのかと聞きたい。いや、わかっているだろう。わかっていて、それでもこのバカ、じゃなかった、大将殿は、こうなのだ。
「海賊風情が、このわしの妻に手を出した。絶対に生きては帰さん」
スイマセン、この人本気です。
白髭に「マグマ小僧」言われたときより怖いです。
トカゲは只管ドン引きしつつ、はっと、何かに気付いた。
ここは素敵エース処刑台の真下。そして付近には映像を流す伝電虫がキレイにスタンバイ中。
+++
「せ、世界に向けて亭主宣言しやがった・・・・・・あ、あの男・・・!!!」
ガレーラカンパニー、社長室の机に屈伏して、アイスバーグは顔を引き攣らせた。傍観者でいるしかできない歯がゆさをありと感じていたこの数時間、というのに、何だ急にあの男の、あの、様子は、と、今すぐ海軍本部に電話を掛けたくなる。いや、あの堂々とした態度と家族を大切にし海賊相手に一歩も怯まず、交渉の余地もせぬ様子は天晴れ大将と人の心に敬意の念を抱かせる、のかもしれない。かもしれない、が、こう、事情を知っている人間からすれば、只管、そう、ただ゙只管、「ついにやりやがった!!!!」としか思えない。
先ほどまでのシリアス展開やら、悲惨な光景を、わかっているのかあの男は・・・・・・!!!
アイスバーグはよろっと、椅子から落ちかけた体勢を整え、額を手で覆った。この水の都にまで、白髭の地震の余波は来ている。軽い津波のようなものがひっきりなしに来ていて、ガレーラでは先ほどから港やあちこちのの強化で忙しい。パウリーがあれこれ指示を飛ばしている声も聞こえていた。ここでさえこうなのだ。付近ではどんな状況になっているのかと冷静に考えれば恐ろしい。
しかしそれでも、画面の中で血まみれになる小さな少女、を守ると強く宣言して憚らぬ大将のその姿。世界をまるで揺らがせぬという、その決意の表し、アイスバーグは世界政府は嫌いだし、海軍も信用してはいない。しかし、赤犬のその、意地のような姿だけは、信じられた。ただのドS亭主根性で言っているわけではあるまい。世界に向けてそうと宣言し、自分や以外の人間が、「そう」であると知ることで、そういう状況を作ろうとしている。それはある意味、必死さ、ではないのか。ノリノリドSな行動に見えつつの、その、必死さ。アイスバーグは眼を細めてモニターを眺め、そして机の上の箱に再び眼を落とした。
出かけるときが来たようだ。
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声が出ないことがこれほど悔しいとは思わなかった。
はワナワナと肩を震わせて、唇をかみ締める。大声が出せるのなら、即座に、真っ先に、今のあの、サカズキのふざけた宣言を真っ向から否定してやれたのに……!!!!
怒りに顔を真っ赤にさせる、それよりも真っ赤な顔をしてキキョウが叫んだ。
「ふ、ふざけるな!!!海軍大将!!!!!公衆の面前でイチャついてる暇があったら、エースを放せ!!!!」
ごもっとも。
うんうん、とは頷いた。いや、自分が海軍の取引材料にされるうんぬんは屈辱極まりないが、赤犬にあそこまでふざけたことを言わせている時間があるのなら、ピアとキキョウを応援してさっさとこの状況を何とかしたい。ピアはの眼球を抉り出し真っ赤になった指先、そのままを頬に当てて「まぁ、ファンタスティック」などと寝ぼけたことを言っている。それらを無視して、はキッとサカズキを睨み付けた。視線だけで人が殺せるのなら、本当に死んでくれ!!と強く願うが、そんなこと、実際は不可能である。
「ふざけたことを抜かすな、小娘。わしらが貴様の要求を呑む義理なんぞないわ。妻は助ける、貴様は確実に葬る。それで仕舞いじゃァ」
いや、言えばあっさりそうなんですが、あなたこの状況わかってるんですか。そう周囲が突っ込みたいのもさておいて、堂々とのたまう大将閣下。そのもう、堂々とした開き直りっぷり、は「今逃げなきゃ確実に嫁認定される!」とかなり本気で怯えた。やる。絶対にあの男はやる。このままこの全ての出来事を、堂々と「既成事実」扱いしてくれるだろう。
はかなり本気で逃げたくなった。
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